オススメ復刻盤「坂田晃一 テレビドラマ・テーマトラックス」


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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#562

坂田晃一 テレビドラマ・テーマトラックス

(2012.6.27発売、MHCL-2076、¥3,000)

名ドラマを彩った坂田メロディー、40年ぶりの作品集!

 劇伴音楽というものの存在を意識したのは、いったいいつのことだったでしょう。ホームドラマやメロドラマ、時代劇や刑事ドラマに青春ドラマなどなど、テレビドラマ全盛期に幼少期を過ごしてきましたし、わが家のお茶の間にあったパナカラーはよくドラマにチャンネルが合っていたもので、自然にその存在や効果がすり込まれていたのかもしれません。

 後に、とても印象に残っていたり、大好きだったりした当時のドラマを振り返った時、愕然としたのがたいてい同じ演出家だったこと。TBSなら水曜劇場の久世光彦さん、日本テレビならグランド劇場の石橋冠さんというように、琴線に触れたドラマの作り手は同じ人が多かったのです。

 いずれも後世にまで語り継がれる名ドラマ枠ですが、日本テレビのグランド劇場の劇伴といえば、真っ先に坂田晃一さんの名前を挙げる人が多いのではないでしょうか。

 坂田先生といえば、ビリー・バンバンのオリコンNo.1シングル「さよならをするために」(「3丁目4番地」)をはじめ、西田敏行「もしもピアノが弾けたなら」や杉田かおる「鳥の詩」(ともに「池中玄太80キロ II」)などの大ヒット曲でおなじみの作曲家。

 昨年、森山良子の「さよならの夏」(読売テレビ系「さよならの夏」)がスタジオジブリのアニメ映画「コクリコ坂から」主題歌としてカバーされ、脚光を浴びたのも記憶に新しいところですが、このたびドラマのテーマソングを集めた作品集「 坂田晃一 テレビドラマ・テーマトラックス 」が編まれることになりました!

 先生の作品集としては、73年の「冬と夏の物語 坂田晃一の世界」以来なんと40年ぶりの模様。その後も74年には朝倉理恵のほぼ坂田作品集といえるアルバム「誰のために愛するか」が出たり、77年にはダ・カーポのグランド劇場名曲集「いんてぃめっと」というのもリリースされていますが、あれは坂田作品に限りませんので、オリジナル主題歌を集めたアンソロジーとしては今回が初めてといってもいいのではないでしょうか。

 作品数が多いので網羅というわけにはいきませんが、大ヒットから隠れた名曲まで、初CD化音源も多数収録。
 まずは日本テレビ系、グランド劇場では「さよならをするために」「もしもピアノが弾けたなら」「鳥の詩」のほか、「さよなら・今日は」からまがじんのラブサウンズ「愛の伝説」、朝倉理恵「さよなら、今日は」、赤い鳥から伝書鳩へと歌い継がれた「目覚めた時には晴れていた」(「二丁目の未亡人は、やせダンプといわれる凄い子連れママ」)、 月曜スター劇場「冬物語」からフォー・クローバース「冬物語」らおなじみの作品に加え、火曜劇場からは正やんの奥さんになった古谷野とも子の「海の悲歌」(「夏の影」) と隠れた名曲もいっぱいです。

 また、双璧をなす関西の日テレ系・よみうりテレビでは、風車の「旅路」(「氷紋」) 、真木悠子「めぐりあい」(「北都物語-絵梨子のとき-」) 、クロード・チアリのギターで小坂恭子が歌う「風の挽歌」(「野わけ」)、浅丘ルリ子のナレーションと真木悠子のスキャットがお洒落な「白い旅」(「新車の中の女」)、鹿内孝 「情熱」(「冬の陽」) 、新人時代の山本達彦による「アゲイン」(「渚の女」)とレアなナンバーがごっそり。いずれも浅丘ルリ子主演作が目立ちますね。

 坂田先生の場合、民放ではこの日本テレビとよみうりテレビという同系2局がメインというイメージがありますし、今回もそれ中心ではありますが、TBSのドラマスペシャル「おやじのヒゲ」シリーズや、テレビ朝日の「家政婦は見た!」シリーズ(先生自身も冒頭に出演されてました)、フジのカルピスこども劇場「母をたずねて三千里」など、他局でも名物ドラマやアニメを幅広く手がけておられますし、NHKでは朝の連続テレビ小説「雲のじゅうたん」「おしん」、大河ドラマの橋田壽賀子作品「おんな太閤記」「いのち」「春日局」、数多の銀河テレビ小説など、とにかく全局でヒット作を飛ばしているんです。
 ちなみに、今回NHKでは、チェリッシュ「あの空へ帰ろう」(「雲のじゅうたん」) と銀河テレビ小説からソニア・ローザ「帰らざる日々」(「帰らざる日々」) が収録になっています。

 今回ボーナストラックも含め、朝倉理恵が目立ちますが、それはソニー系の発売という理由だけでなく、やはり唯一作品集をレコーディングしているからでしょう。当時のCMソングファンにとっては、ボーナストラックの「風のマドリガル」を聴いてのお楽しみ、というところでしょうか。

 また、由紀さおり「みち潮」は先生からのリクエストによるボートラだそうですが、忘れてはならないのが、安田シスターズの音楽監督としての顔。姉妹の童謡アルバムやコンサートの編曲はもとより、プロデューサー・音楽監督としても活躍されている先生です。紅白歌合戦でも話題を呼んだ「どこかに帰ろう」の作曲や、「トルコ行進曲」のスキャットも、なんと先生が手がけられているんですよね。

 坂田メロディーに漂うのは、先生の優しいお人柄や、東京芸大という名門で学ばれた方独特の知的なムードはもとより、山本直純大先生のお弟子さんならではのポピュラー性。そしてヨーロッパ的でクラシカルなイメージと、日本人の心の琴線に触れる哀愁味を併せ持つ品格。
 それこそが坂田晃一の真骨頂ではないかと思っていますが、実績を鑑みてももっと大規模なアンソロジーが組まれるべき作曲家でいらっしゃいますので、今回を足がかりに正当な再評価が進み、BOXなどの大型企画へとつながっていくこと―今回見送られた名曲や、劇伴にまつわる興味深いエピソードなどもきっちりと収録されること―を願ってやみません。

 そして大好きな狩人の「愛ひとつ道しるべ」(銀河テレビ小説「わかれ道」主題歌。「国道ささめ雪」の代わりにシングルA面で出てたら絶対巻き返してたような気がする)の初CD化や、榊原郁恵が日テレの主演ドラマ「先生は一年生」でカバーした「さよなら・今日は」の初商品化が叶うことを夢見ています。

 現在は、尚美学園大学の名誉教授でいらっしゃる先生。近々オフィシャルサイト(坂田晃一 Official Site)も開設なさるとうかがいましたし、後進育成を含め、今後もお元気でますますのご活躍をお祈りしております。

(2012.5.29)

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