話題作「ヘルタースケルター」から、樹液すする新ベスト!
皆さん、もうご覧になりましたか? あの岡崎京子の名作漫画を原作に、蜷川実花がメガホンをとり、沢尻エリカの5年ぶりの映画主演作となった「ヘルタースケルター」。
バーチャルとリアルが交錯するように、スキャンダラスなエピソードが先行し、公開前から各方面で話題沸騰。満を持した形で先週末ロードショーとなったわけですが、ワタシも公開早々早速拝見したりして。
で、極彩かつ完璧主義的こだわりと圧倒的な倒錯美が満載の蜷川ワールドをはじめ、エリカ様の憑依的演技力の凄さなどなどいろんな点で唸ってしまったのですが、やっぱり印象的だったのは、挿入歌に使われた戸川純の「蛹化の女」。
ご存じ純ちゃんの84年のソロデビュー作「玉姫様」に収録されていたナンバーで、パッヘルベルのカノンの旋律に、純ちゃんが書いた詞をのせた、美しくも忌まわしい奇譚のうたです。
故郷で開かれた玉姫様ツアー初日の興奮は今も鮮烈ですが、昔、下校の音楽がコレだったもので余計に強烈なインパクトだったこのうた。その後は、よく純ちゃんの詞をのせて歌っておりましたし、ファンとしてはこのうたの使われ方見たさに鑑賞したといっても過言ではないのですが、映画ではエリカ様演じるりりこの狂気的メタモルフォーゼの心象に、ぴったりと重ね合わさっていたのではと思います。
それもそのはず、実花さんは小学校時代(!)からこのうたを愛聴していたそうで、今回実花さんセレクトによる純ちゃんのベストが編まれることになりました。
それが来週発売となる「 蛹化(むし)の女~蜷川実花セレクション 」!
ゲルニカ、ヤプーズ時代も含め、純ちゃんの全キャリアから厳選した20 曲と、ボーナストラックとして初商品化となる「蛹化の女(Live 2011)」をプラスした全21曲。
個人的には一番好きな「眼球奇譚」を選んでくれているのでそれだけで満点なのですが、ゲルニカの「銀輪は唄う」を筆頭に、パブリックイメージの「玉姫様」や「隣りの印度人」「電車でGO」「好き好き大好き」「遅咲きガール」といった有名曲はもちろん、「諦念プシガンガ」「無題」など魂が揺さぶられるようなアンデス民謡に、「蘇州夜曲」、仙波清彦とはにわオールスターズの 「リボンの騎士」といったレア曲もごっそり。
しかも「パンク蛹化の女」まで収録と、コアなファンさえ脱帽するような、さすがわかってらっしゃるという選曲になっているのではないかと思います。
むろんジャケ写も実花さんですから、あの耽美で退廃的な純ちゃんのうたが一層引き立つこと請け合いです。
純ちゃんの1枚ものオフィシャルベストというと、かつてのベスト「東京の野蛮」が知られていますが、今回はそれと比べものにならないほどとにかくいいとこ取りの魅力凝縮。超お買い得価格も抵抗感なく買えることでしょうから、初めて聴いてみるという方はこっちをオススメいたします。
そして純ちゃんワールドの虜になってしまったら、2008年に出た自選の3枚組BOX「 TOGAWA LEGEND SELF SELECT BEST&RARE 1979-2008 」をお求めになっていただければと思うのでございます。本来ならば、昨年Blu-spec CDで再発されたオリアルの紙ジャケ(こちらで紹介)をと申し上げたいところではございますが既にほぼ入手困難なゆえ…。
なお、万一ヘルタースケルターな蛹化の女の毒気にあてられてしまった方がいらっしゃいましたら、ぜひ同じメロディーでも清しい由紀さんの「 しあわせのカノン~第2章~ 」(アレンジは安田姉妹の音楽監督でもある坂田晃一さん)でスッキリと浄化されてくださいませ。
由紀さんのオリジナルカラオケで純ちゃんの歌詞を歌ってみるのも一興でございますわよ(由紀さん風に読んでネ)。
(2012.7.20)