天才アッコちゃん、初期の名作5タイトルがSHM-CD化!
今月9日、東京・昭和女子大学人見記念講堂で上原ひろみ嬢とコラボしたレコーディングライブも大成功を収め、11月にはその模様を収めたライブ盤「 Get Together~LIVE IN TOKYO~(初回限定盤)(DVD付) 」をリリースするアッコちゃんこと矢野顕子さん。
NYに移住してからというもの、盆暮れに出稼ぎのように帰国するスタイルが板についてらっしゃいますし、ヤマハに移籍してからはより自由な音楽活動ができているよーな気もしますが、今年は恒例のさとがえるツアーも上原さんとともに行うのだとか。キャリアの差はあれど天才同士のセッションを享受できるなんて、幸せな思いを感じているファンは多いことでしょうね。
さらに来月には音楽を担当した映画「監督失格」の主題歌CD+特典DVDセット「 【ローソン・HMV限定】矢野顕子 しあわせなバカタレ 」も発売(注・ローソン&HMV限定)されるなど、活発な活動が続いているのはうれしい限りです。
とはいえ7月にはyanokamiでコラボしていたレイ・ハラカミさんの突然の訃報があり、夏フェスでのひとりyanokamiがあり、アッコちゃんにとっては本当に激動の年だったような気がします。
そういえば奇しくも今年はアッコちゃんのソロデビュー35周年というアニバーサリーイヤー。
ということで、初期のオリジナルアルバム5タイトルも9年ぶりに再発になるんだとか。しかも今回は高品質なSHM-CD化されるというのですから、これはシカトできない感じです。
思えば88年に事務所の自主制作紙ジャケBOX「やのミュージック」でCD化されて以来、BOXや単品で5回ほど再発されてはおりますが、現在は入手困難になっているようですし、今回、古巣のミディレーベルからの発売ということは、ディストリビュートするユニバーサルがオリジナルのフォノグラムを擁していますんで純正っぽい感じになりますし、コレクターの皆さん的にもイイ感じのような気がしますのでね。
YMOサポート後のジャパンレコードほんわか路線と比べると、やっぱりトガっていて、ホソノさん言うところの“狂女”のイメージがあるのは否めないのですが、やっぱりその比類なき才能を実感せずにはいられないフォノグラム時代。
中でもオススメしたいのが、76年7月発売、鳴り物入りの広告投下、業界騒然のプロモーションと評判がスゴかった衝撃のデビューアルバム「 JAPANESE GIRL 」です。
かのリトル・フィートを従えたアメリカンサイドのA面と、ティン・パン・アレーやムーンライダーズたち旧知の仲間と繰り広げられる日本サイドのB面という構成なんですが、全編にわたって刺激的。
お父さんの故郷であり、アッコちゃんも幼少時代を過ごし、ピアノに目覚めジャズ心を芽ばえさせた青森の郷土色もいっぱいで、津軽民謡の「ホーハイ節」をモチーフにした「津軽ツァー」や、ねぶたの躍動感いっぱいの「ふなまち歌」など、アッコちゃんの音楽の基盤となるリズム感覚には理屈抜きに魂を揺さぶられます。
確か19歳ぐらいで矢野誠さんと結婚して、この時は既にママになってたアッコちゃんですが、その風太くんをあやす「風太」からは、後にキヨシローもママと呼んだアッコちゃんの母性がのぞいています。
個人的にイチバンのお気に入りは、ローウェル・ジョージが尺八を吹く「クマ」。後のほんわか路線すなわち80年代のパブリックイメージのアッコちゃんを思わせるので、最もとっつきやすいかもしれませんね。
なお、2008年にはこのアルバムまるごとをピアノ1本で演るという企画ライブがありましたが、その演奏は「JAPANESE GIRL -Piano Solo Live 2008」として、iTunesで配信されています。
続く2枚目は、本領発揮のライブ盤「 長月 神無月 」。清水ミッチャンのファンの方でアッコちゃんのモノマネが似てるかどうかわかんないという人は、ぜひこのアルバムをお聴きください。国歌「君が代」をはじめ、ホソノさんのカバー「相合傘」、童謡や三橋美智也をチョイスする、アッコちゃんの“手ばかりのものさし”は既にこの頃から健在です。大の読売巨人軍ファンだっただえに、後の「行け柳田」につながる「ジャイアンツを恋うる歌」(元歌はペルー民謡)も聴きものです。
オリジナルとしてのセカンドは77年の「 いろはにこんぺいとう 」ですが、実はコレ、バンド(筒美作品を歌ったザリバです)を解散しソロデビューする前(鈴木晶子や鈴木あきこと名乗ってた時代)にティン・パン・アレー(レコーディング当時はキャラメル・ママ)とやったお蔵入りナンバーを中心に構成されたもの。
よってジャケットはスゴイけど、小坂忠さんの名盤のタイトル作である細野作品「ほうろう」や、その小坂さんに提供した「つるべ糸」のセルフカバー「やませ(東風)」や、石川セリが詞を書いた「昨日はもう」や、「家路」など、全体的にフォークタッチです。
そして78年、シンセサイザーをメインに新時代を予感させる「 ト・キ・メ・キ 」。
個人的には大好きな佐藤さとるさんの本の挿絵を描かれていた村上勉さんのジャケットにKOされますが、グレープでまっさんの相棒だった吉田政美さんに書いた「カララン カラタケ 知っている」のバリエーション「カタルン カララン」の可愛さにもKO。ベートーベンから冨田勲、外国民謡、わらべうた何でもござれ、このアルバムがほんわかアッコちゃんスタイルの原型だといえるでしょう。
最後はそのライブを収めた「 東京は夜の7時 」。風太くんのジャケットも愛らしいですが、やっぱバックの豪華さ。ホソノさん、ユキヒロ、キョージュのYMOが揃い踏み、コーラスは吉田美奈子&山下達郎。アッコちゃんによると、このコンサートでホントに豪華だったのは、スゴイメンバーにもかかわらず、最後の方までみんなカーテンの後ろに隠して演奏させたことだったそうです。
とアレコレ言ったにもかかわらず、ワタシはYMOでドキンと来て、ほんわか路線から入ったクチ。なので「天才現る!」なんてアッコちゃんが大騒ぎされたデビュー当時は小3でしたし、彼女がとても怖かったのです。DJをしてたラジオを聞いて、この人、気が触れているんじゃないかとさえ思ったこともあったりして…。
でも、75年のアグネス・チャンのコンサートでお姿を生で拝見しましたし、76年のアルバム曲「Jip-JipのU.F.O.」ではその早口言葉をマネして、既にアッコちゃんの洗礼を受けていたのでした。そういえばアッコちゃんファンに人気ナンバー1の超名曲「ひとつだけ」も、もとはアグネスに提供されたナンバーなのです。
もちろんシンシアの「夏の感情」でキーボードを弾いているのもアッコちゃんですし、コレをお読みのアイドルファンの皆さんにも接点を感じていただけたらウレシイです。初めてちゃんと聞くという人には、自由奔放、天才ゆえに謙遜を知らない感じもある初期はチョットつらいかもしれませんけど。
(2011.9.22)