オススメ復刻盤「松本伊代/オールウェイズ I・Y・O」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#573

松本伊代/オールウェイズ I・Y・O [30th Anniversary BEST ALBUM]

(2012.9.26発売、初回限定盤・2CD+DVD:VIZL-491、¥5,250/通常盤・2CD:VICL-63917、¥3,150)

シンガーとしての才能と実力を証明する30周年ベスト

 今年がデビュー30周年にあたる花の82年組。
 30周年目に突入した昨年からは、同期でも別格の明菜のベッテンDVD-BOX(こちらで紹介)やベスト(こちらで紹介)&オリアル再発を筆頭に、キョンキョン(こちらで紹介)や優ちゃん(こちらで紹介)のベスト、ちーちゃんのライブ、毛色は異なりますがデビュー年ではれっきとした82年組の知世ちゃんBOX(こちらで紹介)などなど、各人、記念企画が目白押しです。

 82年組の中でも先陣を切って芸能界入りした伊代ちゃんですが、年度替わり早々の81年10月デビューですから、まもなくデビュー31周年だし、同じビクターのキョンキョンはぴったり30周年に出たことだし、、既にシングルBOX(単品はMEG-CDとして現在も入手可)もアルバムBOX(こちらで紹介)も発売されてることだし、もう周年企画はないものとガッカリしていたら、心配ご無用、やったねパフパフ! 年度内にきちんと間に合うカタチで、しっかりデビュー30周年プロジェクトが立ち上がっていました。

 ここはひとつ、デビル・ガールズもといキャプテンの2人とともにピンク・バスのハンドタオルでうれし泣きのきれいな涙を拭いつつ、パタパタと仔犬みたいにしっぽを振り振り、おかげですのノリユキのように「まっつもとぉー!」と胸で飛びたい気分であります。

 さて、まずは第1弾として挙がったのが、デビュー曲「センチメンタル・ジャーニー」のニューバージョン。DJとしても活躍するエレコミ・やっつんとのコラボユニット(松本伊代 feat.やついいちろう)で発表したもので、既に7月18日からiTunesほかで配信がスタートしています。

 このニューバージョン、2人による“激ファンMIX”(やっつんのCD「 PLATINUM DISC 」にも収録)や、伊代ちゃんのソロ“PLATINUM MIX”などがアップされておりますので、ぜひご一聴いただければと思いますが、個人的にはやはりPLATINUM MIXがオススメ。
 かなりテンポアップしていますが原曲の良さは損なうことなくイマドキな雰囲気も出ていて、エバーグリーンな筒美作品ならではの魅力が健在なのですが、何よりスゴイのは伊代ちゃんのボーカル。京平先生のお気に入りボイスとして知られる伊代ちゃん声のおいしさは変わることなく、語尾を「~ん」と伸ばす16才のイメージを進化させつつ、バッチリキメているのですからね。

 と、伊代ちゃんのシンガーとしての魅力と実力を再確認した30周年プロジェクトですが、9月26日には新曲入りの記念ベストアルバム「オールウェイズ I・Y・O[30th Anniversary BEST ALBUM]」の発売も決定したそうです。
 なんと伊代ちゃんのベスト史上初(もちろんBOXは除いて)となる2枚組で、初回盤「 オールウェイズI・Y・O[30th Anniversary BEST ALBUM](初回限定盤)(DVD付) 」はさらにスペシャルDVDとブックレットがついた豪華版。
 もちろんCDのみのシンプルでリーズナブルな通常盤「 オールウェイズI・Y・O[30th Anniversary BEST ALBUM](通常盤) 」も出るそうです。

 BOXを含めこれまでのCDを全部持っているようなコアファンはヤッパシ初回盤を即買いということころでしょうけど(もちろんワタシも速攻予約済み)、ちゃんと聴いたことがない人やこれまでのベストを持っているけど…という人も、通常盤でいいですので、ぜひ手にとっていただければと思います。
 伊代ちゃんの場合、むろんシングルA面も恐るべきハイクオリティなナンバーばかりではありますが、アルバム曲やB面曲もホントに粒よりなのでね。ベストといえどもせめて2枚組じゃなきゃ、いい曲が漏れまくりになりますのでね。

