DVD付きでついに発売! サッコのコンプリートBOX!
大きなシングルヒットなど1曲もなくて顔もうろ覚えのアイドルでさえ、ふと気がつけば全音源がCD化されている超復刻時代。
そりゃあ市販のCDソフト登場から30年目となるワケですから、ビッグなアーティストは一通り完結した後、仕様を変えて二巡、三巡の再々CD化が進んでいる昨今、マイナーな人でもオール・ソングスコレクションが出るのも当たり前というものです。
しかしそんな中にあって、オリコンベスト10に入る大ヒット曲が複数ある上、名曲名唱ぞろい、さらにNHK紅白歌合戦にも出ているほどの実績の持ち主なのに、なかなか復刻が進まないアイドル勢もいたりするのですよね。
その筆頭に挙げられるのが、1974年4月に「ひまわり娘」でデビューしたひまわりのような明るい女の子、サッコ。
そう、活動を休止していた時期もありましたが、紆余曲折を経て2004年のデビュー30周年記念リサイタルで復帰。昨年12月には一青窈作詩による久々の新曲「 女の歌 」をリリースした伊藤咲子さんです。
サッコといえば、かつての所属は東芝EMIの東芝レコードレーベル。ニューミュージック&ロック系のアーティストが圧倒的に強かったせいで、CD黎明期のベスト盤企画も、Q盤ブーム以降の復刻も、やっぱり数字の動くそちらが中心でした。
大御所のあのグループやこのソロアーティストなど、同じタイトルが何度も再発されてきたアーティストも多数いますけど、そっちに比重をかけたせいか、昭和の歌謡曲やアイドルのラインアップはとっても冷遇されてきた感があったんですよね。
EMIミュージック・ジャパンとなってからは、紙ジャケシリーズがスタートしたりしましたが、やはり枚数が伸びないラインアップだったようで頓挫した模様…。
特にサッコの場合、最初の復刻からイレギュラーだったせいか、実績を鑑みてもどうも正当に再評価されてこなかった感じで残念な思いをしたものでした。
ベストCDの変遷を振り返ると、サッコの復刻は大ファンだったという作家・高橋克彦さん渾身、93年の2枚組「なんてったってアイドルポップ〜つぶやきあつめ」からスタートしたのですが、これがシリーズでは異例のマニアックな構成。
直後の94年に「ビッグ・アーティスト・コレクション・ベスト・コレクション」が出ましたが、やはり内容が重複するCDを買うこと自体、当たり前ではなかった時代。アルバム曲を含めアラカルトな内容ではなく、まずはシングル曲を順に聴きたいという順当な声が多かったせいだと聞きます。
そして96年には、76年に出た初ベスト「想い出のセンチメンタル・シティイ 伊藤咲子ベストコレクション」が「伊藤咲子ベスト〜ひまわり娘」と改題されてQ盤発売。
さらに97年には充実の2枚組だけど曲順がビミョーな「ツイン・ベスト」、02年には未CD化のB面もチョイスされた「GOLDEN☆BEST」と、少しずつ補完されるように出たものの、実はどれ一つとしてシングル・コンプリートにならない選曲で、一部からはコレクター泣かせと呼ばれたりしていたのでした。
近年も05年のビギナー向け廉価盤「NEW BEST 1500」、07年のG☆B焼き直し「エッセンシャル・ベスト」と、1枚ものベストが細々と出ていますが、同クラスの他社アイドルでは当たり前に出てるコンプリート・シングルA面コレクションでさえ発売されずにいたのですね。
オリジナルアルバムも同様で、まずQ盤ブームに沸いた94年、東芝・音蔵シリーズでファーストアルバム「ひまわり娘」が初CD化。スタートは良かったのですが、2003年の紙ジャケ・必聴名盤シリーズではセカンド「私のカレンダー」ではなく、またまた「ひまわり娘」がチョイスされてしまうことに。
それでもEMIミュージック・ジャパンとなった08年には名盤プレミアム・シリーズとして「乙女のワルツ」(こちらで紹介)が紙ジャケでの初CD化と相なり、その後に期待したことでしたが、これにて終了となってしまっていたのでした。
アルバムでいえば、切望してた「私のカレンダー」のほか、「初恋〜伊藤咲子 ライブ・オン・ステージ」「青春」「おるごおる」「Slow Motion」が未CD化という状態だったのであります。
というように、大きな節目の周年もスルーされ、大変に長い道のりではありましたが、ここに来てようやくサッコBOXが発売となります。なんと待った甲斐があったDVD付き、コンプリートになるという10枚組「 伊藤咲子COMPLETE BOX(DVD付) 」!
