名曲のオリジナルとカバーを収録したユニーク企画!
徳永英明が牽引した近年のカバーブーム。今やブームを通り越して、一つのジャンルとして定着してしまいましたが、一口にカバーアルバムといっても誰でも知っているヒット曲集から隠れた名曲、セルフカバー集まで玉石混淆、有象無象の様相を呈しています。
一般にはやはり安定した歌唱力のアーティストが歌い継がれる名曲をカバーする、という構図が最もウケていますが、カバー曲を聴いていると、オリジナルも聴きたくなってくるのが人情というもの。同じ曲でも、違う解釈によるアレンジや歌唱で全然変わったように思えた場合なら、なおさらです。
個人的にもそういうコトは思い当たりまして、カバー曲を聴きつつラックを引っかき回してオリジナルを引っ張り出したり、またはその逆もよくあります。
そういうケースを見透かしたのか、今月末に出る「 Original&Cover 」は、2枚のディスクにオリジナルとカバーをそれぞれ収録したというユニークな企画アルバム。
誰もが知っている70~80年代の名曲17曲をチョイスし、DISC 1がセルフカバーを含むカバーバージョン。DISC 2がオリジナルバージョンという構成で、それぞれ聴いても、聴き比べても楽しめるものになっています。
1枚目が歌入り、2枚目がオリジナルカラオケというモノはありましたけど、この構成は史上初といえるのではないでしょうか? アーティスト心理としては、比較対照が前提なので許諾に難を示す人も多そうですけど、リスナーにとっては歓迎すべき企画ですよね。
さて、選曲はフォーク・ニューミュージック系のシンガー・ソングライターによる作品となっていますが、オリジナルもカバーも大御所ぞろいで安定感たっぷり。
特に「いい日 旅立ち」の谷村新司と山口百恵、「秋桜」さだまさしと山口百恵、「オリビアを聴きながら」の尾崎亜美と杏里、「シクラメンのかほり」の小椋佳と布施明、「襟裳岬」のよしだたくろうと森進一というセルフカバー&オリジナルの5曲はどちらのバージョンも甲乙つけがたい感じです。
目立つのは、作家としても多くのナンバーを世に送り出してきたユーミンの作品。ここではカバーのチョイスを超チェックです。
ハイ・ファイ・セットに書いた「卒業写真」は岩崎宏美(81年ではなく2006年のバージョン)、ブレッド&バターの「あの頃のまま」は稲垣潤一と、ユーミンからの提供作を持つアーティストに加え、松田聖子の「瞳はダイアモンド」ではCharaをセレクトしていて、今年話題を呼んでいるコラボレーションを反映させたかのようにタイムリーな組み合わせとなっているのです。
81年の第2次ユーミンブームとリバイバル&廃盤ブームのきっかけを作った「まちぶせ」が三木聖子と石川ひとみの両バージョンで聴けるのも結構スゴイんじゃないかと思いますが、極めつけは、バンバンへの提供作にしてユーミン初のオリコンNo.1シングルとなった「『いちご白書』をもう一度」のカバーが内山田洋とクール・ファイブだということ。ユーミンファンも必携と言えそうです。
ほかにも、リアルタイムで競作だった村下孝蔵&三田寛子の「初恋」やTHE BOOM&加藤登紀子「島唄」、井上陽水奥田民生というユニット仲間による「リバーサイド ホテル」などのオフィシャルカバーもの、両方ともヒットした一風堂&SHAZNA「すみれ September Love」や赤い鳥&川村かおり「翼をください」など拮抗した作品が勢ぞろい。
こうして見るとやっぱり画期的な企画に思えますし、今月JFN系のFM各局で順次オンエアされている「『坂崎さんの番組』という番組」の坂崎音楽堂で取り上げられているそうですから、ぜひとも成功してシリーズ化されることを願っています。
(2013.7.4)
*詳細のわかる特設サイトがオープンしています。