40周年記念!初のシングル集大成、ついに発売!
祝40周年!今年3月に久々のオリジナルアルバムにして壮絶な超名盤「いきる」(こちらで紹介)を発表。歌謡曲歌手としての健在ぶりと、新たなうたへの挑戦を続ける姿を見せてくれた由紀さおりさん。各メディアに大量露出なさったり、各地をキャンペーンで回られたり、ますます意欲的な活動を続けていらっしゃいます。
ホント多才な方だけに各方面から引っ張りだこですが、ここまでソロシンガーとして活発にやられているのは、ホントにン十年ぶりではございませんでしょうか。
さらに、来る11月11日、12日の2日間は東京国際フォーラムにおいて集大成公演「40周年記念コンサート いきる ~今からはじまる夢~」を開催なさるそうで、あくまで現役として歌い続ける強固な意思と真摯な姿勢を拝見していると何だかこっちまで胸が熱くなってしまいます。
このように歌謡曲歌手回帰とでも言うべき40周年ですから、この機会に旧譜の再発も…と願ってたファンの皆さんは多いはず。その声に応えるかのごとく、その記念コンサートの初日にめでたく発売となります。待望のCD3枚組(4枚組の予定から変更)、シングル全集という「 由紀さおり COMPLETE SINGLE BOX 」!
収録曲の詳細が発表されたところ、当初の予定が大幅に変更されたようで、1969年の「夜明けのスキャット」から2006年の「この世の果てまでそばにいて」までのソロシングルA面に、今や海外のバンドにカバーされて話題集中の初期B面曲「タ・ヤ・タン」(その昔、アグネスが香港で「生きがい」を英語でカバーしたのとは毛色が違いますかね?)をプラスしたシングルコレクションになる模様です。最初はB面曲も未CD化のものを中心にセレクトされているということでしたが、残念。また次の機会を待ちたいですね。
とはいえ、今回はお得なプライスの上、初CD化音源も含むという大きなニュースですし、EMIミュージックに感謝いたしますとともに、40周年のお祝いにイチ早い予約が増え初動が伸びますことを祈念しつつ、お伝えさせていただきたいと思います。
新作ではあっと驚く歌唱表現を聴かせた由紀さんですが、基本はあくまでもメロウ。どれも品のある美しさと艶っぽさのバランスが絶妙ですよね。バックのサウンドには時代を感じることがあっても、由紀さんのボーカルは泉のように新鮮。同時代の歌手たちと比べて由紀さんの歌がエバーグリーンなのは、必要最小限の声の抑揚、最大限の効果を発揮できる点にあると思っています。
それって、昭和40年代に栄華を極めた女性歌手の中で、他に誰もなしえなかったことではないでしょうか。
そういう素養は歌だけでなく、ドリフのバカ殿のお女中やNHK「お江戸でござる」で見せたコメディエンヌぶりにも、古くは助演女優賞に輝いた「家族ゲーム」をはじめ「早春物語」「チョッちゃん」、近年の「魂萌え!」「ファイト」「歓喜の歌」「まぼろしの邪馬台国」といった映画やドラマで好演した名女優ぶりにも色濃く反映されていますよね。
個人的には、黒柳朝さんのお母様のキャラクターと由紀さんの個性がミックスされた「チョッちゃん」のお母さん役が大好きでした。
ところで、由紀さんの場合、歌謡曲歌手としては69年のデビュー曲にして日本初のスキャットヒットという触れ込みだった「夜明けのスキャット」(この前、タワレコ限定でマキシシングルが出ててビックリ)から、2007年にパッヘルベルのカノン「しあわせのカノン~第2章~」まで、レギュラー盤だけでも60枚を悠に超えるシングルが出ているはずです。
「夜明けのスキャット」のほかにも「手紙」「生きがい」「恋文」「挽歌」など、みんな知ってる大ヒットは多いですし、70年代後半の紅白出場曲「う・ふ・ふ」「トーキョー・バビロン」といったお色気路線の名曲や、拓郎提供の「ルーム・ライト(室内灯)」、ピンク・レディーのケイちゃんも後でカバーした正やん作「つかの間の雨」、時代は下がって佐々木好の「ストレート」などというフォーク界とのコラボに至るまで、いろんなタイプのナンバーが揃っていますよね。
