ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤535

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#535

松田聖子 LPサイズ紙ジャケット復刻 コレクション<第2弾>

Candy(MHCL-20153)/ユートピア(MHCL-20154)/Canary(MHCL-20155)/Tinker Bell(MHCL-20156)/Windy Shadow(MHCL-20157)

2012.3.14発売、各¥2,800  *Blu-spec CD(LPサイズ帯付き紙ジャケットは初回仕様限定盤のみ、通常盤はジュエルケース)

*「SEIKO STORY~80's HITS COLLECTION~オリカラ」(MHCL-2027〜8)も同時発売!

黄金期の名盤、でかジャケ&ブルスペ再復刻の第2弾!

 竹内まりやとのコラボで話題を振りまいた後、10年ぶりとなるNHK紅白歌合戦への出場を決めた松田聖子。
 紅白ではなんと神田沙也加と母娘出演を果たすそうですが、当日はカウントダウンライブ会場の東京体育館からの生中継で、「瑠璃色の地球」でもヒットメドレーでもなく、坂本九ちゃんが50年前に発表した名曲「上を向いて歩こう」を歌うのだとか。

 巷ではブーイングや疑問の声も相当上がっていると聞きますし、個人的にもオリジナルじゃない歌での出場にちょっとビックリしたのは事実ですが、冷静に考えると「上を向いて歩こう」は唐突な選曲ではなく、2011年の聖子を象徴する歌に間違いなかったのでした。

 まず震災直後の4月、サントリーの企業CM「歌のリレー」(本年度のADCグランプリ受賞)の1曲としてオンエアされた時も1フレーズを担当(本当はメインで歌う予定だったとか)。
 そして9月にLAで行われたクインシー・ジョーンズの40年記念コンサートにゲスト出演し、彼の指揮のもと全米ナンバー1を唯一記録した日本の曲「SUKIYAKI」として日本語と英語のミックスで披露していますから。

 強力シングルが出たもののリリースは暮れだったことですし、今年の聖子の代表作は、確かに「上を向いて歩こう」だったといえるかもしれません。
 出場曲発表前の先日、まるでリハーサルのように出演したNHK「SONGS」でも歌われていましたが、大晦日の本番ではあまりショウビズチックにならずに、軽やかにデュエットしてほしいなと思ってます。

 という2011年の松田聖子ですが、もちろん旧譜も快調。
 黄金の80年代ベスト(こちらで紹介)はオリコン初登場23位をマーク、この類のCDとしては驚異的な順位で相変わらずの支持を見せつけましたし、オリジナル・アルバムのLPサイズ紙ジャケ復刻(紙ジャケは初回限定)第1弾(こちらで紹介)の予約も順調に進んでいる模様です。

 この流れを受け、第2弾となる5タイトル「 Candy 」「 ユートピア 」「 Canary 」「 Tinker Bell 」「 Windy Shadow 」の発売もアナウンスされました!

 第1弾と同じく高品質のブルスペ&単品売り、いずれも初回限定盤はLPサイズ紙ジャケ・帯付き仕様というBlu-spec復刻。ピクチャーディスク仕様で、今回はジュエルケースの通常盤も発売になるといいますから、願ったり叶ったりじゃありませんか。
 しかも今期から新たな発表があって、5タイトル同時購入者を対象にした抽選応募券も封入予定だとか。このプレゼント特典は当然第1弾から実施されるそうですけど、既に過去のブルスペ再発を買った人にとっても、あらためてコレクションしようという動機になりそうですね。

 さて、今期の82年から84年までというと、アイドルでありながら、ハイクオリティのアルバムアーティストとして飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃。事実上の松本隆プロデュースで、ニューミュージックを飲み込んだ聖子の世界が完成した時代です。
 全作オリコン1位で、ほとんどの人が聴き込んできたものばかりだと思いますし、今さら紹介するまでもないでしょうが、せっかくですのでササッと駆け足で流しておきましょうか。

 まずは82年11月リリース、聖子唯一の大賞となったFNS歌謡祭グランプリ受賞曲「野ばらのエチュード」を含む「 Candy icon 」。
 松本人脈も絶好調で、大瀧御大、南佳孝さんに加え、翌年からメインを張ることになるホソノさんが初登場しています。

 シックな秋、バロックカラーというテーマ通り、繰り広げられるのは聖子のヨーロッパ紀行。
 オープニングの財津作品「星空のドライブ」の♪ハハーンをはじめ聴きどころ満載ですが、今も頻繁に歌われる定番曲「未来の花嫁」、杉真理とのデュエット「真冬の恋人たち」など、シングルカットしていないのに有名なナンバーがてんこ盛りです。

