ナツメロ喫茶店

 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#896
岩崎宏美 オリジナル・アルバム紙ジャケット再発<タワーレコード限定>
あおぞら +1NCS-10188)・ファンタジー +10NCS-10189)・飛行船 +2NCS-10190)・ウィズ・ベスト・フレンズ +2NCS-10191)・思秋期から……男と女 +1NCS-10192)・二十才前… +4NCS-10193)・パンドラの小箱 +4NCS-10194)・ALBUM +10NCS-10195)・恋人たち +7NCS-10196)・10カラット・ダイヤモンド +7NCS-10197
2018.6.27発売、各¥2,300+税

70年代のオリアル10作がタワレコ限定再発!

 この3月に、タワーレコード限定で70年代のライブ盤5タイトル( こちらで紹介)が単品再発されたヒロリン。続きましては同じ70年代のオリアルも再発されることになりました!
 
 今回、再発となるのは2007年から3年をかけて復刻された岩崎宏美オリジナル・アルバム紙ジャケット・コレクションのうち、70年代の10タイトル「 あおぞら +1<タワーレコード限定>」「 ファンタジー +10<タワーレコード限定>」「 飛行船 +2<タワーレコード限定>」「 ウィズ・ベスト・フレンズ +2<タワーレコード限定>」「 思秋期から……男と女 +1<タワーレコード限定>」「 二十才前… +4<タワーレコード限定>」「 パンドラの小箱 +4<タワーレコード限定>」「 ALBUM +10<タワーレコード限定>」「 恋人たち +7<タワーレコード限定>」「 10カラット・ダイヤモンド +7<タワーレコード限定>」。
 
 紙ジャケ復刻はあっさり完売していましたが、多大なリクエストが寄せられたとかで、一連のオリアルは2014年にバラ売りで MEG−CD化されております。しかし、今回は紙ジャケット・コレクションの復刻。 
 しかも、オビも含め忠実に再現された紙ジャケット仕様や封入物の復刻、秘話満載のセルフライナーノーツや追加収録のボートラなど、かゆいところに手が届いた配慮はそのままに、今回は先だってのアン・ルイス( こちらで紹介)のように、収録シングルのジャケットもCDサイズで封入*など、さらなるグレードアップも期待できるというサービスぶり。
 当時買い忘れた人はもちろん、新たなコレクションを考えるファンの背中をも後押しする感じです。
 
 アルバムの内容を簡単に紹介しますと、75年9月のファーストアルバム「 あおぞら +1<タワーレコード限定>」は、昔は必死で隠していたオデコが唯一のぞくジャケットの初々しさもさることながら、天まで響く歌声と、それに触発されたであろう楽曲のハイレベルさに尽きます。
 デビューシングル「二重唱/月見草」とオリコン1位に輝いた第2弾「ロマンス/私たち」を手がけた阿久悠+筒美京平コンビを筆頭に、千家和也さんや馬飼野康二さん、穂口雄右さんら第一線の職業作家陣が、驚異の新人に期待を込めて贈った名曲がテンコ盛り。
 PTAも大推薦のヒロリンならでは、「涙のペア・ルック」など詩だけではちょっと陳腐で笑ってしまう学園ソングも、初々しい生気にあふれていて、清々しいのひとこと。まだぎこちない感じも逆に魅力的です。ハッスルな「ロマンス」やボートラとして収録されたサードシングルのB面「そうなのよ」も含め、ディスコタッチの雰囲気が次作への予兆となっていますね。
 
 76年2月リリースのセカンドは、今は亡き糸居五郎さんの名DJがイカす、ヒロミ・イン・筒美ディスコの傑作「 ファンタジー +10<タワーレコード限定>」。
 重ためのリズム感を若さという押しのパワーで乗り切った、和風ブラックお嬢さんのステップを聴け! チークタイムは「おしゃれな感情」「グッド・ナイト」でキマリですよね。
 なお、ボートラにはDJ抜きバージョンをまるごと収録という大判振る舞い。2枚目のオリコンNo.1シングルにして春の選抜高校野球入場行進曲にもなった「センチメンタル」をボートラ収録。
 
 そして76年7月発売のサードは、大ヒットシングル「未来/夏からのメッセージ」をフィーチャーしておりますが、スカイミントな切り貼りジャケにやっぱり苦笑してしまう「 飛行船 +2<タワーレコード限定>」。ディスコサウンドだけでなく、スウィングのトリートメント効果も出たようなしっとりバラード「愛の飛行船」もグーです。
 Q盤の「定番COLLECTION」シリーズでは早々に廃盤になっていたため、当時でも突出して売れたのではなかったでしょうか。
 ボートラは、アルバム未収録のシングル「霧のめぐり逢い/感傷時代」。「感傷時代」1曲のために買っても無駄はありません。
 
 ちょっと間が空いて77年5月リリース、高校を卒業してぐんと大人びていった「 ウィズ・ベスト・フレンズ +2<タワーレコード限定>」。
 とりあえず筒美ラストの「想い出の樹の下で/わたしの1095日」と、阿久さんが大野克夫さんとのジュリーコンビで書いた「悲恋白書/愛をどうぞ」という2枚のヒットシングルを収録。「わたしの1095日」「学生街の四季」など学生時代を振り返る名曲も多いし、タイトルもいいし、ジャケットも含めて昔からファン人気の高い1作です。
 個人的には「パパにそむいて」とピンク・レディーの「パイプの怪人」のパパは同一人物ではないかと当時から思っておりますが、特筆すべきはこれまたボートラ。アルバム未収録シングル「ドリーム/スイート・スポット」ですが、「スイート・スポット」が良いのですよ。阿久さんの“ピンクのメガネ”も当時のヒロリンにぴったりです。
 
