オススメ復刻盤「ハイ・ファイ・セット/ファッショナブル・ラヴァー」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#613

ハイ・ファイ・セット/ファッショナブル・ラヴァー

(2013.4.10発売、MHCL-30029、¥1,890)  *Blu-spec CD2/名盤復刻シリーズ

ラブ・コレクション(MHCL-30030)、赤い鳥のRED BIRDS(MHCL-30032)、竹田の子守唄(MHCL-30033)も同時発売!

魅惑のハーモニー、ほぼユーミン作品のセカンド!

 Blu-spec CD2による名盤復刻シリーズ(こちらで紹介)、ピックアップ編。今回は、ハイ・ファイ・セットです。

 伝説のフォークグループ・赤い鳥にいた3人、すなわち新居(山本)潤子、山本俊彦、大川茂によって結成されたハイ・ファイ・セット。ファッショナブルで洗練されたコーラスでは右に出る者がいなかったグループも解散から20年、今では彼らも伝説の存在になってしまいました。
 マンハッタン・トランスファーかジョン・ヘンドリックス・ファミリーか、ジャジーで洒脱なヴォーカリーズも得意としたハイ・ファイ・セットですが、真骨頂はやっぱりポップ。特にユーミン作品を中心に繰り広げた初期のアルファ時代は、きらめきを放っています。

 アルファ時代のアルバムは80年代の黎明期からちゃんとCD化され、Q盤で再発も行われていたものの、アルファレコードが90年代半ばに店じまいしたりして一時期は入手困難な状態にありましたが、2009年に4枚組のオールソングス・コレクション「 ハイ・ファイ・セット アルファミュージック編 1975~1978 」(こちらで紹介)として全音源の再CD化が叶い、またいつでも聴けるありがたい状況になっています。
 よって音源的に貴重というワケではありませんが、秀逸なコンセプトアルバムづくりを行っていた彼らですから、やっぱり単独のアルバム復刻という形を求める人も多いのですね。

 ということで、今回ブルスペ2で復刻されるのは、大ヒット2作。ほぼ荒井由実作品でまとめたセカンド「 ファッショナブル・ラヴァー 」と、サードにして77年の日本で最も売れたアルバムとなったメガヒット「 ラブ・コレクション 」の2枚ですが、ここでは前者をプッシュさせていただきたいと思います。

 その「 ファッショナブル・ラヴァー 」は76年6月発売。当時はユーミンが、バンバンに書いた「『いちご白書』をもう一度」と自身の「あの日にかえりたい」で大ブレイクを果たした後で、歌謡界からもオファーが殺到していた頃。
 ジュリー、アグネス、太田裕美、三木聖子というナベプロ勢を筆頭に、郷ひろみ、南沙織、岡崎友紀らさまざまな歌手に提供。一躍、職業作家がビビるほどの存在となった感じでした。結局日の目は見ませんでしたが、確か天地真理や桜田淳子などもユーミンによる新曲発売というニュースが流れたように記憶しています。

 とはいえハイ・ファイ・セットの場合は、ともに村井邦彦さんに見出され、赤い鳥時代から同じアルファの先輩格という存在。デビュー曲からしてユーミン提供の「卒業写真」でアルバム制作にも参加、「あの日にかえりたい」のスキャットを山本潤子さんが担当するなど姉妹的な関係ゆえに、オファーが来たから書きましたというものではない感じ。

 ユーミンが作詞作曲の両方を手がけたものは、元々は映画のために作られた「朝陽の中で微笑んで」と「フェアウェルパーティー」、そして先行シングルにしてバンバンのカバー「冷たい雨」の3曲ですが、大川さんが作詞したタイトル作以外はすべて作詞。
 夫君となるマンタさんが全編曲のほか作曲も手がけていますので、ユーミンフリークの皆さんも必聴のアルバムです。ちなみに「月にてらされて」は、本作のバッキングを担当したティン・パン・アレーのアルバム(マンタさんがボーカルを取って達郎やター坊がコーラス)からのセルフカバーで、「荒涼」は翌年のマンタさんのアルバムでカバー(歌はター坊とのデュエット)されています。

 ユーミンブームに乗ったおかげでオリコン最高5位まで上昇。55週もチャートインする超ロングセラーを記録しましたが、個人的にこのアルバムで白眉なのがオープニングにしてタイトル作の「ファッショナブル・ラヴァー」。
 洗練され完璧なバランスのコーラスワークと、心ウキウキさせるポップなフィーリングこそ彼らの真骨頂ですが、それをしっかり堪能できる1曲です。シングル「冷たい雨」B面とはまた違い、途中のコーラスが楽しいバージョンとなっています。
 どうしても潤子さんのリードボーカルばかりがクローズアップされてきたハイ・ファイ・セットですが、そんなパブリックイメージを抱いている人にこそ体感してほしいなと思いますね。

 今回、同時復刻されるもう1枚、77年2月発表の「 ラブ・コレクション 」はモーリス・アルバートのカバーにして最大のヒット「フィーリング」を収録した、これまた名作。
 オリコンのアルバムチャートでは11週にもわたりトップを独走し、ついには年間チャートナンバー1に輝いたメガヒットアルバムで、こちらではユーミンの「雨のステイション」や「中央フリーウェイ」をカバーしていますので、併せてお聴きください。

 なお、アルファ、東芝、ソニーにまたがるハイ・ファイ・セットのキャリアで、最も再復刻が遅れているのは東芝EMI時代。シングル音源はAB面を網羅したBOX「 ハイ・ファイ・セット GIFT BOX 」や、A面コレクション「 GOLDEN☆BEST ハイ・ファイ・セット コンプリート・シングルコレクション 」(こちらで紹介)で聴けるほか、最近活発なオンデマンドのMEG-CDで昨秋「 あめりか物語 」「 熱帯夜 」「 よりそって二人 」「 NOVEMBER RAIN 」「 ハローMr.Telephone 」「 miss you 」「 心離れるころ 」「 ラブストーリーはこれから 」の8タイトルが復刻されていますが、これを機にやっぱり純正仕様のアルバム再発に期待したいですね。

 またハイ・ファイ・セットの前身となる赤い鳥も、今回の名盤復刻シリーズに「 RED BIRDS 」と「 竹田の子守唄 」の2枚がラインアップされています。
 多種多様な音楽性を持っていた赤い鳥の、ポピュラーミュージックの部分を発展させたグループがハイ・ファイ・セットなワケですが、未聴の方はこの機会にそのルーツにも触れてみてはいかがでしょう。


(2013.2.22)


*名盤復刻シリーズについての詳細は、特設サイトまたは   SonyMusicShop をご参照ください。
 復刻タイトルのリクエストもできます。


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