本人監修！今よみがえる淳子のエンタテインメント！
そう、「スター誕生！」を中心にミドルティーンアイドルが主流となる芸能絵図を完成させた2人です。むろん道を開いたのは1期上の森昌子ですが、百恵ちゃんと淳子の存在なしには、70年代半ば以降の歌謡界は全く違った様相を見せていたことでしょう。
とはいえ、さすがの百恵ちゃんも、40周年は突入時に目玉の豪華本が出たもののCDでは大々的な記念商品がなくさよならコンサートのライブ盤再発や懐刻盤アルバム・ベスト（こちらで紹介）にとどまったようでしたので、淳子にも全然期待していなかったのですが、ここに来て2CD＋DVDの3枚組「 Thanks 40 ~青い鳥たちへ
」の決定が正式にアナウンスされました！何とも感動の40thアニバーサリー！ BOXの出た30周年以来、いやオリジナルアルバム復刻やライブBOX以来の衝撃が走ったのですが、それは監修という立場でなんと淳子自身が全面的に参加していると聞いたからなのです。
コレはまさに、淳子からファンへの贈り物。去る5月、サンミュージックの相澤会長のお通夜で久々に動く今の淳子を見て以来、いろんな思いが渦巻いていたワタシとしましては、余計に感慨深いものがあります。
さて、この記念セット。まず2枚のCDは、初の本人自選によるベストアルバムで、Disc1がデビュー曲「天使も夢みる」からアメフトルックが素敵だった「MISS KISS」まで、恩師・阿久悠さん作詞のナンバーで構成したアイドルポップス・セレクション“THE IDOL”。
初期から中期の大ヒット曲は、天真爛漫な天地真理路線で親しみやすく誰もが口ずさめるものばかりですが、真理ちゃんフォロワーに終わらなかったのは、やはり淳子の才能。本気で自らを天使だと信じ、夢や希望、そよ風などおよそ実体のないモノを嘘偽りなく体現してみせる、という芸当ができたのは、桜田淳子ただ一人であったと言っても過言ではありますまい。
また、このディスクは、淳子を発掘し、教え導き、育て上げた阿久悠さんの作品集という一面も持っていますので、阿久さんが淳子に注いだ並々ならぬ愛情も感じられることでしょう。なお、シングル曲に混じって、アルバム「熱い心の招待状」から「セクシー・ギャング」がセレクトされているのも興味深いですね。
一方Disc2は、中島みゆき書き下ろしの「しあわせ芝居」でイメージチェンジを果たして以降、ニューミュージック系のシンガー・ソングライターによるアダルトポップス中心の“THE FAVORITE”。今もしもコンサートをしたら…というコンセプトの構成になるそうです。
筒美作品にして大名作の「リップスティック」が最後のトップ10ヒットとなったワケですが、この時期からの作品はヒットという点では今ひとつに終わっても、研鑽と精進に明け暮れた淳子の苦悩と歓喜が刻まれている分、とても味わい深いものがあります。
伊藤薫さんによって歌手として本当の変身を遂げた「パーティー・イズ・オーバー」や、尾崎亜美ちゃんの魔法がきいた「Lady／あなたは魔術師（YOU'RE A MAGICIAN）」、レオタードで度肝を抜いたテクノ歌謡「ミスティー」、後期淳子の真骨頂であるミュージカル「This Is a“Boogie”」というシングル群も驚くべき完成度ですが、アルバムからの選曲も見逃せません。
“桜田淳子、中島みゆきを歌う”「20才になれば」から「時代」。フォトジェニックなジャケットが素晴らしい「一枚の絵」から、タイトル曲とハイ・ファイ・セットとの競作「夕なぎ」。佳曲ぞろいの「パーティー・イズ・オーバー」からは山下達郎作品「センチメンタル・ボーイ」。ミュージカル路線に開眼した「あなたかもしれない」から「恋にやきもき」。実験的名作「My Dear」からは、矢野アッコちゃん作の大傑作モノローグ「私は憶病者」。ラストアルバム「ナチュラリー」から、ラストにしてある意味、桜田淳子の集大成「私だけのウェディング」というチョイスになる上、うれしいことに博品館での名ライブ盤「私小説」から、百恵ちゃんの「秋桜」、ユーミンが岡崎友紀さんに書いた「グッド・ラック・アンド・グッドバイ」というカバー作品も収録されるようです。