 初期の転機となったロングヒット「思秋期」をフィーチャーした「 思秋期から……男と女 +1<タワーレコード限定>」は77年10月発売。全編を阿久さんが作詞。SEを多用した構成は南沙織が73年に出したアルバム「傷つく世代」を彷彿とさせるサウンドドラマですが、19才とは思えないほどの濃ゆさで、情感たっぷり。個人的には、サウンドも歌もすべてが洗練されている「Boo Boo」が昔からイチバン好きです。
 阿久さん作の造語でもある「思秋期」や「恋夏期」をはじめ、オビに記された青春期や感冬期と合わせ、没後に出た作品集のタイトルにもなりましたっけ。
 
 さて、ジャケットでちょっぴり太めのヒロリンの下半身が拝める「 二十才前… +4<タワーレコード限定>」は、最新シングル「二十才前/ザ・マン」と、2個前のシングル「熱帯魚/夏のたまり場」を収録してはいますが、阿久さんの作詞は片面のみとなり、丸山圭子作品で流行のニューミュージックにも挑戦した意欲作。にしても、ヒロリンには手を抜かなかった阿久さんの詞のクオリティが低い感じで、「ニッカ・ポッカ」なんてちょっとビックリするほどです。
 ボートラは、 シングル「あざやかな場面/いちご讃歌」、「二十才前」初回プレス盤のみの鼻声バージョン(レコード盤起こしが惜しい!)、そして後で発覚したというアルバム「ファンタジー」の「ひとりぼっちの部屋」のイントロ・ロング・バージョンです。
 
 そして世界中がフィーバーする空前のディスコブームの中、筒美がえりとなったヒロミ・イン筒美ディスコの集大成「 パンドラの小箱 +4<タワーレコード限定>」。
インクルーディング・シングル「シンデレラ・ハネムーン/南南西の風の中で」がかすんでしまうほどDr.ドラゴンが大暴れ、名曲のオンパレード。大人の女声となった艶やかなヒロリンボイスも絶好調。最高傑作と呼んでしまいましょう。
 ボートラは、その後の筒美シングル「さよならの挽歌/夕暮れメヌエット」「春おぼろ/吐息ばかり」の4曲です。
 
 お次は企画盤2作。「 ALBUM +10<タワーレコード限定>」は松田トシ(敏江)先生のレッスンの模様が思い浮かんでしまうような童謡唱歌集、「 恋人たち +7<タワーレコード限定>」は洋楽スタンダードという企画盤。どんな歌でも歌えるシンガー・岩崎宏美の真骨頂といえるでしょう。
 この2作は、前回の復刻が後からだったこともあり、とにかくボートラが充実。NHKみんなのうたをはじめ、オリジナルカラオケ、筒美京平、吉田正 、阿久悠という各先生の記念企画盤カバー音源まで、お得感がハンパないです。
 
 ラストは全曲オリジナルで構成した「 10カラット・ダイヤモンド +7<タワーレコード限定>」。阿久さんが休筆していた頃でもあり、阿木燿子、三浦徳子という女流作詞家を起用。ぐっとアダルトな世界を繰り広げております。
 ボートラは「夏に抱かれて/ラブ・アラベスク」「万華鏡/泣きながら目覚めて」という未収録シングルに加え、筒美作品「砂の伝説」、ユーミン&拓郎の「時の女神」などアルバム「ライブ&モア」のスタジオ録音音源も入っております。
 
 思えばヒロリンのアルバム初復刻は91年。初期のモノは“YOUNG POPS FOR YOUNG ADULT”と題した「2in One定番コレクション」シリーズ、Q盤の「定番COLLECTION」シリーズと形態が変わって3度目の買い換えとなったり、イロイロありましたけれど、11年前にラックにズラリとそろった24枚+1(特典盤)の紙ジャケは壮観でしたっけ。
 
 紙ジャケットを愛おしみつつ聴いていたら、遠足の時、おやつに買ったグリコのスカイミントをみんなでコマソンを歌いながら食べた時のこととか、クラス替えで親友と別の組になって心細かった時、隣の席の子が持っていた岩崎宏美スター下敷き(「センチメンタル」のメロ譜入り!)をきっかけに仲良しになったこととか、掃除の時間、クラスで一番大柄の女の子が美しく揺れるオカッパになりたくて「ライオンのスウィングで一生懸命トリートメントしている」と熱弁してたけど全くの剛毛だったこととか、実生活にまで及んでたヒロリンにまつわる思い出がクリアによみがえってきたものですからね。
 
 皆さんのヒロリン・メモリーズを想起させるオリジナル・アルバム紙ジャケット・コレクション、11年前に買い逃していた方はこのチャンスにどうぞ。
 
  

(2018.5.29)
 
 
*残念ながらシングルジャケットのCDサイズ縮小封入はなくなったとのことです。

#900〜
 
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