 ところでこのアルバム、ファンの間では「ブルージュの鐘」のボーカル違い、「黄色いカーディガン」のバッキング違いとなる初回プレス盤バージョンが有名です。
 やはり初回生産が十万単位のアーティストは、工場の操業にも営業数字にも大きく影響しますから、決定された発売日は何が何でも死守しなければならなかったのでしょう。
 なので、とりあえずはOKを出したものの、スタッフさんは納得がいかなかったというのも容易に想像がつきます。特に聖子の場合はクオリティ重視で、歌だけでなく音の細部にまでこだわっていたでしょうからね。
 とはいえ、レコーディングの時間がとれない殺人的スケジュールで、声のコンディションが基本的に不安定だったゆえに再録音してもいいテイクになるとは限らない…。そんな苦悩までがうかがえる感じですよね。
 しかし後に残るレコードですから、セカンドプレス(シングル曲の場合はアルバム収録からさりげに変更とかが多いみたい)はやはり納得のいくミックスやテイクに差し替えた…という経緯だと思います。

 といっても、こういう例は別に聖子に限ったことじゃなく、百恵ちゃんやキャンディーズ、ヒロリンなどトップアイドルにはフツーにあった話みたいですし、いつの間にか差し替えられた音源って、世には出たものの、制作サイドにとっては没テイクと同じなんですよね。
 ファンにはCD化を切望する人が多いですが、「最高の出来のアルバムを届けたい」と考えるアーティスト側からしたら、今さら出されるのはかなりイヤな事なんじゃないしょうか。特に現役アーティストならば。

 もっとも聖子ソングの場合、作品提供したアーティストのコアファンからの要望も加算され、差し替えテイクのCDを望む声は圧倒的ですし、かなりのセールスが見込めるはずですから、ボートラではなくアウトテイク集みたいな企画の実現を待ちたいですね。アーティストサイドにはファンサービスだと思ってもらって…。

 話がそれましたが、次は83年5月の「 ユートピア icon 」。
 ジャケットはオリビア・ニュートン=ジョンの「水の中の妖精」だと言われますが、こちらは夜のプールの光線や、疲れ具合が出たような表情も相まって、なんとなくお湯の中いう感じ。もちろん聖子ですから大浴場ではなく、スパリゾートという雰囲気です。

 中身の方はブルーアイランド、サウスウインドと、AB面コンセプト別に構成。レコーディングに苦労したせいなのか、聖子お気に入りの「マイアミ午前5時」「セイシェルの夕陽」という2大定番ソングがメインのように思われてしまいますが、このアルバムの真髄はオープニングの杉真理作品「ピーチ・シャーベット」のキュートさに尽きるでしょう。

 当時は、甲斐よしひろ作品「赤い靴のバレリーナ」の分かりやすい繊細さにキュンとしたものですが、今では上田知華作品「メディテーション」の普遍性と真理に脱帽です。セルフ時代を予感させる自作詞が入ったのも特筆すべきことでしょうか。

 続く「 Canary icon 」は83年12月。
 夏に出たシングル「ガラスの林檎」が「SWEET MEMORIES」とのA面差し替えで1位に返り咲き、ユーミン作の新曲「瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ」とともにランクイン。名実ともにピークを迎えた頃のリリースでした。

 「瞳はダイアモンド」はシングル初の失恋ソングといわれたナンバーでしたが、実はこのアルバム、その流れで最初は「JEWELS」というタイトルと発表されていました。
 それが、聖子初の自作曲にちなんで変更。ホントはジャケットもカナリアを思わせる黄色の衣装のカットに差し替わる予定でしたが、なぜか採用されず…。
 このあたりのアルバムはクラスで回し聴きをしていたものですが、タイトル作はみんなから「ホントに自作~?」という疑いの声が上がったほどいい曲です。

 余談ですが、その差し替えられなかった写真はアルバム予約の特典ポスターになったのです。本当にかわいくて、みんなに愛された松田聖子の象徴といえる最高の出来だったと思います。いつかベストアルバムのジャケットに使ってほしいと思いつつ…この前の80年代ベストが、もしこの写真だったら売り上げが1桁違ってた気もするのですが…。
 なお「JEWELS」は結局コンサートツアーのタイトルとして残りましたが、このあたりからコンサートの完成度も段違いにアップしていきましたね。

 シティポップな林哲司作品にも名作が多いのですが、珍しくマイナーで超名曲の来生作品「Silvery Moonlight」がオススメ。
 ブームを呼んだシンデレラ・コンプレックスという概念への松本さんらしい返答と言いましょうか、当時の女性意識を等身大で表現した歌詩は、正直だから打算的ではないけど利己的な自己主張が魅力的。それを苦悩で包むかのごとく内省的な来生さんの哀愁メロ、大村雅朗さんのいかにも80年代半ば的な先進サウンドも秀逸です。さらに、当時としては珍しく感情を込め過ぎた歌唱との融合は、まさに聖子だからなしえた奇跡の証です。

 そして84年。聖子のキャンディボイスは完成されたように思いますけど、作品群はユーミンから指摘されたように行き詰まり感があるのは確かです。
 それが顕著な気がするのが、松本さんの切り札、聖子に求めた永遠の少女をテーマにした「 Tinker Bell icon 」。

