さわやかチータのレア・ベスト！

　BSフジでは「水前寺清子情報館」に代わり、10月から新番組「水前寺清子の人生は三百六十五歩のマーチ」がスタート。BSとはいえども、今もなお冠番組を持つ大スターとして元気に活躍している我らがチータこと水前寺清子さん。
　歌手としてはもちろん、明るくて鉄火なキャラクターを生かしたタレント性、紅白での名司会ぶりなどなどマルチな活躍は言うまでもありませんが、テレビ女優としても一時代を築きました。
　チータは江利チエミさんに憧れ、後にトリビュート・カバーアルバム（最初は水前寺音楽出版の自主制作でした）を出したほどですが、ホントいろんな面で後継者という感じでしたよね。
 
　近年はBS12（トゥエルビ）の「嗚呼！日本のこころ」シリーズで、民放テレビドラマ視聴率記録を持つ「ありがとう」や「明日がござる」といった主演作が続々再放送。女優としての懐かしい姿を見る機会も多く、新たな若いファンを獲得しているといいますが、ここに来て、チータが歌うテレビ主題歌を集めたベスト盤が発売されることになりました！
 
　それが「 ありがとうの歌～水前寺清子TV主題歌コレクション 」。演歌でクラウンというと、毎度焼き直しの全曲集ばかりというイメージですが、今回は、チータが歌手として主題歌に起用されたナンバーから、自らの出演作の主題歌、挿入歌、そしてチータ名義でのアニメ主題歌までを網羅。同社の名シリーズ“青春のかけら”コレクションのようなマニアも喜ぶコレクションとなっております。
 
　収録予定曲はというと、古くは66年のMBS系「天下のご意見書」主題歌「俺は天下のご意見番」から、2000年に武田鉄矢と共演し、デュエットもしたTBS系「教習所物語」の主題歌にして爆風スランプ提供作「いきてゆく物語」までの20曲。
 
　幅広いチョイスとなっていますが、チータのTV主題歌といえば、何と言ってもTBSで70年にスタートした国民的ドラマ「ありがとう」でしょう。 
　しつこくオファーした石井ふく子プロデューサーに根負けする形で主演を決めたといいますが、さすが名プロデューサーの慧眼たるや。婦警さんの四方光、看護婦さんの古山新、魚屋さんの志村愛と、チータの演じた役柄はいずれも本人のイメージをそのまま映したというだけあって、設定は違っても本当に魅力的。お母ちゃん役の山岡久乃さんとの名コンビによって、一層チャーミングに映ったものでした。
　チータのキャラクターありきの企画だったといいますが、底抜けに明るくって人情深くって、鉄火なのに憎めない、かわいらしく健気な女の子のイメージはやっぱり若き日の江利チエミを彷彿とさせますよね。このへん、かの高倉健さんもチータのご贔屓だったといいますから、その通りだったといえるでしょう。
　この「ありがとうの歌」はチータのTV主題歌としての代表曲ですから、今回はオリジナルのほかニューバージョンとオリジナルカラオケ、そして原曲である「さわやかの歌」も収録。チータとしては最後の「ありがとう」となった第3シリーズの挿入歌「どこかでありがとう／魚のロック」もしっかり入るとのことです。
 
　「ありがとう」が予想をはるかに超え、国民的ドラマにまで大化けしてしまったせいか、結局、チータの女優業はその延長線上の役柄ばかりという感じになりましたが、そのあたりの経緯は、豆腐屋に扮した「あたしのものよ／いつかはいいたかった」、「ありがとう」出演者シャッフルによる75年の「明日がござる」というTBS作品の主題歌はもちろん、フジテレビでの石橋正次との共演シリーズ2作「ほうねんまんさく」の「あゝ人生浮き沈み」と時代劇「東海道姉ちゃん仁義」の「幸せ正面だーれ」を聴けば、まざまざと思い出せることでしょう。
 
　ほかにも、名曲「いつでも君は」（ドラマ主題歌だったことを知りませんでした…）や、チータ名義で出した75年のアニメのテーマ「みつばちマーヤの冒険／おやすみマーヤ」、78年のフジテレビ系お昼のテレビ小説「かあちゃんの勲章」の「岬にて／海の恋唄」といった主題歌＆挿入歌が満載。
　なお、こういった主題歌を含み、チータのクラウン時代の主要シングルは MEG-CD 化されておりますので、コレクションされたい方はこれを機にそろえてみてはいかがでしょう。
　個人的にチータのTV主題歌と言えば「おかしな四ツ児」のテーマが聴きたいんですけど、どだい無理な相談だと思うので諦めております…。
 
　また、今回はクラウン限定なので入っておりませんが、RVC移籍後のハマクラポップス「今日から一歩」もオススメ。88年に石井Pが手がけたTBS系花王愛の劇場「ああ嫁さん」主題歌で、紅白落選直後の新曲としてチータの思いとぴったり重なるようなナンバーです。
　内容的には、代表曲「三百六十五歩のマーチ」や「真実一路のマーチ」に代表されるチータにしか歌えない人生の応援歌なんですけど、全盛期の力技で押しまくる歌唱とは違い、酸いも甘いも噛み分けた大人の抑えめさが、そこはかとなく味わい深いんですよね。ご興味がおありの方は「 GOLDEN☆BEST 水前寺清子 RCAイヤーズ 」をどうぞ。