ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤516

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#516

由紀さおり&ピンク・マルティーニ/1969

(2011.10.12発売、TOCT-27098、¥3,000)

世界発売の新作は、PINK MARTINIとの'69カバー集!

 歌謡曲歌手・由紀さおりとしてデビューしてから40周年にあたる2009年、21世紀のオトナの歌謡曲をテーマにした傑作オリジナルアルバム「いきる」(こちらで紹介)を発表。新たな歌唱表現にも挑戦するとともに、豪華な構成の記念コンサートツアーも大盛況に終わり、以来、安田シスターズだけでなく、ソロ歌手としての活動もより活発になっている由紀さん。

 長いこと旧譜の再発が芳しくなかった由紀さんですが、念願のシングルコレクションBOX(こちらで紹介)もリリースされ、歌謡曲歌手としての再評価が高まる中、最近もアメリカの人気ジャズオーケストラ、PINK MARTINIとのコラボや、単独ジャズライブの開催が注目を集めるなど、さらに磨きがかかっているご様子です。

 趣向を凝らした40周年記念コンサート(オープニングにはヤラレました!)を拝見し、ますます魅了されておりますが、春先からアナウンスされておりましたPINK MARTINIとのコラボレーションアルバムがついにリリースされます。
 当初は「カバーアルバム With Pink Martini」という仮タイトルでしたが、このたび内容とともに正式なものが発表されましたので、復刻盤ではございませんが、やはりリコメンドさせていただきましょう。

 前にここで「いきる」を紹介したのをきっかけに購入してくださったという方が結構いらっしゃいましたし、「由紀さんのCDをまさか自分が買うとは思わなかった」とか「おっかなびっくり聴きましたが内容は最高でした」とかいうメールをいくつか頂戴したこともありましたのでね。

 それが、由紀さんがデビューした“1969年”をテーマにした「 1969 」(初回生産分のみ紙ジャケット仕様)です!

 コアな由紀さんファンや、昭和歌謡マニアの皆さんにはおなじみでしょうが、そうではない方のためにカンタンにまとめますと…PINK MARTINIは、アメリカ・オレゴン州で結成され、ジャンルを超えた古き良き名曲のカバーを得意とするオーケストラだそうで、日本のコアな昭和歌謡もピックアップしていたとか。その中には、なんと由紀さんの2枚目のシングル「天使のスキャット」のB面曲「タ・ヤ・タン」があったそうで、そこから縁が広がっていたそうなんです。

 それは「いきる」以来、由紀さんの「21世紀の歌謡曲」のプロジェクトでバックアップなさっている娯楽映画研究家・佐藤利明さんの尽力によるものだそうですが、なんと昨年11月にはPINK MARTINIのクリスマスアルバムに由紀さんがゲストボーカルとして参加。次に、彼らが今年の3月に来日した際には由紀さんがライブにゲスト出演し「タ・ヤ・タン」をコラボ。
 そして、由紀さんはアメリカで開かれた東日本大震災チャリティーコンサートにも駆けつけて共演。その際レコーディングした黛ジュンのカバー「夕月」は、4月からiTunesで配信されていたのです。

 そういう経緯があって、今度はアルバムもコラボすることになり、アメリカでレコーディングしたという話が聞かれました。制作の様子は由紀さんのブログでも紹介されておりましたが、それから半年近く心待ちにされていたニューアルバムが、コレなのです。

 1969年を象徴する名曲たちというテーマは、昨年のツアー「RADIO DAYS~1969~」を彷彿とさせますが、由紀さんは1969年にデビューし、そのデビュー曲「夜明けのスキャット」は深夜放送のラジオから火がつきブレイクしたのですから、やっぱり外せない所なんでしょうね。

 選曲としては、先行でお披露目された黛ジュン「夕月」をはじめ、いしだあゆみの「ブルー・ライト・ヨコハマ」、ヒデとロザンナ「真夜中のボサ・ノバ」(ティモシー・ニシモトさんのデュエットだそうです)、佐良直美「いいじゃないの幸せならば」に、「夜明けのスキャット」のセルフカバーと、由紀さんと同時代に活躍し、昭和歌謡の名曲と呼ばれるナンバーが目白押し。やぱり筒美作品2曲のチョイスはウレシイし、PINK MARTINIのアレンジと演奏が、由紀さんの円熟の歌唱と融合し、いったいどんな解釈のうたになっているのか期待は高まります。

 また、かの兼田みえ子の「私もあなたと泣いていい?」や、若き日の高橋モコさんやシリア・ポールのモコ・ビーバー・オリーブによる音壁サウンド「わすれたいのに」といった、いかにも深夜放送的というマニアックなチョイスもあるほか、由紀さんに曲提供したこともあるフランシス・レイの映画音楽「さらば夏の日」や、ジャズボーカルの大御所、ペギー・リーの「イズ・ザット・オール・ゼア・イズ」など、まさにワールドワイドな趣もたっぷり。

 フォーク世代にはたまらないPPMの「パフ」や、セルジオ・メンデスで有名な「マシュ・ケ・ナダ」など、厳密には1969年に出たりヒットしたりしたとはいえないものも含まれるようですが、あの時代は1曲が何年にもわたってヒットしたり、歌われ続けたり、うたの寿命が長かった時代ですから、当然アリですよね。

 なお、11月23日には、このアルバムにボーナストラックとして収録されている書き下ろしの新曲「 季節の足音 」 がシングル発売されるそうですが、驚くのはこのアルバムがイギリスでは10月、アメリカでは11月と、世界でのリリースが決定していること。
 PINK MARTINI様々という感じですが、リーダーからは“日本のバーブラ・ストライサンド”と讃えられているという由紀さんのうたが、世界の人々をも魅了していきますように。

 それと、僭越ではありますが、由紀さんの場合、天賦の才能と努力を積み重ねたキャリアと人柄を併せ持つ方ですから、何をやっても決まるのは当たり前だと思うのですが、それゆえにある意味ファン向けのマニアックな活動に終わってしまわないことを願っています。

 あの人もこの人もいなくなり、いたとしても歌わなくなったり、声が出なくなったり、あの頃から活躍する本物の歌謡曲歌手がほとんど姿を消した今。ひとの人生というものに寄り添い、その喜怒哀楽を昇華させるという意味での、ホントの歌謡曲を歌えるのは、もう由紀さんぐらいしかいないと思いますので。しかも、あんなに軽やかで、品があって、ユーモアとペーソスにあふれたうたをさりげに歌える人なんて。

(2011.9.13)


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