しかし、これまで1枚もののベストしか出ていなかった…この事実を見れば、コトの大きさをご理解いただけるでしょうか。
その背景には、CD時代の到来とともに安田シスターズでの活躍があるのですね。姉妹としての活動は多くの人を感動させ、今日に至るまでヒットを続け、確固たる地位を築かれていらっしゃいますが、そのせいでソロの音源は割を食った形になってしまったのです。
救いは東芝EMI(当時)所属で、コンスタントにベスト盤が出ていたことですが、恒例のベスト盤はあくまでも一般向けの1枚もの。ですから、微妙な違いだけのリニューアルで、お嘆きのファンは多かった様子。それでも35周年の2004〜5年には計3種の初CD化満載ベストが出て、マニア諸氏の溜飲を下げたのは記憶に新しいところです。
ただ、これまで出た由紀さん単独のベストCD——おそらく20タイトル近くは出ていると思います——をすべて集めても、シングルA面がコンプリートにならなかったらしいんです。カスタム盤なども含めるとホント膨大なシングルが出ている由紀さんですから、しょうがなかったことかもしれませんがね。
ワタシが分かる範囲だけでも、ラブサウンズブームの時に話題になった71年のフランシス・レイ作品「男のこころ」(濱田高志さん監修「Love Sounds Style 読本」の特典でシルバー・ストリングスよるインスト版はCD化済み)や72年の「土に還るまで」とか、冷遇されてきた感のある70年代後半から80年代にかけての「季節風」「こころもち 気まぐれ」「やりなおしたいの」「アデュー」「シングルナイト」「このままがいいの」などは、未CD化なのでは?(フリオ・イグレシアスのカバー「悲しい悪魔」はなかにし礼さんがらみでCD化済みらしい)と思います。
であるからして、何はさておきシングル全集の発売が急務だったと言えますので、今回のリリースこそまず実現してほしかった企画と言えましょう。
むろんシングルだけでなく、エキスプレスレーベル所属ならでは、アルバム曲にも素晴らしいナンバーがいっぱいですので、まずはコレを手堅く予約して今後の朗報も待つことにいたしましょうか。
例えばフォークの面々が書き下ろした73年の「オリジナル・ア・ラ・カルト」(小田和正作曲の「永久のひととき」はオフコースファンにもオススメ)、ミヨちゃんの「赤い風船」や大信田礼子の「同棲時代」、ちあきの「喝采」など絶品のカバー集「恋文」、名唱「ルイ」を含む74年のコンセプトアルバム「銀座万葉集」、さだまさしトリビュートでCD化された「童話作家」や、正やんのタイトル作など76年の「つかの間の雨」、「横須賀ストーリー」に「夢先案内人」と百恵ちゃんファンも垂涎の77年「う・ふ・ふ 由紀さおり宇崎竜童を歌う」、服部良一作品集「Love Again」などなど、CDで聴きたいという方は多数いらっしゃるでしょうしね。
ということで皆様、ここはひとつ、早めのご予約をよろしくお願いしやす。(「時効警察」のナレーション風に読んでネ)
(2009.9.15)
*当初予定の4枚組から3枚組に変更、内容も大きく変更となっています。加筆修正しましたが、ご購入を検討される際は収録内容に注意ください。また、当初の原稿をご覧になってこちらからamazonに予約なさった皆さんには心よりお詫び申し上げます。発送前ならばキャンセル可能ですので、ご対応のほどよろしくお願いいたします。
なお、収録内容についてのご意見はこちらにお寄せいただいてもどうすることもできませんので、発売元のEMIミュージック・ジャパンまでお願いします。
(2009.10.16)