ニキビすっきりフルコンプ! みづえのクールな歌声!
薩摩おごじょも今では松ヶ根親方夫人。相撲部屋のおかみさんとして頑張ってるみづえのフルコンプ3枚組ベスト「 高田みづえ:コンプリート・シングルズ 」がついに出ます!
木之内みどりのカバーにして大ヒットとなった77年のデビュー曲「硝子坂」から、ラストシングルとなった85年の「カーテン・コール」まで、全シングル26枚のA・B面をフルコンプした全52曲。
さらに解説付きのうえ、ボーナストラックとして代表曲のオリジナル・カラオケが収録される予定となっております。
と言っても、全曲通販の「高田みづえ全集」でCD化済みだし、03年にはA面コンプの「 高田みづえ シングル・ベスト30 」も出てるしと、特典とリマスタリングされていること以外はさほど目新しいワケじゃないんですよね。
通販ものは音質が悪すぎるんで今回のを買う人は多いかもしれませんが、コアなみづえファンならオリジナルLPやライブを復刻してほしいと思ってるはず。かく言うワタシもその一人です。
まあ、それはせんないこととして、ハイレベルな楽曲づくりに定評のあるみづえさんですから、未聴の方には何としても聴いていただきたいベストであることは事実です。
ワタシはやっぱデビューから2年の、歌謡曲と演歌とロックとポップスをごちゃ混ぜにしたような路線が大好き。「ニキビでは悩んでるけど、この程度の歌なんか楽勝よ!」といわんばかりにクールでエラそうな歌唱ですが、それが鼻につくかどうかのギリギリのラインのとこで収まっててとっても心地よいんですよね。
「だけど…/流れ星」や「ビードロ恋細工/向い合わせ」などの宇崎竜童路線や、「花しぐれ/デイ・ドリーム」「パープル・シャドウ/火の鳥」なんかの都倉センセイものもいい。
でも筒美先生の「女ともだち/泣きながらカナリヤ」はイイ曲だけど、なんかスリルを感じられないんですよね。コレ、相性なのかもしれないけど、ラストシングルもそんな中途半端な印象が拭えません。
79年の紅白に一回落選して心を入れ替えたらしく(引退まで考えたと言っていた!)、以降のよりニューミュージック寄りになってからはぐんと丁寧に歌うようになった気がするんですけど、それに伴って、魅力はあまり感じられなくなったような…。いずれも名曲ばかりなんですけどね。
と言いつつ、ワタシが一番好きなシングルは、阿久さんと坂田晃一さんのコンビによる83年の「純愛さがし/幸福イミテーション」です。
作家でピンと来た人もいらっしゃるでしょうが、そう、ドラマ絡みの臨発です。鶴見辰吾&伊藤麻衣子の「高校聖夫婦」の主題歌だったんですけど、両面とも詞も曲も心に響く最高の純歌謡曲です。たぶん、詞世界とみづえの個性がぴったり重なっているのだと思いますね。
通して聞いてみると、千春のカバー「青春II」を経て出した谷山浩子提供の「子守歌を聞かせて」が音楽面の転機といえるでしょうか。
B面の「潮騒のメロディー」が 有線で火がついたため差し替わり、低迷期の突破口となるロングヒットに。そのせいで翌年新春に出る予定だった「どうして私を愛したのですか」が発売延期に、そして次のSASのカバー「私はピアノ」が大ヒット…。
このへんの流れがみづえのジャンルを確立したような気がしますね。
デビューからそうでしたけどカバーも多く、千賀かほるの「真夜中のギター」、音つばめの「愛の終わりに」や百恵ちゃん現役時代の未レコード化曲「通り過ぎた風」、最後のベストテンヒットになったサザンのカバー「そんなヒロシに騙されて」など。
「そんなヒロシに騙されて」以降は、作詞の中山丈二や作曲の堀江童子をはじめ、三ツ木清隆、原大輔、小田陽子らと競作になった「秋冬」や村下孝蔵の「かげふみ」といったしっとり路線か、「悲しきロンリー・ガール」や「原宿メモリー」といった軽いポップス演歌路線かという感じでしたけど、いずれもみづえならではの楽曲でしたね。
人の曲ばっかり歌ってる…なんて当時は囁かれたものですが、オリジナルでも名曲はホントに多いのです。ゴールデンミュージック所属の秋川淳子、島崎和歌子、笹峰愛などに歌い継がれている「南南西」なんか、その骨頂。
そういえば同じゴールデンの芳恵も「乳白色のプリズム」をカバーしております。なお、みづえはゴールデンを傘下におさめてるバーニングプロ所属でした…。
3枚じっくり聴いても、ホントいい曲ばっかり。歌のウマさ、器用さに復帰を望む声も多いようですが、ほとんど表には出てきません。
ホントの歌謡曲が歌える数少ない歌手の一人だから、歌手活動を再開してほしいものですね。
(2005.9.1)
*同内容のCDが、2008年に廉価再発されました。