CBS・ソニーよ永遠に! 黄金期を思わせる“懐刻盤”第5弾!
非常に個人的なことではありますが、フォーリーブスから始まって、にしきのあきら、南沙織、天地真理、本田路津子、チューインガム、よしだたくろう、郷ひろみ、五輪真弓、猫、朝倉理恵、浅田美代子、山口百恵、キャンディーズ、麻生よう子、優雅、ルネ、山本コウタローとウィークエンド、太田裕美、バンバン、森田公一とトップギャラン、三波豊和、ふきのとう、清水健太郎、清水由貴子、渡辺真知子、西村まゆ子、中原理恵、矢沢永吉、ジュディ・オング、浜田省吾、80年代に入ってからも松田聖子を筆頭に出るわ出るわ…わが家にあったレコード盤をちょっと思い出しただけでも、CBS・ソニーの国内制作部門のアーティストは到底数え切れません。
クドクドいつも申しておりますけれど、自分史上最大、こんなにたくさんのフェイバリット・アーティストや楽曲を擁しているレコード会社は、CBS・ソニーだけなのですね。
やっぱり新進の外資系ということが大いに関係していたのでしょうが、得意としていたヤングポップス路線のアーティストや楽曲は開放的でカッコよく、とにかくキャッチーでした。
しかも、それに付随するレコードジャケット(有名な写真家や芸術家、デザイナーが手がけていたことびビックリしたことも、二度や三度ではありませんでした)はもちろん、店頭に貼られていたポスターやPOP類、特典物などのデザインのあか抜けていたこと!
当時は各レコード会社がライバル意識むき出しで日々火花を散らし、その垣根は万里の長城のように堅牢だった時代。
そんな中、ハッとさせられるアーティストや楽曲のレコードには、いつも同じあのロゴ、アメリカのCBSと日本のSONYをミックスしたあのマークが付いていたのですね。
邦楽では演歌・歌謡曲が主流だった70年代初頭のレコード店。その店頭であのロゴマークの会社が見せたものは、子どもの目から見ても飛び抜けて上質だったことは明らかでした。
レタリングひとつ、帯のコピーひとつとっても本当にお洒落で、マイ美意識なんぞ微々たるものではありますが、ホント大きな影響を受けたと思ってます。
商品展開という意味で好きだったのは、ボーナス商戦向けに企画されてきたベスト盤。古くはギフト・パック、そしてヒット全曲集、THE BESTと名前の変わっていったあのシリーズです。
アイドルポップスでもLPのセールスが伸びトータルアルバムとしての制作が主流となる80年代初めまでは、各社から多くのベスト盤出ていたものでしたが、CBS・ソニーはその頻度が高かったのですね。
75年から80年までの最盛期には、ボーナス支給に合わせた6月と11月の年2回、一部を除きヒット曲を持つ所属アーティストのほとんどと、オムニバス盤計30タイトルは出ていたのではないでしょうか。夏は1枚もの、冬は2枚組、なんていうのも恒例のパターンだったりしました。
ウレシかったのは、ビジュアル的なお楽しみ特典も満載なところ。撮り下ろしのジャケットをはじめ、封入の大型ポスター、写真集、ピンナップ、カラー歌詞カードなどなど、シングルや過去のベストで音源を全部持っていても、CBS・ソニーのベスト盤はつい欲しくなる仕様でしたよね。
そういえばオイルショックの頃、シングルのレコ袋に広告を入れたことが話題を集めたCBS・ソニーでしたが、その後、年末には自社ベスト盤の広告を入れていたこともありました。カタログを眺めたら思わず欲しくなるという心理を見事に突いていて、ホント効果大だったと思います。