やっぱり今春に出た「スター誕生! CD&DVD-BOX」(こちらで紹介)のDVD「木曜スペシャル 実録・スター誕生!」でのサッコのドキュメントは、ホントにインパクトがありましたから、タイミング的には満を持してのリリースと言えそう。
溜飲を下げるサッコファンが目に浮かぶようですが、名曲、名唱ぞろいのサッコの初期はホントに必聴ですので、ぜひお求めいただければと思います。
歌唱力と推薦枠に恵まれ、マコとヒロリンの間に位置するスタ誕きっての実力派アイドルとして鳴り物入りのデビューを飾ったサッコ。
明るくはつらつで、パンツが見えそで見えない黄色のミニで、一生懸命歌う様子は、歌が大好きで、歌うために生まれてきたような印象がありましたが、忘れてはならないのがかの阿久悠さんの存在です。
スタ誕出場からずっとサッコに注目し、合格後は自らと同じ事務所のオフィス・トゥー・ワンに所属させて一連の楽曲を作詞を担当。少女から大人の女性へ、サッコを歌で成長させてきた阿久さん。
阿久さんは、スタ誕デビュー同期でサッコとは花の末っ娘トリオのメンバーであったミッキー(小林美樹)やミッチ(石江理世)も高評価してたはずですが、サッコへの思い入れはハンパない様子で、それは書き下ろした詞を見比べても一目瞭然でした。
よく「阿久先生にはいつも叱られるんです」って言ってたように、ファンの皆さんなら、阿久さんがサッコを愛するあまり、かなり厳しく接していたのはよく覚えておいでのことでしょう。
阿久さんの寵愛ぶりでいえば、特別に愛し抜いた淳子、唯一の大人への脱皮を成功させた例として誇ってらしたヒロリンと並ぶ存在だったのではないでしょうか。このスタ誕3人娘は阿久さんが目も中に入れても痛くないほど可愛がっていましたし、3人とも本当に仲が良かったですよね。
そういえば月刊明星では3人のイラストも楽しめたリレー小説「ちょっぴり愛の日」も連載されておりましたが、77年ごろともなると既にサッコだけ勢いがなくなっていたので、なんだか残念だったのを思い出します。
話がそれましたが、東芝所属のご褒美だったというロンドン録音のシュキ・レヴィ作品「ひまわり娘」「夢みる頃」、大人っぽくなった青春唱歌の「木枯しの二人」「青い麦」、歌唱力を生かしてとにかくスケールを大きくした「乙女のワルツ」「冬の星」、打って変わって阿久さんのお家芸&サッコの本質を生かしたエンタテインメントお嬢さん路線「きみ可愛いね」「いい娘に逢ったらドキッ」と、2曲単位で展開してきた阿久さんの戦略はさすがという感じです。
しかし、あんなに巷で流れ人々の記憶に残っているデビュー曲でさえ順位的にはスマッシュヒット止まりだし、超名曲の2作目もなぜか売れなかったサッコ。そこで阿久さんは3枚目の「木枯しの二人」から、盟友・三木たかしさんとコンビを組むのですが、これがオリコン5位の大成功を収め、阿久+三木コンビとして続いていくのですね。
それはセカンドアルバムにして、秀逸なコンセプトアルバム「私のカレンダー」で早くも極まっています。
厳しかったということでいえば、越路吹雪さん、加山雄三さん、クレージー・キャッツなどを手がけた渋谷森久ディレクター。
久世光彦さんとも交流が深く、毛利久の名で加茂さくらさんや横尾忠則さんたちとともに「寺内貫太郎一家」に出てらっしゃいますが、まったく敏腕ディレクターには見えず、後でその話をお聞きしてビックリしたものでしたが、レコーディングでは鬼の渋谷。年端も行かぬ15才の少女だろうが容赦なく、サッコを大成させるべく難しい歌を次から次へと用意したといいます。
こういう良き指導者に恵まれたのも、サッコの幸運ではなかったでしょうか。
