輝くソニーのシンシア・ブランド!初のシングル全曲集!
1971年6月1日、CBS・ソニーレコードから「17才」でデビューした南沙織さん。2010年のデビュー記念日を過ぎ、ついに40周年目に突入です。
今日まで続くソニーのヤングポップス路線を確立したといっても過言ではないシンシアのこと、CD時代になってからも数多のベスト盤がリリースされ続けてきましたが、これまでBOXを除くとシングル曲を完全に収めたものは実は皆無だったのです。
2002年に出て昨年Blu-spec CD化された「GOLDEN☆BEST / 南沙織 筒美京平を歌う」はコンセプトが明確なのでそういう観点では括れませんが、曲数的には十分な2枚組ベストを見てみると、92年の復帰記念ベスト「Recall-28 SINGLES SAORI+1-」も、98年の「GOLDEN J-POP/THE BEST南沙織」も、惜しいことにAB面差し替わった「ふりむいた朝/気がむけば電話して」のどちらかがハズれていたり、臨時発売の外国曲カバー「カリフォルニアの青い空」や引退記念シングル「グッバイ ガール」が漏れていたりと、単独ベスト盤1タイトルでのシングル完全盤が見当たらなかったのですね。
昨年、「GOLDEN☆BEST / 南沙織 筒美京平を歌う」など、ソニーのアーティストたちの既発のベスト盤が一斉にBlu-spec CD化された時、百恵ちゃんのが新編集でしかもシングル・コンプリート(こちらで紹介)だったことをちょっと恨めしそうに見てしまったワタシですが(アレは封印されてしまってた「謝肉祭」の復活ベストというれっきとした理由があったためですけど)、1年が経ちついに朗報が届きました!
いよいよ発売となります、G☆Bシリーズ2作目にして、ベスト盤ではシンシア初のシングルA面コンプリートとなる2枚組の「 ゴールデン☆ベスト 南沙織 コンプリート・シングルコレクション 」!
ご存じデビューシングル「17才」から引退記念シングル「グッバイ ガール」までの全A面曲に、その後の企画シングルA面を集めた豪華盤となるそうですが、シンシアの軌跡を手軽に、あらためてたどるのにぴったり。ボーナストラックとして、涙の名曲「私の出発」が入っているのも見逃せません!
「17才」から「想い出通り」まで、初期のシンシアソングを築いた有馬三恵子+筒美京平コンビによる良質で初々しい作品群の、なんと瑞々しいことよ。マイベストはシングル両面としては「早春の港/魚たちはどこへ」、A面単独では「ひとかけらの純情」です。
次第に翳りを帯びてからも、レコ大歌唱賞に輝いた「人恋しくて」をターニングポイントに、ジャニス・イアン作曲のスマッシュヒット「哀しい妖精」など、哀愁を漂わす歌唱もこれまた魅力的。
後期の資生堂キャンペーンソング「春の予感-I've been mellow-」や引退前のラストシングル「Ms.(ミズ)」、事実上のラスト「グッバイ ガール」まで、少女からオトナの女性へと成長していく物語を読むような流れも味わい深いのです。
そして91年にレコーディング復帰した後、「青空/ファンレター-SO GOOD SO NICE-」「約束」「よろしく哀愁」「愛は一度だけですか」とタイアップがらみとはいえコンスタントに出されたシングルで聴けるのは、ふくよかな癒しの歌声。ずっとシンシアに書きたがっていた阿久悠さんがペンを取っているのも見逃せません。
現時点での最新シングルにして97年の「初恋」に至るまで、希有なボーカリストとしての魅力やシンシア・ブランドの輝きをたっぷり堪能できることと思います。
もしも、まだちゃんと聴いたことがない方がいらっしゃいましたら、この機会にぜひお手元にどうぞ。
と、シンシア初のシングルコンプという貴重なベスト盤になることですし、それぞれの楽曲も素晴らしいのはもちろんですが、実は今回特に注目したいのは全44ページ、オールカラーになるというブックレット。
百恵ちゃんのを購入なさった方はお分かりでしょうが、あのスタイルはホントに圧巻だったのですよね。
シングルジャケットのタイトルロゴを使った歌詞掲載や、シングルの別カットを中心に散りばめられた写真とか、アイドルのCDはこうでなきゃ!と思える仕上がりでした。
また、それぞれのシングルの発売日や型番はもとより、収録されていないB面のタイトルも記載されている上、原盤制作を担当したホリプロ・TOPサイドの川瀬ディレクターによるレコーディング・ヒストリーも掲載されるなど、コアなファンも大喜びの充実度だったのですよ。
ホント、あのブックレットは往年の芸能・アイドル誌の付録についてた歌本みたいな感じで、普段は手厳しいファンの方も太鼓判を押したようですから、その完成度の高さがわかるというものです。
アイドルって美しく変身したり、いろいろイメチェンを重ねるものですから、ベスト盤でもデビューからの変遷を追える写真が載っているのは、この上ないお楽しみになるんですよね。
余談ですが、パッと見は明星ヤンソンの巻頭か、平凡ソングの口絵ジャケットか、という雰囲気ですが、個人的には歌本ではなく、近代映画本誌巻頭のスターポートレートみたいな印象を受けてたりして。自社撮影じゃなく、メーカーの提供写真というイメージ…。そこがミョーにツボにはまってさらなる愛着を感じてしまったのでした。
それはさておき、今回のシンシア版が、その仕様にどこまで準じたものになるのか大いに気になるところですが、9月まで胸を膨らませつつ、発売を待ちたいものです。
そして86年版の「南沙織ベスト・コレクション」みたいに四半世紀を経ても廃盤にならず、資料としても貴重なシングル作品を網羅した真の定番ベストとして、末永く愛されますように。
いつまでもカタログに残るロングセラー商品となって、また新たなシンシアファンを生み続け、次代へと受け継がれていくことを心から祈っています。
(2010.6.30)