オススメ復刻盤「荒井由実・松任谷由実 Yuming 40周年記念 期間限定プライス盤」


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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#648

荒井由実・松任谷由実 Yuming 40周年記念 期間限定プライス盤

荒井由実ひこうき雲(TYCT-69031)/MISSLIM(TYCT-69032)/COBALT HOUR(TYCT-69033)/14番目の月(TYCT-69034)
松任谷由実紅雀(TYCT-69035)/流線形’80(TYCT-69036)/OLIVE(TYCT-69037)/悲しいほどお天気(TYCT-69038) /時のないホテル(TYCT-69039)/SURF&SNOW(TYCT-69040)/水の中のASIAへ(TYCT-69041)/昨晩お会いしましょう(TYCT-69042)/PEARL PIERCE(TYCT-69043)/REINCARNATION(TYCT-69044)/VOYAGER(TYCT-69045)/NO SIDE(TYCT-69046)/DA・DI・DA(TYCT-69047)/ALARM a la mode(TYCT-69048)/ダイアモンドダストが消えぬまに(TYCT-69049)/Delight Slight Light KISS(TYCT-69050)/LOVE WARS(TYCT-69051)/天国のドア(TYCT-69052)/DAWN PURPLE(TYCT-69053)/TEARS AND REASONS(TYCT-69054)/U-miz(TYCT-69055)/THE DANCING SUN(TYCT-69056)/KATHMANDU(TYCT-69057)/Cowgirl Dreamin’(TYCT-69058)/スユアの波(TYCT-69059)/Frozen Roses(TYCT-69060)/acacia(TYCT-69061)/Wings of Winter,Shades of Summer(TYCT-69062)/Yuming Compositions:FACES(TYCT-69067)/VIVA! 6×7(TYCT-69063)/A GIRL IN SUMMER(TYCT-69064)/そしてもう一度夢見るだろう(TYCT-69065)/Road Show(TYCT-69066)

*2013.10.2発売(「A GIRLS IN SUMMER」のみ10.9発売)、各¥1,980(「水の中のASIAへ」のみ¥1,050)

ユーミンの名アルバム37作が、廉価になって限定再発!

 昨年、デビュー40周年を記念して出されたベストアルバム「日本の恋と、ユーミンと。」(こちらで紹介)がオリコン1位を獲得し、1970年代から2010年代まで、5つのディケイドで連続して首位に立つという前人未到の快挙を成し遂げたユーミン。

 原点回帰してプロコル・ハルムと共演を果たした上、40年前のデビューアルバムのタイトル曲「ひこうき雲」が今夏公開のジブリ映画「風立ちぬ」に起用され、リアルタイムで知る中高年はもとより、現代の若者や子どもの間にも大きな感動を呼び覚ましました。

 その証拠に、「ひこうき雲」はレコチョクやiTunesといった配信チャートで1位を獲得。さらにジブリとコラボしたスペシャル復刻アルバム(こちらで紹介)は豪華仕様にもかかわらずオリコン12位をマークし、LPセットは予約の段階で完売してしまうなど、相変わらず他の追随を許さぬユーミンパワーを実感したといいますか、景気が上向きになるとユーミンが売れるという経済理論を身をもって実証しているように思えたりして。

 今秋からも活発で、11月からは2年半ぶりとなるニューアルバム「 POP CLASSICO 」を引っさげたコンサートツアーもスタート、若かりし頃からの盟友・大貫妙子のトリビュートアルバム「 大貫妙子トリビュートアルバム - Tribute to Taeko Onuki- (2枚組ALBUM) 」にも参加するなど、往年のユーミンシーズン到来とばかり、巷の期待はますます高まっているようです。

 90年代の第三次ユーミン・ブームの際にはダブルミリオンを連発し、大都市の繁華街では道端にニューアルバム特設販売所が設けられ、いわばマルスの象徴であったユーミンですが、それゆえにここ十数年の景気低迷期には実売1桁、落ち目などとさんざん揶揄されてきましたから、ユーミンファンにとっては溜飲を下げる出来事という感じでしょうか。

