ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤541

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#541

早見優/Thank YU -30th Anniversary Single Best-

(2012.3.28発売、UPCY-6664〜5、¥3,150)

*DVD付きの18枚組アルバムBOX「Thank YU ~30th Anniversary Special Box~」(UPCY-9201、¥29,800)は2012.4.18発売!

祝30周年!2枚組ベストとしては22年ぶりの新編集!

 黄金の80年代アイドルの中心的存在であり、まれに見る大物の数と仲良しグループ、そして生き残りの多さで知られる“花の82年組”も、ことしで満30周年。

 年度替わりの81年10月にデビューした松本伊代を筆頭に、小泉今日子、三田寛子、堀ちえみ、早見優、石川秀美、中森明菜ら錚々たるメンツが並びますが、チラホラと記念企画が発表され始めています。

 たとえば82年組唯一の大賞歌手・中森明菜が、休養中ではあるものの30周年記念としてザ・ベストテンBOX(こちらで紹介)を発売するのを皮切りに、堀ちえみが感謝をこめた30周年記念ライブを行い、歌手活動に力を入れていくことを宣言したり(ライブは2月11日にも開催だとか)、小泉今日子の30周年記念企画第1弾としてベストアルバムの発売が予定されたり、82年組の歌手活動に関係するニュースがゾクゾクと聞かれています。

 次は誰の番かと期待していましたら、いろんな意味で全盛期と最もイメージの変わらない感じがする早見優でした。

 それも久々の2枚組ベストにして、シングルA面完全収録となる「 早見優30周年ベスト 」が登場するという知らせ!
 さほどのファンではないけど一通りシングル曲を押さえておきたいというアイドルマニアの中には、このニュースに喜んでいる人も結構多そうです。

 というのも優ちゃんの場合、意外にもベスト盤でシングル曲が完全網羅されるのは初めてなのです。
 実際、シングル曲は2002年にぼくらのベスト・サンミュージック出版枠で発売された「早見優CD-BOX」に全て収録されておりますし、現在でも音源が欲しければ、早見優名義のレギュラーシングル全29枚はMEG-CD化されているので、容易に入手できる状況にあります。しかし、ちゃんとした定番ベストがカタログに残っていなかったんですよね。

 ちなみに現在入手可能なベストを挙げてみますと、2007年に出た「 りばいばる アイドル編 早見優 」(期間限定生産盤でしたけどまだ入手可能)が最新ですが、コレは廉価版ミニベストのため代表曲のみという内容。また、2003年にはG☆B「 ゴールデン☆ベスト 早見優 筒美京平POPSベスト 」が出ていますが、これはシリーズの基本形である王道ベストとは異なり“筒美京平POPS”ベストという企画盤。よって、ほとんどのシングル曲は入っていないのです。

 知名度やヒットの実績からいっても、2枚組ベストが当然という感じの優ちゃんですが、過去に出ていた2枚組も現在は廃盤。しかも95年リリースのQ盤2枚組A面コレクション「YU “SINGLE A"BEST COLLECTION」は86年盤の再発で、現役真っ最中の時に出たものでした。
 そのほかの2枚組にしても、89年の「Yu's BEST」とか、シングル曲は結構欠けていますが90年の「SINCE1982, Best Of YU」とか現役中のリリースであり、アーカイブものとしてシングルを網羅したものはBOX以外でなかったのです。

 裏を返せば、ファンの飢餓感はあのBOX発売で満たされてしまい、さほど需要がないとされてたのかもしれないけど、優ちゃんは今も現役で媒体露出も多く、ルックスのみならず歌の方もアイドル時代のイメージを立派に保っていますからね。
 ファンとしては、今の優ちゃんを見て当時の曲を聞きたくなったかつてのファン向けにシングル曲を網羅したベストぐらいはカタログに残っててほしいというのが正直な気持ちです。
 このへん、デビューが今はなきトーラスレコード所属で、その後トーラスの販売元だった東芝EMIに移籍し、旧譜はトーラスを吸収したユニバーサル系からという、ちょっとフクザツな背景も少しは関係してたのかもしれませんが。

