ついに東宝時代も網羅!お手頃3枚組×2タイトル!
1971年に歌手としてデビューして以来、40年と2年が過ぎた研ナオコさん。近年はまた歌手活動にも力を入れ、コンサートやディナーショーなどを精力的にこなしています。
シンガーとしては、75年に大成功を収めたイメチェンヒット「愚図」以降のシリアスイメージ、すなわちキャニオン時代のイメージが強いですが、元々は東宝レコード第1号歌手。
また、コメディエンヌとしての才能も発揮し、テレビタレントとしても評価の高い彼女ですが、元々は美空ひばりに憧れ、歌手になるために高校を中退したほどで、歌を歌うために芸能界入りした人なのです。
しかもヒット曲も多数、紅白出場も10回を数える大御所です。デビューからのアンソロジーが組まれてもおかしくなったのですが、東宝レコードが消滅してしまったためか、ピーターみたいな女の子だった初期の音源は封印されていた感がありました。
事実、その時代のものでCD化されたのは、阿久悠さんのBOXに収められた「京都の女の子」や「うわさの男」ぐらいにとどまっていましたので、ファンの皆さんはずっと不完全燃焼だったのですよね。
それが2013年、ここに来てついに実現します! 東宝時代を含む悲願の3枚組2セット「 (仮 )研ナオコ シングルA面コンプリートセレクション 」と「 (仮) 研ナオコ カバー作品コレクション 」が発売になるのです! ずっと切望しておりましたが、いろいろあったり、もう無理なんじゃないかという思いもありましたから、今はただ実現するということだけで胸がいっぱいです(このところ忙中閑なしで、多くのリクエストをいただいていたのにアップが遅くなり申し訳ありません)。
さて、ワタシぐらいの世代ですと、マチャアキのシャカリキからカックラキン、それも嫌味言子じゃなくてナオコお婆ちゃんのイメージが強いようですが、個人的にキョーレツな印象として残っているのは、やっぱり初期のコミカルな痴女イメージ。
バラエティー番組なんかでの立ち位置、それも中年男性などからの扱いやカワイコちゃんとの対比によるオチなんぞは、今考えると人権侵害のごとくヒドイものがありましたが、我々ちびっこはナオコのことを愛を持って応援していたような気がします。
幼心に好きだったのは「時間ですよ」のさゆりちゃん。スケバン、ズベ公のガラッパチなのに、親思いで恋人思い。それでエッチとくるものですから、あの時代のよい子以外の子どもたちが放っておくはずがありません。
キンキンに「美人しか撮らない」と言われたミノルタカメラを筆頭に、森繁さんとのキャベジンとか、CMも出てくるたびに笑っちゃうほど、ちびっこ人気も博していたのでした。
その感じがまさに東宝時代の楽曲のイメージ(正確に言えば4枚目から)なのですが、今回は「 (仮 )研ナオコ シングルA面コンプリートセレクション 」に東宝から出た全8枚のシングルA面が勢ぞろい。
伝説のデビュー曲「大都会のやさぐれ女」と第2弾「屋根の上の子守唄」に、筒美作品「二人で見る夢」までは内向的で哀愁を全面に出した感じですが、タレントとしてブレイクし流行に乗った「京都の女の子」から「こんにちわ男の子」「女心のタンゴ」、そして東宝時代の最高峰「うわさの男」にラストの「第三の女」までは、人気者としての風格のようなものが備わっていきます。
これまではシングル盤や、ベストLPにして東宝時代集大成の2枚組「ゴールデン・デラックス」や「あばよ」のNo.1ヒットに便乗して77年に発売された「その道・オリジナル14」を持ってないと聴けませんでしたから、A面だけとはいえホントに貴重なCD化です。
特筆すべきはやっぱり傑作「うわさの男」で、最後の箇所の振りや鼻にかける歌い方は、当時周りでもマネる子たちが続出。♪あ~んというフレーズと最後の痴女的アクションは、ちょっとしたブームになったものでした。