歌唱力だけで安直に見れば、当時のアイドルで歌の上手い人が進んだ小柳ルミ子っぽい路線や、それこそマコみたいな学園演歌路線とか、ひと昔前の東芝が得意とした大人の歌謡曲路線へといきそうなところを、とてもポピュラーミュージック的な方向でデビューでき、その後もアイドルポップスから歌謡曲、フォーク&ニューミュージック、洋楽まで、幅広いジャンルにチャレンジできていったのですから。
そのへんのバラエティー豊かな感じは、ユーミンの「きっと言える」からミヨちゃんの「しあわせの一番星」までをカバーしたファースト「ひまわり娘」や、上手さとレンジの広さを見せつけた唯一のライブ盤「初恋 伊藤咲子 ライブ・オン・ステージ」、洋楽カバーもこなした「青春」などでしっかりと確認できることでしょう。
とはいえ、その歌唱力がアイドルの範疇では理解されない難曲へとエスカレートさせ、ドラマチックでオーバーな歌唱表現をよしとする方へと向かわせてしまった原因にもなったと思いますし、それこそがファン離れを誘引する結果になったと思いますが、このBOXなら、そのへんの流れを冷静に正しく追えそうで、とても興味深いです。
デビューから実力派トップアイドルとして行くのが当たり前の雰囲気だったし、歩みは着実だったのに気がつけば失速し、なんとなく二番手になり、いつしか三番手になっても不思議ではなくなっていった感じがする、サッコの軌跡。
「ひまわり娘」のシングルを予約してまで買ってもらい、B面曲「オレンジの涙」の方をA面よりよく聴いた春の日。「夢みる頃」のB面「待ちこがれて」の超お洒落なアレンジに10年経ってハマった夏の日。
サッコのLPを買ったら、なぜかみちるのメモ帳をもらったこと。兄がテクニクスの4チャンネルステレオを成約したナショナルの展示会で、なぜかデモ盤が「木枯らしの二人」だったこと。
なんだか、そんなしょうもない些細なことまでハッキリと思い出せそうです。
また、テレビの懐かしの名曲特集なんかでもあまりオンエアされないサッコだけに、DVDにも期待したいところ。スタ誕出身者ならでは、愛情たっぷりの秘蔵VTR満載になることを期待して、予約することにしましょうか。
DVD付きなのでオフプライスに期待ですが、楽天ブックス「 【送料無料】伊藤咲子COMPLETE BOX(仮) 」なら今のところ19%引きということなので、ぜひチェックして賢くお買い物を。
ショップによっては、発注枠に達し次第売り切れになるところもあるようなので、見極めとタイミングが大事みたいですが、どうぞお早めに!
(2011.6.14)
*構成は、CDがオリジナルアルバム「ひまわり娘」「私のカレンダー」「乙女のワルツ」「初恋~伊藤咲子 ライブ・オン・ステージ」「青春」「おるごおる」「Slow Motion」に、新編集の「想い出のセンチメンタル・シティイ」(「夢みる頃」のB面「待ちこがれて」から「つぶやきあつめ/さん・びょう・し」まで、アルバム未収録のシングル曲ベスト)とレアトラックコレクション「未完成」(EMI後期の「未完成/迷路の中で」から「追憶」まで、徳間ジャパン時代の「愛人芝居/突然愛して」、最新曲「女の歌」のシングル曲に加え、信用金庫愛唱歌「ふれあい」、セブンイレブン・ファミリーソング「友達になろう」、“マニアを追い越せ!大作戦”を展開していた第一家庭電器のオリジナル・非売品カップリングLP「伊藤咲子・中原めいこ 76/45」の3曲「LOVE STORY」「リトル・プリンス」「寄り道」というレア音源を収録)をプラス。すべて紙ジャケ仕様で、DVDは日本テレビで放送されたヒット曲歌唱映像(「スター誕生!」「紅白歌のベストテン」「日本テレビ音楽祭」などからセレクト)、EMI制作の特別番組「ジャンピング・サッコ'76」、初のロンドン・レコーディングのドキュメンタリー映像、「ひまわり娘」のプロモーション映像など、全60分のプレミアムDVDになるとのことです。