グッド・ガール、Yes, It's Me! テイチク純正ベスト!
帝国蓄音器という老舗の意地だったのか、今年に入って初めてゴールデン☆ベストシリーズへの初参入となったテイチク。一時滞っていた旧音源発掘専門レーベル・クロニクルも再び活発化したようですし、巷では今後の再発&復刻に期待が高まっている模様です。
そんなところに届けられたのが、グッドガール、Yes, It's Me! そう、大沢逸美のニュース! テイチクからのベストCDとしては85年以来、約26年ぶりとなる「 ゴールデン☆ベスト 大沢逸美 」がリリースされるというのです。
といっても2003年には、アイドルもの復刻にも先鞭を付けたヴィヴィド・サウンドの名シリーズ、クローン・ユア・メモリーズの一環で2枚組の「 コンプリート・シングルズ・コレクション 」がリリースされたり、2010年には初期のシングルがMEG-CD化されたり、シングル曲はすべてCD化済み。
いずれも現在も入手可能ですのでスルーするという人も多そうですが、アレはホリプロ原盤でコレはテイチク純正盤。ということは、由緒正しき復刻にこだわるマニアの方は、結構こっちを支持するんじゃないんでしょうか。
音質に不満を持つ人が多かったと聞いたことがありますし、そのへんがどこまで改善されているかもウリになりそうな気もします。
さて、大沢逸美といえば、堀ちえみの後を受け、第7回ホリプロタレントスカウトキャラバンで優勝。ホリプロ好みの個性派、アコの流れをくむ80年代のゴッド姐ちゃんといいますか、ボーイッシュなルックスそのままのイメージによるロックンロール歌謡「ジェームス・ディーンみたいな女の子」で83年にデビューを飾ったのです。
作家陣は、ホリプロでいえば百恵ちゃんを開花させた強力ヒットコンビ阿木燿子+宇崎竜童を起用。ルックスだけじゃなく、大物の予感は十分に感じさせる演出での登場でした。
しかし、83年は花の82年組が次々にブレイクを果たした年。新人は軒並み苦戦を強いられたのですが、さすがはホリプロ。
CMのプッシュや、レコードの方もデビュー曲ほどのインパクトはなかったにせよ、阿木+宇崎の第2弾「キリキリ舞い」、ホリプロに出版権のある浜田省吾カバー「ダンシング・レディ」と、キャッチーなフレーズが印象的なシングルを発表。なんとか頭一つ抜け出し、歌謡大賞やレコード大賞の新人賞に滑り込んだのです。
当時、クラスメイトだった女の子が大沢さんに宝塚チックな感情を抱いたらしく大ファンとなり、レコード店でのキャンペーンに誘われ生で拝見したことがあるのですが(その流れでレコードを買ってしまい、サインとポスター、おまけに握手までしてもらった…)、アーミーっぽいパンツルックがビシッと決まったモデルみたいなプロモーションと、当時のアイドルにはなかったクールな歌唱に、好感を持ったものでした。
意外だと感じたのは女っぽくて優しい、というか少し気が弱そうな一面が見えたこと。普通のぶりっ子アイドルならとても良いことなのでしょうが、大沢さんの場合、売り出しのイメージとは実際はかなり違っていて、この後ずっとこのジミーキャラで売っていくのはキツそう、なんて思ったことでした。
「Yes, It's Me! 」「シルバー・スキャンダル」とアルバムも順調に発表されていたものの、案の定2年目からは歌手としてはきつくなる一方だったのですが、個人的には逆に応援するようになったのです。それはホリプロの隠された至宝・河合夕子のカバーを取り上げたから。
大の河合夕子ファンだったワタシとしては、彼女が第一線から消えた後、名曲の数々を広めようとする伝道師のように見えていたのですね。
結局、河合夕子カバーとしては、「リトル・トウキョウ」「フジヤマ・パラダイス」という初期の2作から、「ヨコハマ・エナジー」「上海慕情exotica/チャイナタウンでスクールデイズ(香港街学校日々)」をシングル化。
結構テレビでも歌ったのですが、あんまり話題に上ることはなく、歌手活動は試行錯誤の末90年の「Blue In Your Eyes」を最後に卒業。当初からやっていた女優業のほか、グラビアなどでも活躍し、近年ではお母さんの介護体験にかかわるお仕事でも知られています。
ホリプロの顔としてデビューしただけのことはあって今もホリプロ所属ですが、現在のアー写などを拝見すると、すっかり女らしくなって、ジェームス・ディーンみたいだったことが信じられない感じ。
今回のベストはシングル曲網羅の構成になると思いますが、29年の歳月にそんな諸行無常を感じながら、聴くのも一興ですネ。
なお、今回のテイチクのG☆Bとしては「 ゴールデン☆ベスト 北原佐和子 」「 ゴールデン☆ベスト 石田ひかり 」も同時発売されるそうですよ。
(2011.10.20)