18曲とともに振り返る、ほろ苦くも甘い卒業のひとコマ
1月は行く、2月は逃げる、3月は去る。年明けから年度末までの歳月のスピードは、まさに矢のごとし。中でも卒業を控えた受験生にとっては、月日は惜別の思いで見送るなどという感傷のいとまもないほど、ただ駆け足で過ぎてゆくものだと思います。
今年もセンター試験のニュースを聞いて、はるか昔の共通一次とそのすぐ後の卒業の頃を思い出したことでしたが、高校の卒業式はやはり大人の一歩手前の感覚が大きいこともあって、最も印象に残っているという人が多いのではないでしょうか。
個人的なことですが、高校は私立の進学校だったので、卒業式も試験日程や受験準備を優先したスケジュール。2月頭という早さだったもので卒業という事実よりも進路が確定していない焦燥感と、受かってもない大学や自由な生活への期待感を抱えつつ、とても不安定な感じだったことが、余計に印象と感慨を深めたようです。
共通一次の自己採点をしてすぐ二次を出願して…という慌ただしい中で迎えた卒業式。私大受験のため空席もチラホラと目立っていたりして、淡々と、まるで他人事のような思いで迎えたような気がしますが、その独特な感じがまさに大人の一歩手前という感じで心に残っているのです。
と、今となってはいとおしさで胸がいっぱいになる思い出たちが次々によみがえってきそうですが、今年の卒業シーズン、そんな風に誰の胸にもある数々の思い出にしみじみと浸るにはもってこいのコンピ盤がリリースされます。
それが、70~80年代にヒットし、卒業シーズンにぴったりのナンバー18曲を厳選収録した「 旅立ち~卒業ソングBESTセレクション 」。
卒業アルバムの表紙のようなジャケットも、ノスタルジックな気分を演出してくれそうですし、手前ミソではありますが、今春、手元に置いて聴きたい1枚としてオススメしたいと思います。
まず、80年組の松田聖子「制服」と柏原芳恵「春なのに」というユーミンVSみゆきの提供曲対決から、85年に繰り広げられた菊池桃子の「卒業 -GRADUATION-」と斉藤由貴の「卒業」という卒業戦争、海援隊「人として」と岸田智史「重いつばさ」の3B金八&1B新八という桜中学タイマンまで、セレクトの背景がそこはかとなく見え隠れしたりして、そういう視点からもニヤリとすること請け合い。
もちろん山本潤子ボーカルが冴え渡るハイ・ファイ・セット「卒業写真」と赤い鳥「翼をください」という卒業式の定番ソング、イルカ「なごり雪」と太田裕美「木綿のハンカチーフ」という列車で見送った76年春の旅立ち、森田公一とトップギャラン「青春時代」やバンバン「『いちご白書』をもう一度」、山口百恵「いい日 旅立ち」など団塊世代を泣かせるナンバーなど、今日まで聞き継がれる名曲もたっぷり出入っています。
また、たのきん主演の学園ドラマの主題歌だった石坂智子のデビュー曲「ありがとう」、ラジオでガンガンかかった沢田聖子初のスマッシュヒット「卒業」、グリコのCMソングで一躍有名になった永井龍雲「道標ない旅」、キャンディーズ涙のラストソング「つばさ」など、普段はあまりチョイスされないナンバーが入っているのもウレシイところではないでしょうか。
そして圧巻はラストに収められたアリスの「さらば青春の時」。個人的には77年のリリース時ではなく、活動停止した81年、古巣のEMIからシングルが再発された時のイメージが強いですけど、これぞチンペイ作品の真骨頂。コンサートのオーラスを飾る定番曲としても有名なスケールの大きな名曲ですが、ひと頃はクサいぐらいオーバーに思えて遠ざかっていたりして。でも、青春を通り越した今あらためて聴くと本当に感動的なんですよね。
という珠玉の18曲。年を重ねていくと、卒業は学生だった頃だけでなく、その後の人生のいろんなシーンに訪れることを実感するものですが、このアルバムがあればより実感できそう。いろんな節目や人との別れ、そして出会いまでを記憶からあざやかに引き出してくれたり、これからの日々にエールを送ってくれたり、まるで懐かしい友だちみたいな存在になるんじゃないかと思っています。
(2013.1.22)