ディスク２では、以前は百恵ちゃんという影を相手に、ただ光り輝いていればよかった淳子が、世の矛盾に毅然と抵抗するうち自らの中に影を内包していった…そんな過程も追えるのではないかと思います。1％の才能と99％の努力なんていうのは凡人のための言葉で、淳子の場合は100％の才能と120％の努力なのだということが分かる…といえばオーバーでしょうか。
という２枚のCDですが、ベスト盤にBOX、オリアル紙ジャケ、ライブBOXと、これまでの音源を全部持っている人にとって、CD自体には魅力を感じないという人も多いかもしれません。しかし、そんな方でもDVDにはＫＯされること間違いなし！
約120分超というテレビ映像コレクション。TBS「8時だヨ！全員集合」を中心に、スポニチ芸能ライブラリーの貴重映像など、すべて初商品化のテレビ歌唱映像だそうで、日テレを網羅したBOXのDVDとは違いますから、絶対必見、必携です。
自意識過剰な演劇少女時代を経て、自我と向き合い、女性として成長を遂げた淳子。いつしか女優として、エンターティナーとして神々しさとナチュラルな両極の美しさを漂わせていきましたが、映像付きならば、彼女の神髄であるエンタテインメントの素晴らしさがはっきりと分かることでしょうから、そのへんの様子がたっぷり記録されていることに期待したいものです。
そしてそして、今も熱心な淳子ファンの皆さんにとって、最も貴重といえるのが別冊のスペシャルブックでしょう。
サンミュージックの福田専務（淳子の初代マネージャーであり、制作部長であった福田さんは、現在は名誉顧問でいらっしゃるそうですが、我々にはやっぱり専務なのです）との対談を含むスペシャルロング・インタビューや自選曲への思いを綴ったセルフライナーノーツが掲載されるそうで、今から早く読みたい気持ちが募ります。大ボリュームで、絶対読みごたえたっぷりでしょうからね。
むろんこのお買い得価格ですから、ファンのみならず、多くの皆さんに手にとっていただけることを祈ります。迷っている人は、同じビクターから昨年出た伊代ちゃんのベスト「オールウェイズ I・Y・O [30th Anniversary BEST ALBUM]」（こちらで紹介）の充実度を参考に、ぜひともお早めのご予約を。
近年はいろんな寄稿や、著書で淳子の文章を目にすることも多かったし、CDのライナーでのインタビューや声の手紙など、ひと頃を思えば驚くほどの露出がありファンとしてはうれしい限りでしたが、極めつけは相澤会長のお通夜で淳子が発した「社長、来ましたよ」というあの言葉でした。
髪型を含め容貌にはちょっと驚きましたが、あの言葉ではちっとも変わっていない淳子の内面に触れたようで、正直ホッとしたのは事実だし、なんだか今後への期待も募ります。
もしかしたら天国の相澤会長が差配している気もしますが、これが単に周年行事で終わることなく、また新しい動きがあってほしい、あの淳子の本物のエンタテインメントというものが正当に再評価されてほしい…そんな思いを新たにする淳子の40周年です。
と思っていましたら、なんとビッグニュース！ 発売を記念して、11月26日に一夜限定の有料イベント「桜田淳子Thanks 40スペシャル～ファン感謝DAY」が東京・銀座博品館劇場で開催されることが決定！ 公式という形ではおよそ20年ぶりにファンの前に姿を現すことになるのだそうです！
CDの初回生産分には、封入特典としてチケット優先購入予約シリアル・ナンバーが入るそうですから、ファンにとってはやっぱり必須のベストですぞ！
（2013.9.6）
