80年代の恋を彩った名曲たちに、乾杯!
個人的なハナシですが、1980年に中学生となり、90年に社会人となったワタシにとって、80年代はまさに生徒、学生として過ごした青春期。多感なうえ好奇心と行動力にも満ちていて、まさに恋に恋していたような時代です。
であるからして、80年代はキラキラした輝きを放つと同時に、こっぱずかしさ満載の存在であったり。ホントそりゃあもう大騒ぎな感じで、特別な思い入れのある年代なのですね。
それはうたにおいても同じで、昨今のナツメロブームの中心となっている80年代のヒット曲を聴くと、数々の楽しく恥ずかしい思い出がリアルによみがえってきます。
例えば、バブリーな頃、朝シャンしたグラボブヘアにDCブランドの洋服でキメて、ディスコやプールバーへと繰り出したこと。あるいはマルビな時、レンタルビデオを何本も借りて、明け方までカウチポテトしたこと。はたまたクリスマスをホテルのディナーで過ごし、ニューイヤーはユーミンのニューアルバムを流しながらスキーに出かけたこと。
決してホットドッグプレスのマニュアルを読んでいたワケではありませんけど、ほぼ恋愛攻略を中心にした行動パターンだったりします…。
あの時代に青春を過ごした人なら、きっと似たような思い出をお持ちだと思いますが、来週発売の「 フォール・イン・ラブ~80'sバラード・セレクション~ 」を聴けば、記憶の片隅に埋もれていたことまでも、事細かに思い出せるのではないでしょうか。
思わずグッとくる80年代チックなジャケットが示す通り、ラブバラードに特化したというこのコンピ。全16曲、オープニングが小林明子の「恋におちて - Fall in love」だと聞くと、一見ありきたりのように思えますが、それは早計というもの。
オリコンNo.1を記録した稲垣潤一のベスト盤のタイトル曲「P.S.抱きしめたい」が入ってたり、杉山清貴&オメガトライブのシングルでもあまり目立たないけど名作の「サイレンスがいっぱい」が選ばれていたり、甲斐バンドの「BLUE LETTER」、吉川晃司の「Rainy Lane」、レベッカ「ONE MORE KISS」などなど、ほとんど代表曲とは違うちょっと捻った選曲に、唸ってしまいそうな1枚なのです。
レコードを買って聴く以外にも、レンタルやエアチェックでカセットにダビングして聴いていた時代。テレビの歌番組や、有線やラジオから、いろんなうたをみんなで共有していた時代です。
80年代のティーンエイジャーたちは、EPIC・ソニーのアーティストにハートをぶち抜かれたはずですが、そこからはTHE MODSの名曲「バラッドをお前に」、佐野元春の「バルセロナの夜」とシブいチョイス。
そして特筆すべきは渡辺美里のファーストアルバムに収録されていた「悲しいボーイフレンド」でしょう。近年、この曲をモチーフにした映画も制作されていますけど、なんと大江千里クンが初めてみさっちゃんに書き下ろしたナンバーなんですよね。個人的にもベストな胸キュンソングだったりします。
ほかにも、サテンの有線で良く流れていた崎谷健次郎の「もう一度夜を止めて」、カラオケスナックのステージを思い出す鈴木聖美おねーちゃんとラッツの「TAXI」、コフィーこと小比類巻かほるのスケールの大きな「I'm Here」、ハウンド・ドッグの名バラード「涙のBirthday」など、ほろ苦い80年代の恋愛そのもの。
確かに、マジックで描いたような太眉に真っ赤なルージュのソバージュギャルのごとく、とてもアブラギッシュで濃ゆい時代だし、プアゾンのようにムンとするほどきつく香ってきますけど、その分、強烈でかけがえのない思い出が刻まれた時代であることに相違ありません。
手前ミソではありますが、ぜひカクテルで乾杯なんぞしながらこのCDをかけ、80年代の恋の思い出にふたたび酔いしれていただきたい、なんて思うのです。くたびれがちな今を、前向きに、そして元気に生きていくためにも。
(2012.9.19)