そういうものを見て、聴いて育ってきた身ですから「CBS・ソニー」というレコード会社には、ちょっと言い尽くせないほどの愛着があるのです。もうその名前は存在しないことが、唯一残念なのですけど…。
きっと、かなり多くの方が似たような思いをお持ちでしょうが、我々CBS・ソニーチルドレンとでもいうべき人間にとって、このたびの大賀典雄氏の訃報は、本当にあの時代が終わりを告げたとでもいうべきショックな出来事で、とてもとても大きなニュースでした。
大賀氏は当時からメディアによく登場されていましたし、芸能雑誌でも毎年のCBS・ソニーヒット賞や海外アーティストの歓迎式などの写真には必ず収まっていらしたので、その人となりを覚えておいでの方は多いことでしょう。
CBS・ソニーが創立から数年で業界トップの座に君臨するようになったのは、ソニー系ならではの自由闊達な精神やアイデアのもと、制作サイド、営業サイドとも優秀なスタッフ陣が苦労して築き上げた結果でしょうし、徹底した戦略が貫かれた上でのことなのでしょうが、トップの大賀氏自身が音楽家でいらしただけに、所属アーティストたちへの理解が大きかったことも大いにあるのではないかと思っております。
今回、CBS・ソニーのアーティスト側の代表であるキャンディーズのスーちゃんの訃報と重なるようにして届いた報せに、ただ呆然としつつ、そんなことをつらつらと考えたりしておりますが…最近の旧譜カタログ商品企画にも、あの時代のヤングポップスのイメージ満載で、往年のCBS・ソニーらしさが感じられるものがありますので、それを紹介しつつ、大賀氏とスーちゃんお2人への感謝と哀悼の意を表することにしたいと思います。
その企画というのは、“懐刻盤”として大好評を博している「GOLDEN☆BEST オールカラー・ブックレットシリーズ」。
各メーカーから数多くのタイトルがリリースされているG☆Bですが、基本的に歌詞だけしか載ってないブックレットが多い中、このシリーズに限ってはプライスはそのままなのに破格のサービスぶりなのです。
代表曲を余すところなく網羅した収録曲はライトユーザー向けシリーズという様相を呈していますが、実はコアファンも満足できる仕上がり。
あの時代のCBS・ソニーだけが表現できた洗練度とは少々異なってはいますが、往年のアイドル誌の付録の歌本をイメージさせるブックレットの秀逸さは類を見ないもので、シングルのジャケ写と同じタイトルロゴを使った歌詞部分のデザインや、別カットを中心にセレクトされた写真など、これまでの全ベストをコレクションしているコレクターでさえ唸らせる出来なのです。
さらにシングルの発売日や型番はもとより、収録されていないB面のタイトルも記載されるなど、ディスコグラフィー的資料価値も高い上、タイトルによってはマニアックなファンなら読みたくてたまらないであろうディレクターの制作裏話も掲載されています。
これまで、2009年の百恵ちゃん(こちらで紹介)を皮切りに、おニャン子5人娘(こちらで紹介)、シンシア(こちらで紹介)、そして追悼盤ではありませんが予約注文が殺到しているというキャンディーズ(こちらで紹介)と続いてきましたが、このたび第5弾の発売が決まりました。
キャンディーズの3人とは東京音楽学院・スクールメイツの同期生。春日部なので、荒川のスーちゃんとは帰る方向も同じで仲が良かったという太田裕美さんの「 GOLDEN☆BEST 太田裕美 」!