 ともあれ、新編集の2枚組ベストとしては実に22年ぶりらしいので、まさに満を持しての発売と言えそう。
 しかも全シングルA面、すなわち82年4月発売のデビュー曲「急いで!初恋」から95年6月の「CHANCE~めぐりあいを、宝石にかえて~」までを完全収録し、発売順に収録されるそうですから、コレクションとして持っておくのにもぴったり。
 構成としては、ディスク1が“1982-1985”、ディスク2が“1986-1995”となる模様です。

 オススメはやっぱりアイドル全盛時代の1枚目ですが、82年組として欠かせない1人ですから、ラックに常備しておきたい必携のコンプリート・シングルコレクションという感じですね。

 ところで、優ちゃんの30周年を振り返ってみて、今も鮮烈に覚えているのがあのペンタックスのCM。そう、優ちゃんを初めてテレビで見た瞬間ですが、のちのパブリックイメージとなるハワイ育ちでアメリカナイズドされた動的なバイリンガルではなく、とても静的で大人びた哀愁をたたえた少女という印象でした。

 むろんCMの演出や、バックに流れたユーミンの「あの日にかえりたい」の効果もあるでしょうが、プールサイドの優ちゃんは物憂げな表情のせいだけでなく、知性と翳りが同居した、例えるなら薬師丸ひろ子っぽい異質アイドルの雰囲気がありましたっけ。
 少しだけオトナなんだ…というキャッチフレーズもその雰囲気から導き出したのかもしれませんね。

 でも、それゆえに、後で見たバスボンのCMや明るいデビュー曲「急いで!初恋」を歌う姿がしっくりこなかい感じだったんですよね。
 これはきっと、ファン側のみならずスタッフサイドも同様だったような気がします。

 だからこそ第2弾はマイナー調の英語ミックス「Love Light」(日本語詞を付けてシングルカット)になったのだと思うし、暮れの新人賞レースの勝負曲として重要な第3弾を「アンサーソングは哀愁」に決めたのだと思います。
 それは、新人の少女を売らんがための曲作りにおいて、策士である阿久悠さんが「無邪気な顔の微笑みを/仲間のうちで見せながら/一人になると心がうずく毎日」という詞を書いたことからも理解できるのではないでしょうか。五段活用のインパクトに隠れてはいますが、この詩を読むとペンタックスの優ちゃんがダブってきます。

 とはいえ、あのCMのイメージは優ちゃんの一部ではあったとしても本質ではなかった。優ちゃんが異質に見えたのは、実際に翳りを帯びたキャラクターだったせいではなく、日本の環境や芸能界のシステムに慣れず戸惑っていたのと、もともとがアメリカのミドルティーンらしく結構醒めててオトナっぽかったからなのでした…。

 と結局、実はデビュー曲の方向性は間違っていなかったワケで、トップ10入りを果たしたブレイクナンバーがハワイの潮風のような「夏色のナンシー」であり、それを後押ししたのがモノホンのアメリカンな優ちゃんを生かしたコカ・コーラのCMだったという事実がそれを証明しているといえるでしょう。
 むろん歌手の本質と魅力にぴったり合うオーダーメイドを得意とする筒美先生を起用したというのが大きかったんだと思います。

 このへん、同期で同時期のキョンキョンの経緯と酷似しているのですが、ホンネ化していく80年代アイドル界において、作ったイメージと本人のキャラとの解離があった場合、その差をどううまく縮めていくのかが成功の鍵で、音楽面では筒美先生が完璧なマジックをかけたという感がありますね。

 確かに筒美先生が手がけるようになってからの優ちゃんは光り輝くようで、南沙織の初期と重なって見えたものです。その後の上智大への進学などいろんな類似点も相まって、きっとかつてのシンシアファンの多くが優ちゃんにシンシアの幻を見たのではないでしょうか。
 近田春夫サンが「京平先生がシンシアっぽくさせたがっている」と言ってた「ラッキィ・リップス」のバースなんて、確かにそんな感じですもんね。

