スタ誕から生まれた花のトリオ、映画2本が初商品化!
歴代の3人娘や御三家など、昭和の芸能史には数々のユニットが存在しますが、人気者が自然発生的に集まってできたり、雑誌の企画で便宜的に誕生したり、事務所や番組などの売り出し戦略から作為的に生まれたり、パターンはそれぞれです。
新新御三家やMSコンビ、花の末っ娘トリオやフレッシュ3人娘、MMK(聖・順・奈)など、歴史に埋もれてしまった組み合わせ(わかります?)の方が多いようですけれど、70年代の3人娘といえば、この前初のベストが出た新三人娘(こちらで紹介)と花のトリオに尽きるのではないでしょうか。
中でも最も自然で仲良く、最も定着し支持されたのが「スター誕生!」出身の花のトリオ。そう、森昌子、桜田淳子、山口百恵の3人です。
72年に先陣を切ってデビューしたスタ誕第1号歌手・マコの後を追うように、翌73年にデビューした淳子と百恵ちゃん。確かその年の夏休みには、スタ誕で「花の中3トリオ」を正式に結成。以来、進級するごとに呼び名を変えつつ、花の高3トリオまでティーンアイドルのシンボルとして君臨したのであります。
カラーテレビ時代を背景に巻き起こった70年代のアイドルブームに乗って、芸能界をすっかり模様替えするほどの勢力を誇ったスタ誕。この3人は、番組のアイコンといえる代表格ですが、小中高生を中心に受け手たちにここまで認められた3人娘も珍しいのではないでしょうか。
年齢は違っていても、3人と一緒に進級し、クラスメイトを応援するように声援を送っていたあの感覚は、同時代にスタ誕を見て過ごした人ならきっと共有しているものだと思います。
テレビや雑誌で見る姿は、ホントにあどけなく、仲の良かった3人。番組から生まれたと言っても作為的な感じは一切しなかったものですが、それはやっぱりスタ誕という番組で、池田プロデューサーのもとに築かれたファミリー的な愛情の賜物だったといえます。
当初、マコと百恵ちゃんを擁するホリプロでは、ホリプロ3人娘として石川さゆりをプッシュし、淳子に対抗するようにエンジェルハットを着せたり、3人をアコ主演の「としごろ」で共演させたりして売り出したものですが、当然受け入れられず…。
マコ、淳子、百恵ちゃんの3人はまたたく間に不動の地位を築いたのですが、その立役者はやっぱりマコでしょう。学園ソングを立て続けにヒットさせ、圧倒的なアイドル人気で番組の黎明期を牽引。なんたって花のトリオはマコが中心になって結成されたのですからね。
そんな3人ですが、このたび3人で主演した2本の映画がDVDセットとして、初商品化されることになりました! それが通販限定となる「 Masako / Junko / Momoe Memorial Box「初恋時代 / 出発(たびだち)」 」。
昌子、百恵のホリプロ、淳子のサンミュージックの提携企画として東宝で公開された「花の高2トリオ 初恋時代」と「昌子・淳子・百恵 涙の卒業式 出発」の2本組。予告編を特典映像としてプラスしたメモリアルボックスです。
どちらもCSの衛生劇場やスカパー!で放送済みですし、録画してDVD保存している人も多いでしょうが、右隅に邪魔なマークもなく、できる限り美しい映像で商品化されたDVDこそ、コレクションにふさわしいモノといえますので、3人のファンの皆さん、ぜひこの機会にお手元に。
同時上映は、それぞれ「青い山脈」、「瞳の中の訪問者」(とても面白かった印象があります!)という、スタ誕の後輩にしてホリプロ所属の片平なぎさ主演作でしたが、これもセットで見てみたいなあ…。
さて、肝心の映画ですが、まずはトリオとしての人気絶頂期の75年の夏休み映画「花の高2トリオ 初恋時代」。初代3人娘を意識した70年代の「ジャンケン娘」といいますか、絵に描いたような3人娘の映画という感じで、今見ると当時よりも古臭い設定に失笑してしまうシーンが多いのですが、それもスーパーアイドルたちのご愛敬。
75年は、歌の面でも人気の面でも、淳子がNo.1の時ですが、その立ち位置がそのままスクリーンにも表れているような気もします。同年公開の主演作では力んで演技過剰な感じだった当時の淳子ですが、3人一緒だととてもナチュラルに思えてくるのは気のせいでしょうか。逆に既に2つの主演作が公開され、いずれも堂々としてた百恵ちゃんのオーラが薄まって見えるのも不思議。
