岩崎宏美&桑名正博の実況盤がついに全編CD化!
桑名正博さん追悼というきっかけのような気がして、とても残念で悲しいのですけれど、ついに全編CD化となります!
79年7月に大きな話題を振りまいたロックミュージカルの実況録音盤「 ハムレット -ロック・ミュージカル- 」(オリジナル盤は79年9月5日発売)!
資料をひもときますと、これは中野サンプラザホール開館5周年を記念し、サンプラザオンステージ第28回として上演されたミュージカル。かの有名なシェイクスピアの戯曲をロックミュージカルとしてアレンジした企画で、後にジョー山中、TOSHI、PENICILINへと受け継がれていったおなじみの名作ですが、記念すべき初演キャストは岩崎宏美&桑名正博だったのです。
言うまでもなく桑名さんがハムレットで、ヒロリンがオフィーリア。2人ともミュージカルには初挑戦でしたが、クローディアスに上條恒彦、ガートルードに金井克子、ホレーシオに三上直也、レアティーズに尾藤イサオという芸達者な諸氏が脇を固め、定評のあった歌唱力と表現力を生かし見事に熱演。高い評価を得たものです。
イメージイラストと衣装があの竹宮恵子さんだというのも話題を呼びましたが、マニアにとって見逃せないのは、音楽監修が筒美京平先生だということ。
オリジナルのレコード会社は桑名さんのRVCと、ヒロリンのビクター2社(そのせいかLPはRVC、カセットはビクターから出ていた模様)ですが、2人とも筒美先生の秘蔵っ子。
ヒロリンはデビューから言わずと知れた筒美系ですし(当時は「春おぼろ」の頃)、正博さんはちょうど筒美作品「哀愁トゥナイト」でブレイクした後(「セクシャル・バイオレットNo.1」でNo.1になる直前)ですし、当然といえば当然です。
歌だけでなく、インストもありますから、筒美フリークの皆さんにとっては必携盤といえるでしょうね。ちなみにアレンジは先生が全幅の信頼を置いていた矢野誠さんです。
なお、作詞には松本隆、下田逸郎、小林和子、中島梓(栗本薫)という方々が名を連ねていますし、作曲はRVCの担当ディレクター・小杉理宇造さんの采配による山下達郎、濱田金吾という達郎ファミリーも参加しています。
この当時、脂が乗り切ってツヤがハンパないヒロリンの歌ですが、彼女の歌入りや山下達郎作品については、2004年の30周年BOX「 岩崎宏美 BOX 」や達郎さんの自主制作盤、2007年のライブBOXなどでCD化されていました(達郎盤は編集あり)。しかし、全編ということでは今回が待望の初CD化となりますので、あらためてコレクションされるヒロリンファンも多いのではないでしょうか。
ちなみに岩崎宏美パートとしては正博さんとのデュエットによる松本+筒美作品「愛はハーモニー」を含む「メドレー~若いってことは~愛はハーモニー」、ソロの「花のように」「オフィーリアの子守唄」「世界の果てへ連れてって」の4曲。
一方、正博さんソロは「尼寺へ行け」「TO BE OR NOT TO BE」「愛していたのに」「俺はもう逃げない」というラインアップです。
また、金井克子ファンも必聴で、上條さんとのデュエット「何もかもこのままで」とソロによる「ガートルードの子守歌」を収録。ほかにも尾藤イサオさんの「兄妹のテーマ」、上條恒彦さん「心は闇に閉ざされて」「生きる俺が正義」などの聴かせどころが満載のライブ盤となっています。
桑名さんの「宏美ちゃんのオフィーリアは最高なんや」というコメントを思い出しますが、この演技が後の「屋根の上のヴァイオリン弾き」や「レ・ミゼラブル」につながっていたのだと思いますし、そういう意味でも記念碑的なライブ盤といえそうです。
そして、桑名さんのファンにとっては、また一つたまらない宝物になることでしょう。
個人的にも、桑名さんが倒れられてからというもの「月のあかり」など大好きなナンバーをよく聴いていましたけど、先日出た「 GOLDEN☆BEST桑名正博-MASAYAN 40Years- 」はご本人がしたためた遺言状といえる内容で、とても感銘を受けました。追悼復刻も続々と決まっているようですし、このCDとともに、あらためてご冥福をお祈りしたいと思います。
(2012.11.29)