 この「ひこうき雲」ブームに乗ったかのような今井美樹のカバーアルバム「 Dialogue -Miki Imai Sings Yuming Classics- 」のリリースもあり、旧譜再評価の機運もアップしていますが、このタイミングでセルフカバーアルバムを含むオリジナルアルバム全37タイトルが、¥1,980というスペシャルプライス(「 水の中のASIAへ 」のみ¥1,050)で期間限定発売されることになりました。

 80年代までの作品は、99年のリマスタリングBOXやバラ売りで、音質が格段に上がった廉価盤が出ていましたが、今回はさらにお安く、しかも90年代から2011年の最新作まで対象というのですから驚きです。
 ユーミン・ブランドはハイプレステージゆえに一般のセールはなし…というイメージを大きく覆した背景には、EMIミュージックがユニバーサルに吸収されたことと無縁ではないでしょう。

 個人的妄想付きではありますが、せっかくの機会ですので、おおまかに分けて流れを追ってみましょうか。
 まずは荒井時代、デビューアルバム「 ひこうき雲 」(オリコン最高9位)から、無垢と老成というユーミンの本質が浮き彫りにされた「 MISSLIM 」(8位)、ポップにブレイクを果たした「 COBALT HOUR 」(2位)、結婚引退ラストアルバムと考えていた「 14番目の月 」(1位)という4枚は、バッキングからアートワークも含め、まさに奇跡的。

 松任谷姓になってからは、復帰作の「 紅雀 」(2位)から、ブランド性とオシャレ度が極まった「 流線形 '80 」(4位)、日本版ヴォーグを意識した「 OLIVE 」(5位)、耳ダンボでも奥手な美大生の私小説「 悲しいほどお天気 」(6位)、最も内省的で最高峰の大名作「 時のないホテル 」(3位)までが一区切りと言えるではないでしょうか。最初と最後は鬱的な要素が前面に出ているような気がしますね。

 そして80年代を牽引するリゾートアルバム「 SURF & SNOW 」(7位)で吹っ切れて、45回転の由実的大戦総括「 水の中のASIAへ 」(9位)を経て、第二次ユーミンブームが巻き起こります。
 薬師丸ひろ子×角川によって火が付いたものですが、自信を回復したことがありありと分かる「 昨晩お会いしましょう 」(1位)、中高生に若返ったファン層にあえてオトナのOL的思想をぶつけた禅問答「 PEARL PIERCE 」(1位)は一つの到達点だったと思います。

 ここででありきたりな恋愛は卒業し、半田ゴテで脳内基盤に壮大なSFを構築した「 REINCARNATION 」(1位)や、ジュピターで時と宇宙をかけるYAジュブナイル「 VOYAGER 」(1位)でオカルト的な刺激を受け、ロス五輪からのスポーツの祭典「 NO SIDE 」(1位)でドーパミンを大量放出。

 このへんで時代の流れが変わると、より世の流れに敏感になっていったというか、日本最大の大量消費時代の絶頂期とともに、ユーミン・ブランドはどんどん肥大化。いよいよ第三次の国民的ブームに向けて離陸姿勢が整います。
 ただ、例えは悪いですけど、それまでの、ファンのルックスやセンスさえも審査される排他的会員制クラブみたいな要素が一気に薄まり、ディスコ前のコードチェックで落とされてきたような層が一気に進入してきたのも事実です。当時のユーミン風に言えば、紀ノ国屋や明治屋にもダイエーに行く便所スリッパで出かける、とでもいうような。
 この感じは一次、二次のブームの時がもっと辛辣だったようですが、王室の献上品がやがて下々にまで浸透していくという雰囲気も、ユーミンならではの普及形態であったように思います。