ファンからはよく“ベスト盤の女王”と呼ばれ、ご本人もやや自虐的にそう称したことのある太田さんですが、実はソニーミュージックのベスト盤では百恵ちゃんや聖子の枚数にはとても及ばなかったりして。
しかも両巨頭みたいな単独企画は皆無で、レコード時代からすべてのベスト盤がカタログ企画シリーズに組み込まれたものばかりでしたしね。
加えて80年代以降、CD時代になってからは積極的には編まれなくなって(休業中だったこともありますけど)、97年までシングルA面曲ですらCD化されていないナンバーが何曲もありましたから、昔からずっと応援してたファンにとっては、女王という印象はなかったんじゃないかなと思います。
とはいえ、今となってはG☆BだけでもシングルA面コレクションの「 GOLDEN☆BEST/太田裕美 コンプリート・シングル・コレクション 」と、童謡集をカラオケ付きで復刻した「 GOLDEN☆BEST/太田裕美 どんじゃらほい~童謡コレクション 」(いずれも2枚組)が出ていますので、今回が3タイトル目となります。
先に2枚組のコンプリートベストが出ていますので、収録内容だけでいえば今回は入門編ベスト。一般の人がよく知っている初期作品をメインに、1970年代から2000年代までのシングル(基本的に純粋なシングルバージョンが収録される模様)を追いながら、太田裕美を総括したダイジェスト盤となっています。
“まごころ弾き語り”をキャッチフレーズに、74年11月1日、CBS・ソニーより「雨だれ」でデビューした太田さん。初期のクラシカルイメージ三部作となる「たんぽぽ」「夕焼け」に始まって、CBS・ソニー初のミリオンセラーを記録した「木綿のハンカチーフ」、連続ヒットとなった「赤いハイヒール」、CBS・ソニーのお家芸の一つでもある名作文芸路線「最後の一葉」、太田裕美の立ち位置を如実に示した「しあわせ未満」、再評価ナンバー1の実験作「恋愛遊戯」、木綿に次ぐ代表作「九月の雨」、横浜ブームを担った「ドール」、有終の美を飾るロサンジェルス録音「振り向けばイエスタディ」まで、松本隆+筒美京平のゴールデンコンビによる怒濤の名曲群はホントに奇跡的です。
また、拓郎節を歌いこなした「失恋魔術師」や、ファン投票1位の「青空の翳り」、CMソングのイメチェンヒット「南風」、ナイアガラファミリーとなるきっかけの「さらばシベリア鉄道」、70年代的太田裕美の総決算「君と歩いた青春」もバラエティーに富んでいますし、NY留学を経た83〜84年のジャパニーズポップス路線でも、太田さんの作曲の才能が銀色夏生の詩で開花した「満月の夜君んちへ行ったよ」や、10周年記念12インチシングルにして「木綿」へのオマージュとなった筒美作品「雨の音が聞こえる」と超充実。
さらに、98年に本格復帰して以降の作品からは、NHK「みんなのうた」でオンエアされ、裕美ファン以外からも高い支持を受ける「僕は君の涙」「パパとあなたの影ぼうし」がセレクトされています。
ザ・芸能界のナベプロに所属し、アイドルとしても通用するルックスやコントにも挑戦できる柔軟性を武器に、自作品ではなくいい作品にこだわって歌ってきた太田さん。歌謡曲とフォークの中道を進み、ニューミュージックという新しい流れに先鞭をつけた新しいタイプでしたが、それも実にCBS・ソニーらしいアーティストだった点だと言えるでしょう。
音源を持っている熱心なファンでも、ジャケットと別バージョンの写真満載のオールカラー・ブックレットは必見だと思いますし、新たなマスタリングも必聴でしょう。また、百恵ちゃんやシンシアの時みたいにレコーディング・ディレクターのコメントにも期待したいところです。
また、オールカラー・ブックレットシリーズでは、唯一現役のシンガーとして活動している人ですから、こういう気軽なベストならさほどファンじゃない人でも買いやすいと思うし、なごみーずコンサートの物販でも人気の1枚になりそうな予感がします。
なお、この際だからコレクター的な感覚で太田裕美のシングルをコレクションしたいという人で、もしシングルAB面集の「 太田裕美 Singles1974~1978 」「 太田裕美 Singles1978~2001 」をお持ちでない方がいらっしゃいましたら、G☆Bよりも先にまずそちらをお求めください。
マニアには本当にウレシイ、シングル盤のジャケットを縮小復刻したブックレット付き。SACDとのハイブリッド盤というこれまた貴重な仕様ですが、発売から8年が経とうとしている今、いつ生産中止になるとも限りませぬゆえ。
それと、オールカラー・ブックレットシリーズではありませんが、3月にお亡くなりなった坂上二郎さんの「 GOLDEN☆BEST 坂上二郎 」も同時発売されるとのこと。
もともとが歌手志望だった二郎さんならでは、75年に大ヒットした「学校の先生」から、89年にユニコーンとのまさかのコラボが話題を呼んだ「デーゲーム」まで、CBS・ソニー時代のシングル曲で構成された追悼盤だそうです。
(2011.4.25)