オススメ復刻盤「天地真理/GOLDEN☆BEST」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#607

天地真理/GOLDEN☆BEST

(2013.4.17発売、MHCL-2256、¥2,000)

*【名盤復刻】水色の恋/涙から明日へ(MHCL-30052)、ちいさな恋/ひとりじゃないの(MHCL-30053)は4.10発売! 

真理ちゃんシリーズもついにCD化! 充実ブック懐刻盤!

 ご存じ、復刻を超えた“懐刻盤”といえば、2009年の百恵ちゃん(こちらで紹介)を皮切りに、ソニーのおニャン子(こちらで紹介)、シンシア(こちらで紹介)、キャンディーズ(こちらで紹介)、太田さん(こちらで紹介)、聖子(こちらで紹介)、ヒデキ(こちらで紹介)と続いてきたソニーミュージックの人気シリーズ。

 廉価盤ゴールデン☆ベストに属しながらも豪華なオールカラー・ブックレット付きで大好評のシリーズですが、このたびCBS・ソニーの礎を築いたトップアイドルが仲間入りします。そう、真理ちゃんの「 ゴールデン☆ベスト 天地真理 」!

 一応申し添えておきますと、このシリーズは基本、復刻が一通り終わったビッグアイドルにつき、音源的には目新しさがないのがフツーで、売りとなっているのはブックレットの方。往年の芸能誌の付録歌本のテイスト(個人的には決して「明星」ではなく「近代映画」のセンスだと思ってますけど)のもと、当時のシングルジャケットのレタリングが再現され、別テイク写真などもふんだんに掲載されているという点が大きな魅力となっています。
 が、今回の真理ちゃんはちょっと違います! 往年のヒット曲に加え、隠れた名曲や貴重な音源も収録される予定なのですぞ!

 まずは当然のごとく、アマチュア時代から歌っていた「小さな私」が原曲のデビューシングル「水色の恋」と、マチャアキが先にシングル化した久世光彦さん作詞の「涙から明日へ」、そして“2階のマリちゃん”のテーマソングでありデビュー曲候補でもあったという「恋は水色」を含め、デビュードラマ「時間ですよ」の劇中で弾き語ったナンバーを網羅。

 むろん「ちいさな恋」「ひとりじゃないの」「虹をわたって」「若葉のささやき」「恋する夏の日」と、通算5曲オリコン1位という前人未踏の大記録を打ち立てたヒット曲は圧巻ですし、松本隆+筒美京平コンビの傑作「レイン・ステイション」、真理ちゃんが大ファンだったというグレープ(さだまさし)をカバーした「童話作家」というアルバムの名曲もチョイスされておりますが、今回の目玉となるのは、何と言ってもボーナストラックとして収録予定の真理ちゃんシリーズのテーマ曲。
 72年の「真理ちゃんとデイト」から、「となりの真理ちゃん」「とび出せ!真理ちゃん」「アタック!真理ちゃん」、そして75年の「はばたけ!真理ちゃん」と足かけ4年も続いたTBSの人気冠番組のテーマ曲が勢ぞろいする予定なのだそうです。無事に実現すれば「真理ちゃんとデイト」以外は初CD化、初商品化になるんじゃないでしょうか。

 余談ですが、真理ちゃんに対しては長いこと幼稚園の先生みたいなイメージを抱いてきたワタシですが、それはこのシリーズの印象そのものという感じがします。実は今もずっと引きずっていまして、近影のスーツやワンピースを着たお姿は園長先生の卒園式のたたずまいに思えたりしています。

 余談ついでに思い出話をすれば、まさに周りの女の子たちみんながスター人形ポピーちゃん(まりちゃん)でままごとをし、ブリヂストンのドレミまりちゃんを欲しがっていた世代です。
 あの高価な自転車を買ってもらったお金持ちの娘が、その日から白雪姫に変身するのを目撃した身としても、このシリーズは必見番組だったワケですが、番組ターゲット世代だったからというだけでなく、ミュージカルものには個人的に大きな影響を受けております。
 今も大好きな「アルトハイデルベルヒ」や「森は生きている」など(このへんの名作は今の子どもたちにも読み継がれてほしいんですけど…)は「はばたけ!真理ちゃん」をきっかけに夢中になって原作を読んだものですし、それが本好き、読書好きとなり、ついにはわが家に小学館・少年少女世界の名作文学シリーズ全50巻が鎮座することにつながったのですから…。あのシリーズを見てなければ、ものを書いたり読んだりする仕事に就いていなかったかもしれません。

 真理ちゃんは赤毛ものも意外と似合っていましたから、いつか本編の映像も見てみたいものですネ。それまでは、このCDでおぼろげだった数々の名場面をしっかり反芻したいと思っております。

 なお、せっかくの機会ですので、Blu-spec CD2による名盤復刻シリーズ(こちらで紹介)にラインアップされた真理ちゃんのオリジナルアルバムもご紹介しておきましょう。

 2タイトルが同時発売になりますが、まずは71年12月、レコードデビューからわずか2カ月半でリリースされたファーストアルバム「 水色の恋/涙から明日へ 」。
 デビュードラマ「時間ですよ」でも白いギターを抱えフォーク少女のムードを醸していた真理ちゃん。2曲の劇中歌をそのままタイトルにしたり、ドラマで最も歌った「恋は水色」もしっかり収録されるなど、まさに「時間ですよ」のマリちゃんのLPができました!という感じ。ギターの弾き語りのイメージそのままに、フォークを中心にした全曲カバーによる構成となっています。
 チェリッシュ「なのにあなたは京都へゆくの」、加藤和彦と北山修「あの素晴らしい愛をもう一度」、ジローズ「涙は明日に」、シモンズ「恋人もいないのに」、トワ・エ・モワ版が大ヒットした札幌オリンピックのテーマ曲「虹と雪のバラード」など最新ヒットが集められているのも、ナウなフォーク少女だった真理ちゃんらしい選曲といえそう。

