70年代のライブ盤5作がタワレコ限定単品再発！

　ピッチ補正がいとも簡単にできる時代となり、テレビの歌番組だけでなく、コンサートでも口パクで済ませるアイドルが少なくないと聞きますが、アイドルであろうが歌手たるもの、ステージこそ実力勝負、真の腕の見せ所にするというのが本分というものではないでしょうか。
 
　そういう意味では、この人の右に出る人はおりますまい。そう、ティーンアイドルだった70年代半ばから抜群の歌唱力を誇る実力派として活躍してきた岩崎宏美さん。
　リサイタルやコンサートでもレコードと遜色ない、いやそれ以上の歌声を聴かせることでおなじみの彼女です。デビューした75年10月に東京・芝の郵便貯金ホールで初のワンマンコンサートを行って以来、毎年10月にコンサートを恒例化。83年まではライブ盤のリリースもお約束の出来事で、70年代から2010年代に至るまで、なんと13タイトルものライブアルバムをリリースしております。
 
　ヒロリンのライブアルバムというと、ビクター時代のライブ盤とライブ映像ソフトをまとめた紙ジャケBOX「ROYAL BOX ～スーパー・ライヴ・コレクション～」（ こちらで紹介）が知られていますが、これは2007年12月にリリースされた完全限定盤。あっさり完売していましたが、多大なリクエストが寄せられたとかで、2010年秋にはバラ売りで MEG-CD化（ただし2枚組もバラで、「ライブ＆モア」のスタジオ録音音源も収録）されております。
 
　なので、音源的にはいつでも入手可能の状態が続いていたのですけれど、ここに来て、タワーレコード限定で70年代のライブ盤5タイトル「 ロマンティック・コンサート +6＜タワーレコード限定＞ 」「 ロマンティック・コンサートII～ちいさな愛の1ページ～＜タワーレコード限定＞ 」「 新しい愛の出発 ～ラブ・コンサート・パート1～＜タワーレコード限定＞」「 ふたりのための愛の詩集～ラブ・コンサート・パート2～ +4＜タワーレコード限定＞」「 ライブ・アンド・モア＜タワーレコード限定＞」が、BOXと同じ紙ジャケット仕様で単品再発されることになりました！
 
　まずは、初々しい75年の「 ロマンティック・コンサート +6＜タワーレコード限定＞ 」。第2弾「ロマンス」、第3弾「センチメンタル」とシングルが連続ナンバー1に輝き、その手応えを観客の声援にもしっかり感じてたであろうヒロリン。持ち歌が少ない新人ならでは、ほとんどがカバー曲で構成されていますが、自らの歌のルーツとともに後の方向性を形作った象徴的なライブとなっています。
　ロバータ・フラックなど黒っぽさをのぞかせるソウル、育ちの良さを思わせる童謡ナンバー、当時はナウかったフォークヒットまで、緊張による堅さを自ら解き放ち、物おじすることなく伸びやかに進行してゆく様は、当時も今も聴く度に大きな感動を覚えます。はちきれんばかりの若さと、歌に懸けるひたむきな情熱はもちろん、その天賦の美声とうたの力を存分に堪能できる好盤です。世に出るきっかけとなったスタ誕出場曲「あなた」もいいですね。悪友（阿久悠）トリオとして仲良しだった桜田淳子＆伊藤咲子というスタ誕の先輩も飛び入りゲストとして登場しています。
　ボーナストラックとしてカセット版のみ収録されていたナンバーも追加収録されています。
 