2人とも大好きなワタシにとって、この光と影の構図は永遠に興味深く、永遠に解き明かされない黄金律なんですよね。
また阿久悠+都倉俊一という、3人の作家陣をミックスして書き下ろされた主題歌「初恋時代」を3人が歌うバージョンは映画だけのお楽しみですね。
そしてもう1本が、未見の方にぜひオススメしたい、77年11月公開の「昌子・淳子・百恵 涙の卒業式 出発(たびだち)」。
77年3月、3人の高校卒業をもって花のトリオも卒業してしまうワケですが、その記念として日本武道館で行われたジョイントコンサートを収めたドキュメンタリーです。
コンサートの司会は日テレの徳光さんでその模様は木曜スペシャルでも放送されましたが、基本的にはドキュメンタリーですので淡々としたナレーションが進行。その効果も非常に高い貴重な映像です。
2年ほど前にスカパーで放映されていますが、その時はかなり大きなニュースになったので、映画は見ていなくてもその時のことが印象に残っている人も多いのでは。
そういえば、開催を巡って、爆弾を仕掛けたという脅迫騒ぎがあったように記憶していますが、どうだったでしょうか。
コンサート自体はデビュー曲を歌って登場するオープニング、三者三様のカバー曲で競うショータイム、黄金のヒットパレード、そしてフィナーレという構成で、まさに“青春を、愛を、心を歌う”という内容ですが、映画は3人の懐かしいヒストリーや制作発表の記者会見、リハーサル風景、ファンインタビューなどを交え進んでいきます。
当時といえば、淳子vs百恵の図式は続いていたものの、マコはすっかり演歌路線に行っちゃってヒットチャート争いから離脱した頃。なので、観客の声援も含めマコだけちょっとはみ出しているようなところもありますが、特筆すべきなのは前年の「横須賀ストーリー」を機にぐんと変化していった、百恵ちゃんの大人ぶりと洗練度でしょう。
これがカオーフェザー効果というものなのか、しなやかなセシールカットもバッチリ決まって、ホントにこれで18才?という色香と落ち着き。3人の色違いでおそろいのワンピース姿にしても、普通ならマコが浮きそうに思えるのに、今見ると百恵ちゃんの大人っぽさが無言でおそろいを拒否してるみたいに見えてしまって、なんだか違和感があったりします。
ちょうど淳子も「もう一度だけふり向いて」で大人への脱皮を図っていた頃でしたが、撮影中の主演映画「若い人」のせいもあって、ヘアスタイルは重く野暮ったいさなえのセミロング。直後に淳子もベリーショートになってぐっと変身しますが、この時ばかりは百恵ちゃんの異様なまでの美しさにかすんでしまった感じがしたものでした。
そのへんは3人そろったシーンより、歌の世界に入り込むソロコーナーで確認できるでしょう。当時の百恵ちゃんの新曲「夢先案内人」の輝いてることといったら!2コーラスの出だしを間違う表情もカワユイです。
チェックしたい部分と言えば、土居甫先生の振り付け。百恵ちゃんの「プラウド・メアリー」では、数ヶ月後にピンク・レディーの「渚のシンドバッド」の前奏で使われるいわゆる素潜りの部分の振りが入っていたり、気が抜けません。
また、マコには「どんぐりっ子」の松田洋治クン、淳子には「若い人」の小野寺昭さん、そして百恵ちゃんにはゴールデンコンビの三浦友和さんと、それぞれの主演映画の相手役が祝福をこめゲスト出演しているのもニクイ演出ですが、見どころはなんと言っても3人そろって歌う「初恋時代」と、ラストの「明日に架ける橋」。最後に感極まって3人が涙、涙で抱き合うシーンは、3人だけが分かり合える胸の内が見えるというか、ホントの友情が映し出されているようで胸を打たれます。
というDVDセット。個人的にはもちろん当時ロードショーを見に行きましたし、現在も友人のおかげでCSの放送もDVDで見られる環境にありますけれど、やっぱり商品として必携したいから、即買いですネ。
なお、購入をお考えの皆さん、コレは SonyMusicShop のみの通販限定商品となっていますのでご注意ください。
(2011.8.31)