 その後も、八神純子さんの夫君となるジョン・スタンレー作「抱いてマイ・ラブ」や、ロングヘアでしっとりと挑んだ銀色夏生+筒美京平の名作「哀愁情句」、アン・ルイスに薦められてロック化した「Tonight」など、要所要所で変身を遂げてきた優ちゃん。
 優ちゃんらしい新境地を開拓した「PASSION」をきっかけに、「CARIBBEAN NIGHT」、現時点の最新シングル「CHANCE〜めぐりあいを、宝石にかえて〜 」へと続いた中原めいことの相性も特筆すべきでしょう。

 まだまだ人気があったのに早々と87年に引退した堀ちえみや、明菜やキョンキョンといった別格以外、ほとんどの82年組は80年代末期になるに連れ次第にヒット戦線から離脱し、90年代に入った途端、歌の仕事から遠ざかってしまいます。90年に引退した石川秀美しかり、90年で新曲のリリースが途絶えた松本伊代しかり。
 それはソフトやサウンドをはじめ音楽業界が一変したり、アイドルの定義が変わったりしたからではなく、支えていたファン層が卒業してしまったせいで、一般的なアイドルには仕方の無い終焉なのですが。

 しかし、優ちゃんは87年にユーロビート「ハートは戻らない」で復活ヒットを飛ばし、90年代は東芝EMIに移籍し変名を含んで4枚もシングルを出しているのだから立派なもの。
 さすが紅白に3回出場しただけのことはあるという感じです。

 脈絡がなくなっちゃいましたが、今回のベストが大好評を博して、再度のオリジナルアルバム復刻も進むといいですね。
 優ちゃんの場合、95年のQ盤のCD叢書で9枚ほど進みましたが、現在は全部廃盤。2008年にはEMIからファースト「 AND I LOVE YOU(紙ジャケット仕様) 」が紙ジャケで復刻されましたが、それでストップしたままという状況が続いていますので。

(2012.1.16)


*DVD付きの18枚組「 早見優 デビュー30周年BOX(DVD付) 」は2012.4.18発売!

 内容は「AND I LOVE YOU」から「Image」「LANAI」「COLORFUL BOX」「RECESS」「“MUSIC"」「WOW!」「TWIN」「Burning illusion」「SHADOWS OF THE KNIGHT」「GET DOWN!」「WHO'S GONNA COME?」「MOMENTS」までのオリジナルアルバムコンプリートに加え、ミニアルバムやサービスアルバム、12インチなどの2in1「Dear+Sincerely」「KIDS+Yu」と、「オリジナル・カラオケ集」2枚というCD17枚に、貴重なTV出演映像を収録したDVD1枚をプラスした18枚組アルバムBOXになるとのことです。

 なお、各アルバムのボーナストラックには、オリジナルアルバム未収録のシングル曲やベスト盤にのみ収録されていたナンバーをはじめ、英語カセット「優のワンダーランド」シリーズや、英語版「YU'S GOODS」シリーズ、さらには2002年のBOXでもリクエストの多かった「A Place in my heart-Let's get happy-」(NHK衛星第一放送の主題歌、プロモ盤でCD化)もついに収録されるようです。

 DVD付きにつき「 早見優 デビュー30周年BOX(DVD付) 」「 早見優 デビュー30周年BOX(仮) 早見優 デビュー30周年box 」「 早見優 デビュー30周年BOX(仮) 」「 早見優デビュー30周年BOX(DVD付) 」などオフプライスで販売しているショップもあります。特に過去のCD叢書やCD-BOXをお持ちで購入を躊躇されている方は、ぜひ価格をチェックし検討してみては。

(2010.2.10追記)



<お願い>
 オススメ復刻盤で紹介した商品に関して、以前から内容の問い合わせや要望などをお寄せくださる方がいらっしゃいますが、商品やメーカーを問わずこちらでは一切対応できません。その類のメールを頂戴しましても返信はできませんので、商品内容に関する問い合わせや要望などはくれぐれも発売元の方へお願いします。

 ちなみに早見優の「30周年ベスト」「デビュー30周年BOX」の窓口は、ユニバーサル ミュ-ジック カスタマー・サービスセンター(詳しくはこちらを参照)ですので、そちらへお問い合わせください。


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