　続く76年の「 ロマンティック・コンサートII～ちいさな愛の1ページ～＜タワーレコード限定＞」は、オリジナルは堂々たる2枚組でしたがCDではお得な2イン1。
　経験を重ね、声量もぐんと増したヒロリン。2年目も順調にヒットを飛ばし、押しも押されぬトップスターの仲間入りを果たしたせいか、とてもパワフルで余裕の感じられる仕上がりです。
　ディスコタッチのアレンジをはじめリズムに乗ろうと懸命に頑張っている感じがする洋楽カバーが秀逸。バカラックナンバーはもとより、ダイアナ・ロスやスタイリスティックス、このへんの黒っぽさを出せるティーンの女の子なんて、あの頃の日本にはヒロリン以外誰もいなかったように思います。
　後にライブの終盤の定番となる「月見草」「私たち」の流れも素晴らしいですね。足りないぐらい両手を広げて応援しているであろうファンの盛り上がりに、ヒロリンは確かにアイドル歌手だったことを再確認。
　なお、コンサートで先に披露されたオリジナル「いちご讃歌」は、のちにスタジオ録音され「あざやかな場面」のカップリングにもなりました。
 
　そして77年の「 新しい愛の出発 ～ラブ・コンサート・パート1～＜タワーレコード限定＞」は、オリジナル通りCDも2枚組。
　洋楽のカバーの1部、童謡や愛唱歌を中心にした2部という構成ですが、当時は「思秋期」で大きな転換を図った頃。高校を卒業してしっとりと大人になっていったヒロリン、圧巻のポップスメドレーにしても、パワーでグイグイ押し切っていた頃とはどこか違う変化が…。
　アルバムからのオリジナルも披露し、大人のシンガーとしての着実な歩みが記されたライブ盤と言えますね。ワタシは、数多のアーティストに愛された「歌の贈り物」が大好きですが、ヒロリン・バージョンも大のお気に入りでした。
 
　78年は「 ふたりのための愛の詩集～ラブ・コンサート・パート2～ +4＜タワーレコード限定＞」。オリジナルは1枚ものですが、CDはカセット版のナンバーも追加収録したお得盤。
　当時の最新曲「さよならの挽歌」や「シンデレラ・ハネムーン」をはじめとするシングルヒット以外は、洋邦のカバー。庄野真代の「飛んでイスタンブール」、加藤登紀子の「この空を飛べたら」、サーカスの「Mr.サマータイム」という当時のニューヒットが時代を感じさせますね。時代と言えばディスコブームもピークの頃、バリー・マニロウやドナ・サマー、ビージーズといったトロピカルでダイナミックなサウンドにのせて、デビュー以来続いてきたヒロミ・イン・ディスコがフィナーレに向かう様子が綴られています。
 
　お次は79年、ドナ・サマーも驚くタイトルの「 ライブ・アンド・モア＜タワーレコード限定＞」。ご本家同様、ライブとスタジオ録音（レコードでは2枚目の片面）の2枚組でした。
　BOXではユーミン提供作ほかスタジオ録音の音源がオリアル復刻のボーナストラックとして収録済みだった関係で見送られ、CDも1枚ものになっておりましたが、今回はMEG-CDと同様にスタジオ録音の作品も収録。満を持して2枚組での復刻となるそうです。
　「万華鏡」のアッパッパのような衣装で映ったジャケットに象徴されるように、恩師の松田トシ先生を彷彿とさせる歌のオバさんといいますか、弱冠20歳にして既に円熟のムードが漂っておりますよね。ダイアナ・ロスやバーブラ・ストライザンドのナンバーも堂に入っていますが、聴きどころは、前年のアルバム「二十才前…」からのオリジナル2曲や、伊東ゆかりさんのカバーヒットで知られる「あなたしか見えない」、久々に収録された原点ナンバー「あなた」といったところでしょうか。今や“生き神様”と慕うさだまさしの「療養所（サナトリウム）」、堀内孝雄「愛と涙とやさしさと微笑」といったミューミュージックも入っています。
 
　という5タイトル。BOXを入手できず後から欲しくなった方は、仕方なしでもMEG-CDに手を伸ばしておられるように思いますが、やっぱりCD-RよりCD。しかも今回BOXと同じく、歌詞カードやポートレートといったオリジナルLPの付属物は縮小復刻されているとのことですし、ヒロリン自身が語り下ろしたセルフライナーノーツも入っているそうですからね。買い換え、買い増しする人も少なくないのではないでしょうか。
 
　BOXを入手されている方も、「ライブ・アンド・モア」だけはBOXのものとは異なっているので、コレクションのために買うというファンは多そうですね。