いずれにしても艶と伸びのある声質はこの時代ならではですので、そのへんを堪能してみるのも一興です。
キャニオン時代のシングルについてはベストもBOXも、たくさん出てきましたから今さら言及しませんが、今回のCDでは、パブリックイメージの延長の歌を封印し、逆にそのギャップを売り物に歌手として大成していく様子が初めて確認できるのではないかと思います。「かもめはかもめ」での復活、美談のイメージなど、そういう背景も併せて聴きたいものです。
あ、近年のコラボ音源も入っているようなので、ベストとしては過去最高だった「 名曲全集 」をお持ちの人もぜひ買い換えをご検討ください。
なお、今回同時発売となるのが、もう1つのカバー作品集「 (仮) 研ナオコ カバー作品コレクション 」。
キャニオン時代には、歌謡曲の職業作家よりもニューミュージック系のシンガー・ソングライターの力を借りながらヒットを飛ばしていった彼女は、カバーの多いアーティストですが、東宝時代は時代性もありもっと顕著。
何せ2枚のオリジナルアルバム「女ごころ」と「女心のタンゴ」では、ナウな同世代ヒットの麻丘めぐみ「わたしの彼は左きき」、安西マリア「涙の太陽」、八代亜紀の「なみだ恋」、りりィ「私は泣いています」から、ちょっと上のいしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」、朝丘雪路「雨がやんだら」、坂本スミ子「夜が明けて」といった筒美京平作品、弘田三枝子「人形の家」、奥村チヨ「終着駅」、いしだあゆみ「砂漠のような東京で」、業界人ウケしていたペドロ&カプリシャス「教会へ行く」、さらにはのど自慢荒らしの頃からの愛唱ナツメロ「星の流れに」「カスバの女」まで、計13曲もカバーしていたのですから。
今回はそれらが全曲収録されるようですし、さらにキャニオン時代のフォーク系を中心とする貴重音源もテンコ盛り。
例えば75年のアルバム「愚図」からは小坂恭子「想い出まくら」、よしだたくろう「旅の宿」、岡林信康「山谷ブルース」、中村雅俊「いつか街で会ったなら」、泉谷しげる「春夏秋冬」、布施明「シクラメンのかほり」、野口五郎「夕立ちのあとで」、沢田研二「時の過ぎゆくままに」、八代亜紀「ともしび」、79年の阿久悠作品集「NAOKO VS AKU YU」からは北原ミレイ「ざんげの値打ちもない」、杏真理子「さだめのように川は流れる」、藤圭子「別れの旅」、都はるみ「北の宿から」、堺正章「街の灯り」、岩崎宏美「あざやかな場面」、ズー・ニー・ヴー「白いサンゴ礁」、80年の「あきれた男たち」から石黒ケイ「憎いあんちくしょうのブルース」、さらにはポニーのテープのみ収録されていたという森進一「襟裳岬」というように市販では初CD化のものも多く、待っていたファンは溜飲を下げそう。
なお「私は泣いています」と「旅の宿」は二度レコーディングされているようですが、今回は古い時代の音源が入る模様ですし、近年のインディーズ音源もチョイスされるとか。
とにかく近年目を見張る充実ぶりのうえ、価格がお手頃という3枚組2タイトル。
やっぱ企画者の手腕というものは大きいなと実感する次第ですが、実は企画が立ち上がってからは光陰矢の如しで、ふと気づいたら昨年さらっと通販BOX「 研ナオコ 魅力のすべて [CD] 」が出たりしてて、正直もう無理じゃないかと思っていましたので、今はただ実現したことにあらためて感謝したいと思います。
フルコンプを望む方は、今回、結果的にこのスタイルになったのだと思いますので、ぜひ次へのアクションを。今回は見送られた中島みゆき作品コンプリート(ぜひオニピーらしいダブり配慮の「あばよ」「ふられた気分で」はアルバムやB面のバージョン収録の形で)や、シングルB面コンプリートなどが実現するためには、やっぱり早めのご予約、確かな購買です。ゼッタイ。
(2013.7.31)