 レコード会社が熾烈な競争を繰り広げていた時代だけに、「涙から明日へ」がケンちゃんとマリちゃんのデュエットでないのがザンネンですが、どの曲もクラシックで培った丁寧な歌唱法と、真心の感じられるひたむきな表現力がホントに魅力的。基礎を積んでいるので当然といえば当然ですが、この路線を貫けば、マジで森山良子の跡を継ぐフォークシンガーとしても大成したと確信できる完成度です。
 ちなみにこのアルバムは、“真理ちゃんブーム”が押し寄せるに連れオリコンLPチャートを上昇。S&Gら強力な洋楽勢を押しのけ翌72年2月にはついに1位をマーク。通算13週にわたりトップを独走し年間ランキングも首位と、72年のニッポンで最も売れたLPレコードに相成ったのであります。

 72年6月発売、これまた1位を獲得した「 ちいさな恋/ひとりじゃないの 」は、文字通り第2弾「ちいさな恋」と第3弾「ひとりじゃないの」という2枚のオリコンNo.1シングルをそのまま冠したセカンドアルバム。
 といっても「ひとりじゃないの」は、作曲の森田公一さんアレンジによる別バージョンで収録されている上、全曲がオリジナルという構成になっています。これは当時としてはホントに希有なことで、真理ちゃんがアルバムアーティストであることを証明する出来事といえましょう。
 ちなみに、シングルでは「ちいさな恋」で初めて首位に輝いていますが、真理ちゃんこそCBS・ソニー邦楽初の1位獲得アーティストであることを忘れてはなりません。

 日に日に人気はうなぎ登り、アルバムもシングルもバカ売れ、レコード会社も事務所も予想だにしなかったという爆発的人気のせいで、カレッジフォークから歌謡ポップスへと路線変更してしまった真理ちゃん。
 今聴くと乙女チックな世界観による青春歌謡アルバムという印象も拭いきれませんが、今では失われてしまった明るい未来へを前提にした夢や希望のうたは、当時の世相と思想を映したようでとても貴重に思えます。

 サウンド的にはフレンチポップスを下敷きにしたヨーロッパのムードや、お洒落なソフトロックの雰囲気もありますし、何より清純で上品な魅力がいっぱい。
 オススメは安井かずみ+加藤和彦コンビの「乙女の祈り」「青春」、岩谷時子+渋谷毅による「白いバラの道」「おしえてよ愛の言葉」あたりですが、偏愛しているのは夢みるシャンソン人形ならぬ日本製フランス人形という趣の「ひとりぼっちの私」です。

 さて今日まで連綿と続くアイドル商戦は、真理ちゃんを軸としたCBS・ソニーから始まりましたが、このアルバムがまさにその出発点といえるもの。LP盤は当時としては異例の仕様で、特典としてウルフカット真理ちゃんの豪華ポスターだけでなく、真理ちゃん自身によるナレーションとピアノ演奏(ショパンとバッハ)が入ったシングル「あなたと私」がプラスされていたのですから。CD選書ではカットされていたこの音源も、今回の復刻ではちゃんと収録されるようです。
 なお、記録的にはオリコンアルバムチャートで8週間トップに君臨し、72年の年間ランキングでは3位をマーク。この年は1位と3位が真理ちゃん独占(2位はよしだたくろう「元気です。」)というワケですから、その売れ行きがいかに凄まじかったかが分かるでしょう。

 という真理ちゃんの再発ラッシュ。2枚のオリジナルアルバムは91年にCD選書化されていましたし、音源はコンプリートBOX「 天地真理 プレミアム・ボックス icon 」で現在も入手可能ですが、お持ちでない方はぜひ今回の再発盤を。全部持っているから…とおっしゃるコアなファンの方も、今回の懐刻盤とともにぜひ手にして、ブルスペ2で生き生きとよみがえる真理ちゃんの歌声を体感してみてはいかがでしょう。

 と、真理ちゃんのこととなると、いろんな思いが渦巻いてつい力が入ってしまいます。もちろんBOXが出る前あたりの状況を思えばまるで夢のようで、かつてのファンが復活するケースもぐんと増えているようですし、関係者やファンの尽力で発足したFCも活発に活動していたりして、とても喜ばしい限りです。しかし、天地真理という歌手が築いた実績と地位と照らし合わせると、まだまだ全然!という気がしますのでね。

 あの頃、誰も寄せ付けないほどの国民的人気を博し、一世を風靡した天地真理という名のアイドルは、その人気に値するだけの才能と実力をもった真のシンガーだったのですし、今回の再発がきっかけとなって、その事実が一人でも多くの人に再確認されるとともに、唯一無二の歌声とうたごころが後世にまで正当に再評価され続けることを願ってやみません。

(2013.1.25)


*「天地真理 GOLDEN☆BEST」のブックレットの一部(セルフ・ライナーノーツからの抜粋および各ページの写真一覧)は、特設サイトでご覧になれます。

*名盤復刻シリーズについての詳細は、特設サイトまたは   SonyMusicShop をご参照ください。
 復刻タイトルのリクエストもできます。

Sony Music Shop


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