 収録曲はまだ発表されていませんが、とにかく名曲、名唱の多い伊代ちゃんのこと。
 どの曲が選ばれてもハズレなしですし、今回はブログ「天使のバカ」でファンから募ったリクエストを参考に、ヒット曲からコンサートの定番曲、そして隠れた名曲までを自選したといいますから、シングルをチョイスしただけの1枚ものベストとは比べものにならないほど充実した内容になることは間違いありません。

 選曲理由とか、どんな思いを持っているのかということにもソソられますが、伊代ちゃんのうたと歩いてきた30年(歌手活動をメインにしてたのは10年ほどですが)の思い出とともに、センチメンタルなサムシングが次々によみがえってきそうでとても楽しみです。
 そして何より、アルバムBOXの「私の声を聞いて」以来3年ぶりとなる新曲が聴けるというのも、長年のファン冥利に尽きるというもの。やっつんとの「センチメンタル・ジャーニー」でも、伊代ちゃんのボーカリストとしての魅力は失われることなく存分に発揮されておりましたからね。

 伊代ちゃんってトシちゃんの妹時代からテレビで見せた正直な言動の数々が鮮烈だっただけに、いまだに笑ってポン!みたいなイメージで扱われたりしてますけど、それは何でもこなす順応性というかポテンシャルの高さの表れであって、素顔は理知的で育ちが良く、親御さんに大切にされ、思慮深く躾けられてきた都会の女の子の象徴ではないかと昔から思っています。

 それは初めて見た時(デビューから1カ月ほど後の、故郷の情報番組の公録ゲストでした)の伊代ちゃんの印象―ニュートラっぽいファッションで、お洒落で利発そうな女の子―のせいであって、実際の伊代ちゃんとはまったく違う幻影なのかもしれませんがね。
 でも、そういう人となりって絶対ごまかせないことであり、着ている物やセンスにも表れるものだと思うんですよね。

 その点では当時はまだDCブーム前で、私服にまではスタイリストの手が及んでいない時代。基本、聖子ちゃんカットの女の子がデビューしちゃうと、どんなダサい子であっても、大きなレース襟にポシェット、みたいなブリッコルックへとシフトしてたんですけど、デビュー前には、本人のチョイスで親か事務所に買ってもらったであろう装いが明星や平凡で垣間見られたんですよね。
 そんな目で82年組を見てみるとですね(注・あくまでも個人的な妄想イメージ)、伊代ちゃんが服を買うのはフクゾーで、同じビクターのキョンキョンはクリームソーダという感じ。
 ちえみ、秀美、水谷絵津子、優ちゃんに至ってはそれぞれ地元のイズミヤ、丸栄、トキハデパート、ハワイ三越だけど上京してまずラフォーレを見に行って帰りに竹下通りで買った…みたいな印象を持っていたのは確かです。三田寛子は京都なんだけど、なぜか三愛っぽく感じたのは何故でしょう。

 と、またまたあらぬ方向に話がそれましたが、そういう一面ですら、歌にまで出てしまうのがアイドルの宿命であり、魅力でもあるとするなら、伊代ちゃんは卓越したセンスで最初からそれを長所とした珍しい人に思えてなりません。

 うたの変遷で言うなら、筒美先生渾身の上質オールデイズから、ナウだけどヘンテコなキラキラアイドル、亜美ちゃんが魔法をかけたセツナ系胸キュン少女趣味に、バブル前夜の等身大女子大生ポップス、そして三部作に代表されるユーミンを意識したようにシリアスなOL的ラブソングまで、ビックリするほどのレンジの広さで実証できるはず。

 例えばキョンキョンなら、自意識の噴出の挙げ句の結果や、狙ったイメージチェンジと言うべきコトであっても、伊代ちゃんの場合はまったくもって気負うことなく、まさにピーピピッピと自然にできたように見えたんですよね。
 もちろん相応の葛藤はあったとしても、ピンキーパンチの宇宙人とパリンコの女生徒を、どっちも違和感なく笑ってできて、こっちも違和感なく受け入れられる新人だったのですから。

