G☆B第2弾は、市販では初のシングルA面コンプ!
「翼をください」「竹田の子守唄」などで知られる伝説のフォークグループ・赤い鳥から分離して生まれた2つのユニット。1つは後藤悦二郎さんと平山泰代さんによるデュオ・紙ふうせんで、もう1つが山本(新居)潤子さん、山本俊彦さん、大川茂さんの3人によるファッショナブルなコーラスグループ、ハイ・ファイ・セットでした。
1975年2月にユーミン提供の「卒業写真」でレコードデビューを飾り、活動を停止する1992年まで、潤子さんの驚くべきハイトーンをメインにフォーク、ポップス、ジャズ何でもござれ、ジャンルを超えた洒脱なハーモニーで多くの人を魅了していったのはご存じの通りです。
後にも先にも、ここまでハイセンスなコーラスグループって日本にはいないような気がしますよね。
ただ、ハイ・ファイ・セットの場合、アルファ、東芝EMI、CBS・ソニー/ソニー・ミュージックエンタテインメントと3社にまたがっているため、ベスト盤にしても全時代を網羅したものがなかなか出ていなかったのですね。各社からそれぞれ単独か、アルファとEMI、アルファとソニーというようなベストは、それこそCD黎明期から数え切れないほど出てはいたのですが…。
で、2006年にようやくシングルAB面コンプリートとなる「 ハイ・ファイ・セット GIFT BOX 」が出てファンの長年の溜飲を下げたものですが、4枚組ボックスと通販限定というチャネルのため、気軽に購入できなかったり、発売を知らなかったりした人も少なくなかったと聞きます。
そこに満を持して登場するのが、6年ぶりに3社のシングルA面を網羅した「 GOLDEN☆BEST ハイ・ファイ・セット コンプリート・シングルコレクション 」! お手軽なベスト盤、市販というくくりでは初めてのコンプリートとなる企画です。
ハイ・ファイ・セットのG☆Bといえば、ロングセラーになったユーミン+杉真理作品集「 GOLDEN☆BEST/ハイ・ファイ・セット 荒井由実・松任谷由実・杉真理作品集 」がありますが、ヒット曲も数多ある彼らです。やっぱりまずはシングルの軌跡を追ってみるというのが基本でしょう。
DISC1はアルファ時代で、75年のユーミン作のデビュー曲「卒業写真」から78年の「少しだけまわり道」まで。
当初からユーミン作品で注目を集め、支持されたハイ・ファイ・セットですが、彼らの人気を決定づけた最大ヒットが洋楽カバーの「フィーリング」。
この曲が大ヒットした77年には紅白歌合戦にも初出場を果たしていますが、忘れてはならないのがアルバム「ラブ・コレクション」のメガヒット。11週にもわたりオリコン1位を独走、年間ランキングでもナンバー1に輝くなど、名実ともにトップアーティストの座を射止めているのです。
このディスクでは、頂点に上り詰めた時代ならではのパワーと完成度が堪能できることと思います。
隠れたオススメは、赤い鳥時代からの育ての親・村井邦彦さんのスタンダードにして東京音楽祭世界大会出場曲「夢うつつ」ですが、カーステレオに常備されたおしゃれなミュージックとして、カセットテープもバカ売れしていた時代のハイ・ファイ・セットをどうぞ。
なお、今回は「スカイレストラン」(「あの日にかえりたい」の原詩で知られています)や「冷たい雨」「風の街」のB面曲「土曜の夜は羽田に来るの」「ファッショナブル・ラヴァー」「クリスタル・ナイト」も入ってる上、ボーナストラックとして、超有名なユーミン作品「海を見ていた午後」と「中央フリーウェイ」、リー・リトナーも参加したアメリカ録音盤「The Diary」から岩谷時子さんの訳詞が胸を打つ「遠くからみちびいて」と、有名ボッサ「海辺の避暑地に」というカバー作品が追加収録されています。
そしてDISC2は、EMIとソニー時代。
東芝時代は、JALのキャンペーンソングとなった78年の「あめりか物語」から83年の資生堂のCMソング「ラブストーリーはこれから」まで、ソニー時代は84年のシチズンのCMソングのスマッシュヒット「素直になりたい」から、91年のテレ朝火曜ミステリー劇場のテーマにして盟友・小田和正書き下ろしの「忘れないわ」までとなっております。
ほとんどが何かしらのタイアップ付きで、いくらタイアップ全盛期といえどもレコード会社の営業のゴリ押しではなく、クライアントからちゃんと指名された上での引っ張りだこだった事実と実力を確認することができます。一段とお洒落さが増して完璧になったハーモニーは聴きものですぞ。
特に東芝時代は1年間休養し、山本夫妻はアメリカで充電&ヴォーカリーズの勉強をなさっていましたが、その成果が表れたマントラ路線「NOVEMBER RAIN」「ハローMr.Telephone」「miss you」はジャズファンも必聴です。残念ながら当時は大衆には受け入れられませんでしたが、これを機に4ビート路線の再評価が進むことを祈ります。
また、ソニー時代は杉サマをメイン作家にぐんとポップになったおなじみの名曲群がずらり。名盤「パサディナ・パーク」からシングルカットカットされた「水色のワゴン」、沢口靖子の目尻にほうき星が流れた「星化粧ハレー」、須藤晃プロデューサーの詞が泣かせる「ひときれの恋」の流れは、古き良き名画を耳で聴くよう。
なぜか五木寛之先生が作詞した映画主題歌「燃える秋」と両A面扱いだった「熱帯夜」が抜けてる一方、「素直になりたい」のB面だった「Good-bye school days」が入っていたりしますが、名曲なのでよしとしましょう。
オリジナルのレギュラー盤としてはシングルが27枚、アルバムが19枚、ライブ盤が1組出ているハイ・ファイ・セット。
シングルAB面完全収録は前述の「GIFT BOX」(手前ミソですがアルファ&ソニーのアルバム曲やレア音源も入ってホントにいい構成だと思います)で実現していますし、会社の事情で長らく入手困難だったアルファ時代は2009年に全音源完全収録の「 ハイ・ファイ・セット アルファミュージック編 1975~1978 」(こちらで紹介)が出たので、ファンも満足というところでしょうが、東芝やソニー時代のアルバムはCD化済みではありますが、再発のQ盤すべてが廃盤になって久しく、今となっては入手困難な状況。
ぜひ今回のシングル・コレクションで再評価が高まり、各時代のアルバム再発や、赤い鳥みたいなコンプリート・ボックスの発売を願っています。
なお、ハイ・ファイ・セットのディスコグラフィーは、潤子さんの40周年記念スペシャルサイトが完璧なのでチェックしてみてください。
(2012.6.13)
*山本潤子としてのG☆Bは、赤い鳥、ハイ・ファイ・セット、ソロを網羅した2枚組「 GOLDEN☆BEST 山本潤子(赤い鳥/ハイ・ファイ・セット) 」がロングセラーを続けていますが、2012.8.1にはソロのEMI時代をまとめた「 ゴールデン☆ベスト 山本潤子 」(TOCT-11286)が発売されます!