 そうしてバブルの萌芽「 DA・DI・DA(ダ・ディ・ダ) 」(1位)に「 ALARM a la mode 」(1位)で警告を出した後は、バブルだからこそお金で買えないモノたちを意識。技巧や才能でデコラティブな歌詞を追求した「 ダイアモンドダストが消えぬまに 」(1位)、あえて純愛にこだわった「 Delight Slight Light KISS 」(1位)、札束で頬をたたく輩に一撃を加えた任侠「 LOVE WARS 」(1位)と来て、イクのなら「 天国のドア 」(1位)の宇宙的エクスタシーで果てたいとばかりエスカレート。
 技術の進歩と経済の隆盛で神に近づいたような感覚というか、この頃、多くの人間が感じてしまった錯覚感さえ漂っているようです。
 そうして行き着いた後は、肉体としての死生観を感じさせる「 DAWN PURPLE 」(1位)で幽体離脱し、魂として第二の誕生を経験。「 TEARS AND REASONS 」(1位)で二度わらし、もとい少女がえりをしつつ、サイケな「 U-miz 」(1位)で実際に少女だった60年代末期から70年代初期を再体験。まるでドラッグでトリップしたかのようにチャネリングが始まり、「 THE DANCING SUN 」(1位)でハイの頂点へと達するのです。
 脳内曼荼羅で古代文明や聖地を巡礼し、スピリチュアルを突き進んだ末、ネパールの「 KATHMANDU 」(1位)、ネイティブアメリカンな「 Cowgirl Dreamin' 」(1位)、ハワイの「 スユアの波 」(2位)と各地の土着神へと回帰し、魑魅魍魎を飲み込んでいったユーミン。実際にシャングリラを体現して呪術は解け、14歳の無垢な少女へと戻った「 Frozen Roses 」(3位)という流れは、今振り返ると本当に必然だったように思えてなりません。

 自意識過剰で残酷。だからこそ繊細でエゴイスティックな少女性を映した荒井時代。時代を敏感にキャッチし、幾重にも張り巡らせたレトリックで世俗風刺を重ねてきた松任谷時代。亜流を駆逐する戦闘態勢とともに、それぞれのアルバムには、日本という国が辿ってきた道も記録されているような気がしますね。

 ミレニアムの2000年代からは、まさに輪廻転生。何度生まれ変わっても前世での歩みを繰り返してきた印象です。現在・過去・未来さまざまな要素の14曲も入った「 acacia 」(2位)しかり、サーフ&スノウpart2の脳内リゾート「 Wings of Winter, Shades of Summer 」(2位)しかり、一時は頑なに拒んできたセルフカバーアルバム「 Yuming Compositions:FACES 」(3位)しかり、映画的な「 VIVA ! 6 x 7 」(5位)しかり。思えば、ずっと強気だったユーミンにしては珍しく苦悩や彷徨の時代が続いた印象があります。

 しかし、直近の3作「 A GIRL IN SUMMER 」(3位)「 そしてもう一度夢見るだろう 」(4位)「 Road Show 」(2位)はいずれも力作で、往年のパワーや感性を取り戻したように思えます。
 焼き直しのように聴こえたとしても、過去を凌駕するような新たなオリジナル性を感じますので、これらに続く新作がいったいどうなるか。
 40周年で実現した荒井由実と松任谷由実の意識的な邂逅が、どんな化学変化をもたらすのか。鶴の機織り状態の最期まで見届ける覚悟で、大いに期待させていただこうと思います。

 というワケのわかんないゴタクはさておき、10代の荒井時代から時代を先行し、日本のドメスティックな音楽にモードを取り入れ、それを大衆にわかりやすく普及させてきたユーミン。
 例えるならオートクチュールのメゾンがプレタポルテを売り出し、我々パンピーの美意識を向上させてきたようなイメージで、どうしても革命的な女傑のように現象中心に語られてきたユーミンですが、あくまで卓越していたのはミュージシャンという本分です。

 今回はこんなにお得なプライスで再発され、それが十二分に堪能できるというのですから、お持ちでない方はこの機会にそろえてみては? 80年代リリースの旧盤や、90年代以降のオリジナルについては、買い換えてみるのもよさそうです。

 なお、この期間限定プライス盤は、2013年12月31日までの限定出荷商品となるそうですので、迷ってる方は特にお買い逃しなきように!

(2013.10.2)


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