テイチク80周年記念、ウマさにウナるカバー集!
2014年で創立80周年を迎えるテイチク。何せかつての名称が帝国蓄音機ですからね、長い長い歴史を感じます。
80周年に向けて、この秋からは所属アーティストのベスト盤をはじめ記念企画が目白押しのようですが、70~80年代のヤングアイドル全盛期にアーティストやヒットに今ひとつ恵まれなかったせいか、我々世代にとってなじみの薄いレコード会社であるのも事実です。
そんな中、ひとり気炎を吐き、大ヒットを連発した実力派アイドルがいました。そう、高田みづえ。
引退から28年。時たま相撲部屋のおかみさん姿は拝見するものの表舞台には出てきませんが、あのクールで安定した歌声や名曲の数々は、今も根強い支持を受けています。個人的にも最もレコードを買ったテイチクのアーティストはみづえさんなのでした。
で、今回の記念企画の一環としてラインアップされたカバーコレクション・シリーズにも加わっており、久々の新編集盤「 カバー コレクション・シリーズ 高田みづえ~青春の詩を唄う~ 」がリリースされるのだそうです。
みづえさんの場合、一躍スターダムにのし上げた77年のデビュー曲「硝子坂」からしてカバーというか競作だったワケですし、歌手として大きな転機となったのもカバー曲でしたから、コレはシリーズの1枚とは言え、必然の企画ではないでしょうか。
思えば初期のロック演歌路線も頭打ちとなり、どうしてもヒットが欲しくて松山千春のカバー「青春II」を出したのは、デビュー3年目の79年5月のことでした。生意気なイメージのせいもあり、心ない人たちからは「千春人気に便乗」だとかさんざんなことを言われ、成果は得られず…。
しかし、その低迷期の突破口となったのもカバー曲でした。それがフランク・ミルズの名曲「潮騒のメロディー」。単なるB面曲にすぎなかったのに偶然にも有線で火がつき、A面へと昇格。次の新曲の発売を遅らせてまで歌い続け、どんな歌でも歌えるシンガーであることをあらためて認識させていったみづえさん。
紅白に落選し引退も考えたと言いますが、翌80年には、満を持してSASのカバー「私はピアノ」を発表。大ヒットさせ、紅白にも返り咲いたのですからね。
その後も、千賀かほるの「真夜中のギター」に加え、音つばめの「愛の終わりに」、さらには「そんなヒロシに騙されて」「秋冬」「原宿メモリー」など競作を含みますがカバーによるシングルは圧倒的。変わり種では百恵ちゃんがラジオで披露した幻の作品「通りすぎた風」のシングル化もありましたし、何よりそれぞれをヒットさせてきた実績はダントツです。
さすがテイチク、演歌・歌謡曲系歌手の常套手段と言ってしまえばそれまでですが、内容と実績を鑑みると、高田みづえこそカバーの女王と言っても過言ではありますまい。ですから、このCDも安心してオススメできる内容になると思いますね。
ところで、今回の選曲コンセプトは“青春の詩(うた)”ということですから、柱となるのはやはり83年の廃盤ブームのまっただ中に出たフォークカバーアルバム「あの日に帰りたい」。
このアルバムに収録されていたかぐや姫の「神田川」、山本コウタローとウイークエンドの「岬めぐり」、加藤登紀子の「愛のくらし」、アリスの「秋止符」、井上陽水の「心もよう」、荒井由実の「あの日にかえりたい」、森山良子の「恋人」、風の「22才の別れ」、丸山圭子の「どうぞこのまま」、グレープの「精霊流し」、ビリー・バンバンの「さよならをするために」、布施明の「シクラメンのかほり」という全曲が収録されるとか。
また、シングルからは前述の「青春Ⅱ」「真夜中のギター」「愛の終りに」のほか、「秋冬」のカップリングだった小林旭の「北へ」 などが収録予定とのことです。
すべてCD化済みではありますが、98年の通販BOX「高田みづえ全集」(2011年にリニューアルされ「 高田みづえ全集 」として再発売)は90年代末期とは思えないほど音がホントにどうしようもなかったので、音源を持っているという方も今回の音質アップに期待して入手なさってみては。
そして80周年を祝いつつ、ちっとも進まないオリジナルLPやライブ盤の復刻を願ってみる…というのが、みづえファンのカガミと言えそうです。
(2013.9.26)