 このへん、至極スゴイことのはずですが、あくまでも自然なゆえに全然目立たず、世間からスルーされてしまってるんですけど、とにかく本人は無意識であっても、その器用さと許容量の広さでは、相手になるアイドルは他にいなかったと思います。
 82年組同期の女の子たちの多くが悩まされてきた自虐や忍耐、脳天気や抑圧、開き直り、自己解放や演出などとは、ほぼ無縁な感じで、引退や休業に追い込まれることなく続けられてきたワケですしね。
 そこんとこって、早くからビートたけしのお気に入りでしたし、志村けんやとんねるずらお笑い系でも天才肌の人たちからいち早くコントの相手として選ばれてきたことが、それを実証しているように思えてなりませんけど。

 ブーイングが出そうな持論であることは自覚していますが、この30周年記念ベストなら、そういうことも簡単に、しかも如実に証明できそうな気もして、なんだかうれしい。
 まずはアイドルマニアだけど伊代ちゃんのアルバムまで手が回らなかった皆さんにお求めいただいて、シンガーとしての実力と才能が正当に評価されることになれば、なんて願っているのであります。

(2012.7.24)

*CDはシングルA面全25曲+シングルB面とアルバム収録曲からチョイスした13曲、「私の声を聞いて」&新曲も新録予定とのこと。
 初回限定盤は、DVDにフジテレビ系「クイズ・ドレミファドン!」での歌唱映像(18曲約50分)を収録。豪華別冊ブックレットは、松本伊代&キャプテンによる30周年記念座談会、制作陣からのコメントを掲載予定。デビュー30周年メモリアル・ライブ(11/4=イイヨの日)会場での特典引き換え券も封入予定だそうです。


*各ディスクの収録内容は以下の通りです。

○Disc 1〜Shiny Side -Love & Pops Selection
センチメンタル・ジャーニー/ワンダフル・ハート/ラブ・ミー・テンダー/TVの国からキラキラ/オトナじゃないの/魔女っ子セブンティーン/Kiss In The Dream/チャイニーズ・キッス/太陽がいっぱい/ネバーランド発 7:00 P.M./ONLY LONELY SEVENTEEN/恋のバイオリズム/恋のKNOW-HOW/シャイネス ボーイ/ビリーヴ/あなたに帰りたい(Dancin'In The Heart)/月下美人/すてきなジェラシー/ソレイユ/交通渋滞/オールウェイズ・ラヴ・ユー/センチメンタル・ジャーニー PLATINUM MIX produced by RAM RIDER

○Disc 2〜Mellow Side -Bitter Sweet Selection-
時に愛は/或る夜の出来事/ラブ・LOVE・ラブ/抱きしめたい/パンドラの夢/If You Are By My Side(あなたがそばにいてくれたら)/流れ星が好き/ポニーテイルは結ばない/Last Kissは頬にして/不思議なのはサヨならの方法/信じかたを教えて/サヨナラは私のために/思い出をきれいにしないで/硝子のカラス/淋しさならひとつ/Sonatine(ソナチネ)/悲しくてやりきれない/きっと忘れるから/私の声を聞いて

○Disc 3(初回限定盤DVD)
センチメンタル・ジャーニー(1982.1.10 OA)/ラブ・ミー・テンダー(1982.3.7 OA)/ラブ・ミー・テンダー(1982.3.28 OA)/TVの国からキラキラ(1982.5.16 OA)/ TVの国からキラキラ(1982.7.4 OA)/TVの国からキラキラ(1982.7.18 OA)/オトナじゃないの(1982.9.12 OA)/抱きしめたい(1982.11.7 OA)/抱きしめたい(1983.1.9 OA)/チャイニーズ・キッス(1983.3.13 OA)/太陽がいっぱい(1983.5.22 OA)/恋のバイオリズム(1983.8.21 OA)/流れ星が好き(1984.5.27 OA)/ポニーテイルは結ばない(1985.8.25 OA)/月下美人(1985.12.8 OA)/信じかたを教えて(1986.8.31 OA)/サヨナラは私のために(1986.11.2 OA)/思い出をきれいにしないで(1987.5.31 OA)以上「クイズ・ドレミファドン!」より/
ボーナス映像・すてきなジェラシー(『APPLE JACK Vol.5』より)/ボーナス映像 ・松本伊代&キャプテンによる30周年記念座談会


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