恒例の30周年記念盤はカラオケ付きの2枚組!
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
ついに干支が一回りしてしまったサイトですが、できることなら本年もマイペースで惰性ながらも何とか続けられたら…と、今のところは思っておりますので、皆さまどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、2012年の仕事始めは、毎年お約束となったナイアガラ関連のアニバーサリー・リリースをば。
決して新春放談を気取ったワケではありませんし、ワタシごときがアレコレ語るなんぞ、一家言お持ちのナイアガラーの方々には大変失礼なこととは重々承知しておりますが、なにぶん初春のこととご勘弁ください。
まず昨年のおさらいになりますが、2011年は記念すべきロンバケ30周年ということで、かの名盤の音質向上+純カラオケの2枚組「 A LONG VACATION 30th Edition 」と、豪華な70年代のナイアガラ音源の集大成ボックス「 NIAGARA CD BOOK I 」の発売でした。
リイシューであろうと再発の際には必ず新たな手を入れる御大ですし、あくまで3.21のというリリース日にこだわるアニバーサリー企画ですから、震災後ほとんどのCDが発売延期となる中でもきっちり発売されたことは記憶に新しいところです。
むろんロンバケといえば、日本のポップス、いや音楽史上に燦然と輝く名盤ですし、多くの人が御大との出会いを果たし、今日まで支えるナイアガラーの存在を決定的なものにしたアルバムですから、十把一絡げの扱いを受けないことは当然だと思いますが、メーカー内でも異例と言える英断にファンの皆さんは大きな拍手を送ったといいます。
で、続く本年はといいますと、ナイアガラ大ブレイク後、ちょうど30年前の82年3月21日に出た大ヒットアルバムのリイシュー。
ご存じ、佐野元春、杉真理、大滝詠一の3人による「 ナイアガラトライアングル vol.2 30th Edition 」でございます。
2002年の20周年企画ではボーナストラック数曲を加えたリイシューでしたが、今回の30周年記念盤では、一昨年のロンバケ30thエディションと同じく全曲分の純カラオケを収録した2枚組。しかも「A面で恋をして」のカラオケはコーラスあり、なしの2バージョンが収録されるそうです。
さすが御大自らがコレクターだけに、コレクター心理を突いたナイアガラー向け商品という感じですね。
ご存じない方のために簡単に紹介しておきますと、メンバーはvol.2という通り、元祖ナイアガラトライアングルの山下達郎と伊藤銀次(vol.2にはバッキングで参加)に代わって、EPIC・ソニーとCBS・ソニーの所属であった佐野元春と杉真理を起用。今や御大と並ぶマエストロという感じの2人ですが、当時はまだ大ブレイク前。御大を頂点としたトライアングルは、若いフレッシュなパワーで結ばれたのでした。
リリースとしては、まず81年10月に先行シングル「A面で恋をして」を発表。たちまちオリコン14位をマークする大ヒットになりましたが、これは名コピーライター・土屋耕一さんのつけた秀逸なタイトルと、ヒットが約束された資生堂のCMソングということもさることながら、やはりロンバケがロングセラーを続け、松田聖子に書いた「風立ちぬ」も大ヒット中と、すべてが絶好のタイミングだったことが大きいでしょう。
余談ですが、このシングルのB面は季節的にもぴったり、ロンバケからのリカットとなった御大ソロの「さらばシベリア鉄道」。これを機に1年前に出ていた太田裕美バージョンにもスポットが当たったりしたのです。裕美ファンとしては、苦戦を強いられてた時期だっただけにホントにうれしかった。直後に太田さんは休業を発表するワケで、あと半年ロンバケブームが早ければきっと乗れてたハズなのに…とホゾをかんだことでした。太田さんのシングルは全然売れなかったのに、コレを機に「木綿」「九月」に次ぐ代表作の一つとなっていくのですから、縁とはなんとも不思議なものです。
縁といえば、当初御大はVol.2のメンバーとして、御大の盟友・鈴木茂がサウンドプロデュースし、ロンバケにも“月に吠える男”で参加した五十嵐浩晃を考えていたそうですが、彼が「ペガサスの朝」で売れてしまいコンセプトに合わなくなってしまい再考したのだとか。ロンバケとvol.2の間に出たシングル「想い出のサマーソング」のコーラスが大瀧詠一&杉真理というのも何とも因縁めいているようです。
実は、杉さんと元春もその昔ヤマハのポプコン地区大会でバチバチと火花を散らしていたといいますから、ナイアガラスクエアってのも面白かったのかもしれません。五十嵐さんって、北海道キャラクターやギター、メロディアスな今となってはフォーク・ニューミュージック系で語られてしまいますが、ウエストコーストっぽいAORといいますか、シティポップスの感覚が抜きん出ていましたから。
そうして翌82年の3.21。アイドルファンには花の82年組の大激戦が繰り広げられた記念日として知られるこの日に、満を持してこの一大ポップアルバムが登場したワケですが、基本オムニバス形式なもので、それぞれのソロ、中でも佐野元春と杉真理という若き才能を花開かせ、2人のブレイクを後押ししたアルバムというイメージが余計に強いですね。事実このアルバムからは、各人のソロ名義でリカットシングルが同時発売されていますし、受け取る側も御大お墨付きという感じがしたものでした。
元春サイドでは、74年のポプコン参加曲「Bye Bye C-Boy」もいいですが、ジュリーへの提供曲のセルフカバーにして元春初のスポークン・ワーズ入りの「彼女はデリケート」でしょうか。なおシングルカットの際にはスポークン・ワーズはカットされています。
前にも書いたことがありますが、元春への第一印象は「ギルバート・オサリバンが日本語で歌ってる!」というもの。ロック好きな友人は「ガラスのジェネレーション」がカッコいいと言ってシングルを買っていましたが、ワタシはせっかく素晴らしい声なのだからいつもテンポを落として歌ったらいいのになんて思っていました。
一方、杉サイドではシングルカットされた「夢みる渚」もいいですが、やっぱり「ガールフレンド」。旧友・竹内まりやのファーストアルバムのために書いた「目覚め(Walking up Alone)」の詩を変えたものです。
これまた前に書いたことがありますが、杉さんを初めて意識したのはまりやのアルバムではなく、80年秋の井上望「シャドー・ボーイ」。杉さんがCBS・ソニーに移籍してソロアルバムを出したばかりだったことも知らず、ノンファンの友人と「コレを書いた“すぎ・まり”ってどんな女の人だろーね」などと話していました。
オリコンでは、中島みゆき「寒水魚」に阻まれて惜しくも2位止まりでしたが、ウキウキ、ワクワク、心躍るようなエバーグリーン・ポップアルバムの傑作であることに違いありません。特に今の時代に必要とされるエッセンスが満タンで詰まっていると思いますし、もし未聴の皆さんがいらっしゃいましたら、この機会にぜひ。アイドル歌謡にも流用されたポップスの要素も満載ですから、アイドルファンにもオススメしますぞ。
なお、1月10日にはNHK-FMでスペシャル・プログラム「Motoharu Radio Show 〜ナイアガラDJトライアングル〜」がオンエア。発売30周年を記念した3人によるリレーDJショーという実験的な試みとのことなので、お聴き逃しなく!
(2012.1.4)