未完の大器、これぞポスト百恵の傑作セカンド!
ソニーの主人公(ヒロイン)といえば、そう、浜田朱里。
80年のデビュー時はポスト百恵の最有力として確かに高く評価されていた彼女。ムードといい、表情といい、声質といい、ドラマ枠やレコードのスタッフといい、最初はどこをどう見ても正当な後継者という感じでしたが、時代は彼女を選ばなかった…。
朱里ちゃんのことを思うだにいつも残念な気持ちになって、ついこういう書き出しで始まってしまうのですが、なんとこのたび超傑作、待望のセカンドアルバム「 青い夢 」が、ついにオーダーメイドファクトリーの候補に挙がりました!
OMFの浜田朱里復刻としてはファースト「 よろしく、朱里。 」と、ベストにしてコンプリート・シングル・コレクションの「GOLDEN☆BEST limited シングルコレクション」(こちらで紹介)に続き、第3弾となるこのセカンド。
デビュー2年目、朱里ちゃんはグラビア系の仕事が増え、もう勝負はついたと思われていた頃。実は1981年6月1日リリースのこのアルバムこそ、必聴の仕上がりなのです。
内容は、青いシリーズとして先行リリースされたシングル「青い花火/失われた季節」と「青い嫉妬/ジェラシーの章」を含む全10曲。
作詞は、同じレコード会社の同期でありサンデーズの同窓メンバーだった松田聖子を手がけていた三浦徳子さんを中心に、作詞家に転向した神田広美さん、竜真知子さんという女流陣で統一。
むろんラブソングですが、ほとんどが悲恋となっていて、女性ならではの情念、しかも嫉妬や媚び、未練といったかなり負の感情をあらわにするシチュエーションが満載です。
こう書くと、ドロドロなオトナの歌謡曲か、当時の中島みゆき的ネクラ世界を思い浮かべがちですが、このアルバムのすばらしさはなんと言っても、それを品良くまとめた哀愁漂うメロディーとサウンド。
同期の河合奈保子をメインにやっていた馬飼野康二さんと、同年「お嫁サンバ」でヒットを飛ばした気鋭の小杉保夫さんを作曲に迎え、アレンジはすべて馬飼野さんが担当。
トータルサウンドがバッチリ決まって、コンセプトアルバムとしてのクオリティをしっかり堅持。同時期のアイドルポップスとは、まったく一線を画すヨーロピアン・シティポップ系の出来となっております。
この品質に合わせるように朱里ちゃんのボーカルも相当よくって、実際は危なげだった歌唱ですら情念やコントラストという魅力に変わり、歌詞とともにゾクッとする名唱ぶりを見せています。
ただ、今回、アナログ盤に忠実なリマスタリングを希望。ベスト盤のようなボーカルに重きを置いた音質ではせっかくの名盤を再現できないように思いますので。
ともあれ、シングルでは見られなかった軽めのシティポップス「Rainy High-Way」「ペパーミントラブ 」から、哀愁ボッサ調の「ハーフ・ムーン・スナイパー」、曲構成の素晴らしい「花の香り」まで、けだるい午後の白日夢を思わせる聴きどころがたくさんありますので、ご興味がおありの方は一度騙されたと思ってお聴きいただければと思います。
当時、レンタルレコードが急速に普及し、クラスでのLP回し聴きやダビングテープ交換も増えた頃で、80年組の同時期のアルバムをみんなで聴きあったものでしたが、この作品のクオリティはかなり話題に上りました。
事実、まだニューミュージックとの完全融合前で中途半端だった松田聖子の「Silhouette 〜シルエット〜」や、70年代感覚だった河合奈保子の「Twilight Dream」とはちょっと比較できないというか、ジャンルを異にする感じで、拮抗するのは岩崎良美の「Weather Report」しかないという印象だったんです。
このへんの感じは未聴の方でも、シングル「青い嫉妬」からして普通はあり得ない洒落たボッサ調だったということで想像できるかもしれません。
というこのアルバム、オリコン最高59位ではありますが、彼女のアルバムでは最高セールスを記録した傑作です。
フォトジェニックなジャケット周りの写真も素晴らしいものがありますし、何とか早期復刻となりますよう、まずは無料のリクエストをば。皆さま、どうか清き一票をお願いします!
(2011.10.6)