 タイトル通りのフェアリーテールですが、松本さんが目指したのは単なる童話の翻案ではなく、おそらく上質なディズニーの世界の聖子版。「ピーターパン」「ふしぎの国のアリス」「シンデレラ」「眠れる森の美女」「ジャングル・ブック」など、数々のアニメーションのイメージがします。
 のちのコンサートでミニーマウスに扮しただけでなく、ディズニービデオのCMに出たり、イメージソングを歌ったりと本家と実際にタイアップもする聖子ですから、そう考えると感慨深いですよね。
 楽曲では昔からの人気バラード「Sleeping Beauty」が抜きんでていますが、予告編のように起用された尾崎亜美作品「いそしぎの島」も佳曲です。

 ジャケットの変貌ぶりも話題になりましたが、この頃から嶋田ちあきさんの手によってヘアメイクもビックリするほど変わり、アイシャドーもくっきり、ウィッグも多用。見るたび違うイメージで、サプライズの連続になっていったのでした。
 コンサバからアバンギャルドへ、女性がお手本として崇めるファッションリーダー的な要素も一段とアップしていきましたが、そういうアグレッシブさというか、ある種の毒みたいなものも音楽に反映されているようで、いい意味で小悪魔から魔女へと成長したというか、“本当は怖い童話”みたいな雰囲気も感じられると思います。

 その流れは84年12月発表の「 Windy Shadow icon 」で、よりカオス的に。作曲陣も「ハートのイアリング」を書いたHolland Roseこと佐野元春をはじめ、矢野顕子、NOBODY(時代を感じさせますね)らの新顔も参加。何をしても許される、怖いものなしの地位へと上り詰めたからこその、新しい聖子アイデンティティーの萌芽です。

 他のアイドルの誰も歌えなかったワンナイトスタンドソング「マンハッタンでブレックファスト」を筆頭に、衣装とヘアメイク同様、歌の世界でも奔放さは増し自由化がさらに進みましたが、注目すべきはラストの「Star」。ノンフィクション的で感動的なバラードとも言えますが、言い換えるとスター歌手の涙と栄光、哀しい宿命を歌うような、ザ・芸能界、ショウビズソング。
 奇しくもトップスター・松田聖子の周辺では、熱愛報道の盛り上がり、紅白での共演、そして破局会見…と聖子激動の時代へと突入。この時はまだ知るよしもありませんでしたが、数々の奇跡を巻き起こした聖子マジックは、終焉を迎えようとしていたのでした…。

 という5作、こうやってあらためて軌跡を追ってみると、本当に松田聖子という存在の大きさに震えがきちゃうような感じです。
 選書や前のブルスペの小さなジャケットを見ながら書いてもこんな状態ですから、今回のでかジャケ&帯付きなら、どうなることでしょう。

 なお、このシリーズにはボーナストラックとして各アルバムに対応したシングル曲中心のオリジナル・カラオケが収録されていますが(今回発売分では「Candy」には「野ばらのエチュード/未来の花嫁」、「ユートピア」には「秘密の花園/天国のキッス」、「Canary」には「瞳はダイアモンド/蒼いフォトグラフ」、「Tinker Bell」には「Rock'n Rouge/時間の国のアリス」、「Windy Shadow」には「ピンクのモーツァルト/ハートのイアリング」)、なんと同日発売で例の80年代ベストのカラオケ盤「 SEIKO STORY~80's HITS COLLECTION~オリカラ icon 」も出るんだとか!

 聖子のオリジナル・カラオケは30周年記念のケーキボックス(シングルBOX)や、お菓子の家の10万円BOX(96年の「コンプリート・バイブル」の復刻盤)にも収録されていましたが、カラオケ単体発売としては92年の「SEIKO SONGS~オリジナル・カラオケ・ベストセレクション30」以来。なんと20年ぶりのリリースとなるようです。

 ベストとオリカラという流れは、百恵ちゃんの「 GOLDEN☆BEST 山口百恵 コンプリート・シングルコレクション(完全生産限定盤) 」「 GOLDEN☆BEST orikara 山口百恵 コンプリート・シングルコレクション 」と同展開ですが、正統なポスト百恵候補としてデビューした聖子ちゃんが、30余年という長い歳月を経て同じ扱いとなり、ようやく王位を継承したように思えて、なんだか感慨深いモノがあります。

 もちろんこれからの聖子ちゃんの新展開(脱セルフという意味での)も楽しみにしておりますが、カタログ部門・SMDRからリリースされる旧譜としての新作や新企画にも大いに期待したいと思います。

(2011.12.23)


*Sony Music Shopで予約すると、先着予約特典(オリジナル特典)として「オリジナルB2ポスター」がプレゼントされます。
単品ではなく「まとめ買い」での予約に限るもので、特典がなくなり次第終了となるそうですので、お早めに!

*紙ジャケLPサイズ復刻盤第2弾全5タイトル購入者を対象に、500名に「松田聖子特製ジグソーパズル」が当たる応募抽選キャンペーンを実施。(通常盤は対象外ですのでご注意ください)


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