Light Mellowなキャニオン時代も紙ジャケ復刻!
EMI時代の紙ジャケ復刻(こちらで紹介)から、はや4年半。瞑想してポニキャン時代を待ちつつも、イロイロあったようで、もう、もう出なかったかもしれない…という気分でおりましたが、やっと再発されます! 才女・亜美ちゃん、80年にキャニオンレコードに移籍してからの作品群もめでたく紙ジャケ復刻されることになりました。
まずは10月、80年リリースの「 MERIDIAN-MELON 」(オリコン最高22位)、「 HOT BABY 」(23位)、「 Air Kiss 」(63位)、「 Shot 」(24位)、「 Miracle 」(20位)の5タイトル。
続いて11月に「 POINTS 」(34位)、「 PLASTIC GARDEN 」(13位)、「 10番目のミュー 」(10位)、「 POINTS-2 」(10位)、「 Kids 」(11位)という86年までの5タイトルが決定しております。
おニューなミュージックとかシティー派のポップスとかがオシャレだった70年代半ば、ポスト・ユーミンとして登場。ボッサなアコースティックをベースにひときわポップなきらめきを放っていたEMI時代の亜美ちゃん。末期にはエレクトリックポップへとサウンド的に大きな変身を遂げますが、それが大きく開花するのが80年代のキャニオン時代と言えるでしょう。
ちょうどソングライターとしても初提供した南沙織のヒットから始まって、金井夕子、高橋真梨子、杏里、桜田淳子、榊原郁恵と、楽曲への評価がうなぎ上りだった頃とリンクしていましたから、「マイ・ピュア・レディ」以来の再ブレイクにファンとしても期待が高まっていました。
プロデュースは、金井夕子作品で亜美ちゃんを抜擢した渡辺有三さん。移籍第1弾シングル「21世紀のシンデレラ」はトヨタ・カーエアコンのCMソングとして大量のスポットが打たれましたし、ラジオでも大プッシュ。サビも良かったし、大ヒットを確信したものです。しかし、チャートインはしたものの残念ながらスマッシュヒット止まりで振るわず。
ファンとしては、毛色は違っていてもNHKみんなのうたの「キャンディの夢」をレコード化していたら…という思いがくすぶっておりますけれど、結局、最高セールスを収めたのは提供曲集の「POINTS-2」でしたから、一般にはやっぱりソングライター・尾崎亜美のクローズアップに終始してしまうのも否めません。
でもですね、生来のキャンディボイスを最大の武器にした亜美ちゃんは、ボーカリストとしても一流ですし、アルバムは音楽家としての希有な才能が感じられる力作ぞろい。
しかも今回は初めての紙ジャケット仕様で、デジタルリマスタリング。それぞれアルバム未収録のシングル曲がボーナストラックで付く上、とてもお買い得なプライス設定なので、ぜひこの機会に触れてみてはいかがでしょう。監修はEMIの時と同じく金澤寿和さんで、ライナーも担当。リイシューには定評のあるLight Mellowクオリティですから、こちらの方も楽しみですね。
なお、Light Mellow系のリイシューとしては、庄野真代の初期コロムビア時代の4タイトル「 るなぱあく [+1] 」「 ぱすてる 33 1/3 」「 ルフラン [+1] 」「 マスカレード [+1] 」もリリースされるとか。筒美京平作品もあり何度もCD化されていますが、現在はオンデマンドCDのみとなっていますし、今回のは最新リマスタリング盤でボートラ付き、しかもオンデマンドよりお安いときていますから、新たにお求めの方はくれぐれもお間違えなく。
話がそれましたが、亜美ちゃんに関心はあってもいきなりオリアルは…という人は、キャニオン時代のダイジェスト版といえる「 ザ・プレミアムベスト 尾崎亜美 」でトライアルしてみるのもオススメします。
では、せっかくですので、マイベストをピックアップしてみましょう。いろいろ思い入れはあるのですが、1枚となると当時から大のお気に入りである81年のロサンゼルス録音盤「 HOT BABY 」に尽きます。
かのデビッド・フォスターがバックアップ、アレンジを担当したことでも大きな話題となった(まだ日本人アーティスト御用達ではなかった頃)アルバムとしておなじみですが、このアレンジや豪華なバッキングこそがキモ。というのも亜美ちゃんって、詩、曲、アレンジと、すべて頭の中でのサウンド構築が最初から立体的に出来上がっている天才イメージがあるのですが、それゆえに、すべて自分自身でやってしまうと完璧すぎてつまんないというか、当たり前すぎて面白くないというか、スリリングな化学変化が起きにくいように思えて仕方がないことがあるのです。
その点、このアルバムは当時の最先端、本場のAORサウンドをベースに構築されていますので、亜美ちゃんの楽曲自体の魅力はもちろん、ボーカリストとしての魅力が2倍、いえ3倍にも増幅しているのですね。
いまあらためて聴くと、サウンドに時代が感じられ、ノスタルジックな気分になりますが、とにかくカッコイイの一言。
天性のリズム感が生えるリカットナンバー「Love Is Easy」も素敵ですが、「身体に残るワイン」や、日本録音とはアレンジを変えて収録された「蒼夜曲~セレナーデ」といったバラードが出色。とりわけ、大仰なシングル版とは解釈が異なる「蒼夜曲~セレナーデ」の切なさよ。このバージョンを当時毎週聞いていた「尾崎亜美のミュージックランド」というラジオで初めて耳にして以来、ずっと心をつかまれたままの1曲です。日本にいて気づかなかったワビサビを外国の人に教えられたような、狂おしいまでの恋情が凝縮されている気がするんですよね。
実はコレ、とても評価が高いアルバムだと思っていたのですが、ネット時代になってこの頃の作品を良くは思っていないファンが少なからずいることを知ってショックを受けたものですが…。個人的には、あの頃のティーンに大ブームを巻き起こしたファンシー文具的なエンベロープ仕様のジャケット(色違いってとこも!)も含め、亜美ちゃんの最高傑作に推したいアルバムですので、ぜひこの機会に手に取っていただければと思います。
なお、POINTSシリーズ以外にも、各アルバムに亜美ちゃんファミリーと呼べる面々を中心にした提供曲(杏里「オリビアを聴きながら」、金井夕子「銀幕の恋人」、岩崎良美「ごめんねDarling」「WHO?」、渡部まさみ「小舟のようにLoving You」、松田聖子「天使のウィンク」、松本伊代「上海湾物語」「冒険少年への誘い」「シャイネスボーイ」「流れ星が好き」、原田知世「もう妖精じゃない」など)のセルフカバーが散らばっていますので、それぞれのファンやアイドルマニアの皆さんもチェックをお忘れなく。
(2013.9.19)
*2014.1.15には「
時間地図
」「
Lapis Lazuli
」「
Dinner's Ready
」も発売。これで80年代のオリジナルアルバムすべてが紙ジャケ復刻されることになりました。