オススメ復刻盤「カラーズ ~ベスト・オブ・コスメティック CM ソングス~」


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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#636

カラーズ ~ベスト・オブ・コスメティック CM ソングス~

2013.7.24発売、MHCL-2300、¥3,000)

時代を彩った化粧品CMソング、決定版コンピ!

 大御所であろうが、シングルを出すのにノンタイアップというスタイルが珍しくなってはや幾とせ。とはいえメディアも多様化と複雑化を極め、いわゆる流行歌そのものが存在しない今、タイアップが大ヒットに結びつくなんていう図式はとうの昔にすたれ、今の若い人にとってはもはや伝説と化しているような気がします。

 そういう意味では、タイアップという概念が生まれた70年代や全盛の80年代、ノンタイアップでヒットさせることがステイタスのようだった90年代が懐かしい限りです。だって、共通の意識や認識というものが存在していた証しのように思えてしまうもんで…。

 さて、タイアップからが生まれたヒットと言えば、やっぱり化粧品のキャンペーンソングに尽きるでしょう。
 春は口紅、夏はファンデーション、秋はアイメイク、冬は基礎化粧品という流れを基本に、大量のテレビスポットをはじめ雑誌広告や店頭展開などの一大キャンペーンが繰り広げられたものでしたが、それまでのコマーシャルソングと違うのは、とてもキャッチーなのにお洒落だったという点。

 商品名を連呼する代わりにキャッチコピーが歌詞に盛り込まれていたり、ズバリタイトルになっていたり…オンエアバージョンを含め中には例外はありますが、コマーシャルソングというよりイメージソングという感じの作品が多く、聴く方も商業主義の中心に取り込まれる感覚は薄かったように思います。むろんまだ一般ピープルが楽屋オチで笑ったり、業界ネタを欲しがる時代ではなかったこともありますが。

 国内から外資まで化粧品メーカーの中でも、資生堂とカネボウの2クライアントに起用されたら、大ヒットが約束されたようなものでしたが、それもそのはず。アーティストにしろ楽曲にしろ、商品開発と同じく緻密なマーケティングの末、ふるいにかけて選ばれた作品ばかりでしたから、名曲が多いのも当たり前です。

 と前置きが長くなりましたが、そんな化粧品のCMソングを集めた2枚組コンピ盤「 カラーズ~ベスト・オブ・コスメティック CM ソングス~ 」が発売となります。
 手前ミソではありますが、化粧品戦争の黄金期の内容ですし、ビビッドな時代の色を反映させたモノばかりなので、ぜひともオススメさせていただきたいと思います。

 1976年秋の資生堂・小椋佳「揺れるまなざし」から88年秋のカネボウ・工藤静香「MUGO・ん…色っぽい」までの36曲をチョイスした2枚組。

 基本的には資生堂VSカネボウの図式がメインですが、資生堂が尾崎亜美「マイ・ピュア・レディ」、堀内孝雄「君のひとみは10000ボルト」、ナイアガラトライアングル「A 面で恋をして」など旬のニューミュージックを先取りしたものが多いのに対し、カネボウは80年代半ばの松田聖子「Rock'n Rouge」から国生さゆり「ノーブルレッドの瞬間」、南野陽子「吐息でネット」へとトップアイドルをそのままモデルにも起用していったとか、それぞれの個性が浮き彫りになっている感もあります。

 ヒットという意味では、資生堂が圧勝もしくは五分五分で圧倒的有利だったイメージがありますが、81年は逆転。春は資生堂の松原みき「ニートな午後3時」に対し、カネボウは矢野顕子「春咲小紅」で快勝、夏は資生堂の吉田拓郎「サマーピープル」にカネボウはザ・ヴィーナス「キッスは目にして! 」と圧勝しているのです。

 あと、ニューウエイブの波が押し寄せた82年には、資生堂が忌野清志郎+坂本龍一の「い・け・な・いルージュマジック」、カネボウが一風堂「すみれ September Love」と、男性メイクの第一人者的なアーティストを起用したり。両者とも意識し合ったかのような展開もありますね。

 いずれにしても、ルージュやアイシャドウの色、小麦色から美白になるというファンデ、どんどん太くなっていった眉などなど、男性陣の興味もそそったメイクトレンドを思い出したり、真行寺君枝や小林麻美から、ハーフモデル、そして現役アイドルへとキャンペーンモデルに思いをはせたり、いろんな楽しみ方ができそう。

 こうしてみると、化粧品のCMソングって、商品のターゲットよりもそうではない層が関心を持って聴き、盛り上げていったような気がします。個人的にも、資生堂愛用の親戚のおばちゃんやお姉さんからよく販促用のレコードをもらったりしましたもんね。

 広告が血気盛んなエネルギーを持って世の中を動かしていた時代。今の感覚からすれば非難されてしまう点も多々あるような気もしますが、道徳や倫理観も含め、社会で生きることの基準が明確にあって、少なくとも大衆という層は同じ方向を見ていた分だけ、幸せだったような気がします。
 もっともそんなことを言えば、大衆が情報操作され煽動されていた哀れな時代だと声高に叫ぶ人がいらっしゃいますけど、そうだったとしても何かを得た分だけ何かを失ったように思いますので、そういうものも確認できればいいなと思います。


(2013.7.9)


*詳細のわかる特設サイトがオープンしています。

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