オススメ復刻盤「松田聖子/エトランゼ」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#552

松田聖子/エトランゼ

(2012.5.30発売、MHCL-20162〜3、¥3,500)  *Blu-spec CD

パスポートはこのCD!聖子と旅する世界一周!

 昨年暮れから続く、松田聖子CBS・ソニー時代の旧譜連続リリース。

 黄金期の80年代に特化したオールカラーブックレットの懐刻盤ベスト(こちらで紹介)を皮切りに、3カ月連続オリアル14枚のLPサイズ紙ジャケ復刻(第1弾はこちら、第2弾はこちら、第3弾はこちら)、さらにはベストのオリカラ「 SEIKO STORY~80’s HITS COLLECTION~オリカラ 」、そして狭間にはホームセンターや高速のSAなどのワゴンで売られる別チャネルベスト「 松田聖子スーパー・ヒットコレクション Vol.1 」「 松田聖子 スーパー・ヒットコレクション Vol.2 」も製造されるなど、怒濤のように押し寄せているのはご存じの通りです。

 コアなファンの皆さんにとっては、全部買うべきか、好きなのをチョイスするべきか、リリース自体にも賛否両論あるようで、なぜかこちらにもいろんなご意見を頂戴しておりますが、個人的にはいろいろ迷うのも発売されてこそ享受できる楽しみなのですし(迷う楽しさすら味わえず羨望のまなざしで指をくわえてみている他アーティストのファンの方がどれほどいることか)、商品の購入を強制されるワケじゃないので気に入らなければスルーして買わなければいいだけのことだと思っていますが…。

 さて、このリリースラッシュの中で大好評なのが、先陣を切った80年代ベスト。一瞥するだけでも文句なしの収録内容は、リスク回避のため二の足を踏むショップですら発注をかけやすく、予約や発売をチェックしたりしない一般層もダンゼン手に取りやすかったようで、オリコンではなんと最高23位をマーク。
 近年はコアファンの瞬発力だけという印象だった聖子にとって、かの竹内まりやとのコラボシングルをしのぐほど、久々のロングセラーを記録しています。

 オリアル復刻も、10万円BOXやDVD付きBlu-specが出てさほど歳月が経っていないワリにはまずまずだった模様だし、廉価版ベストはその筋のチャネルでは引っ張りだこでしょうし、やはりみんなに愛された黄金期の支持はテッパンだと再認識した次第です。

 デビュー以来の聖子ファンとしては、80年代ベストは全盛期のもっとイイ写真(例えば篠山紀信撮影でも、Canaryの告知&特典ポスターの写真とか)をそのまま使っていれば、倍の売り上げを記録したはずだと思っているのですが、それはさておきこの一連の実績は、シングルのみならずアルバムまでが大衆によく聴かれていたあの時代の聖子には、今日もそれだけの需要があるってことを証明したといえるでしょう。

 で、そのリリースの流れは今後も続くようで、5月も決定。今回ももちろんBlu-spec、しかも内容はなんと旅うたベストで世界一周するという2枚組「 エトランゼ 」です!

 気になる内容ですが、まずタイトルに、すわ「NEW SEIKO エトランゼ」か?!とビックリしたものですが、どうもファンが勘ぐるような意図はないようで、単に、数ある聖子ナンバーの中から「世界の旅」をテーマにした名曲を集めた内容だからという感じです。

 思えば、渡航が自由化されず1ドル360円だった時代には庶民にとって海外旅行なんて夢のまた夢で、行けたとしてもジャルパックや農協観光みたいな団体旅行のイメージだったのに、マイホームも自家用車も手に入れ豊かになった70年代には新婚旅行の定番やリッチなレジャーとしてぐっと現実的になり、円高が進んだ後半ともなると独身貴族の代名詞になるなど、ヤングのライフスタイルの一環みたく身近になっていきました。

 このあたりの変遷は、ワタシのイトコなどがまさにそんな感じでして、田舎の子どもにとっても実感として残っていますが、聖子がデビューした80年代が進むと海外旅行は特別なことではなくなりましたよね。ホント80年代半ばは修学旅行で海外へ、という時代になりましたもんね。ヘタに国内を旅行するより海外の方が安い、なんていうことも常識になっていったりして…。
 自分自身のことを振り返っても、聖子の旅うたを実際にご当地で口ずさむ…なんてことも現実にあったりしますので、聖子のうたでマンハッタンやカリブ海を夢みた高校生の頃をノスタルジックに思い出すこともしばしば。恵まれた環境に感謝しても足りないほどなのですが、ホントは「兼高かおるの世界の旅」を見てあこがれていた時代が一番幸せだったのかもしれない、なんて思ったり…。

 聖子自身が時代のアイコンであったがゆえに、当時日本の若者に人気を博した世界のリゾート地や名所旧跡が歌になるのはごく当たり前のコトなんですけど、こうやってまとめられると何とも日本の戦後といいますか、高度成長を通って繁栄を極めた近代史にまで、思いが馳せられそう。昔からの持論ではありますが、そういう意味でも「松田聖子は日本国の象徴である」って気がしません?

 話がまたまた脱線しましたが、この旅うたベストで特筆すべきは、黄金期のコンセプトアルバムを思わせる構成。
 2枚のディスクをリゾートアイランドと大自然を旅するResort & Nature編と、世界の都市をたどるUrban編と分けているのもCBS・ソニー時代の聖子っぽくて素敵ですよね。
 収録予定曲を拝見して驚くのは、シングル曲がほとんどなくっても、名曲ベストが成立する聖子のスゴさ。これも「Touch Me, Seiko」以来続く、聖子ベストの真骨頂といえましょう。
 今回は少しですがユニバーサル時代のレアなナンバーも収められることになるようで、ソコも大きなポイントでしょうね。

 Resort & Nature編は、ファーストアルバムのオープニングナンバーにしてトロピカルな「~南太平洋~サンバの香り」で幕を開けますが、続く出世作「青い珊瑚礁」で早くもクライマックスを迎えるような感じです。
 それにしてもこの曲、ティーンの間で大きな話題を呼んだブルック・シールズの同名映画とは何の関係もなかったのに、まるでその映画のイメージソングのように時を同じくして売れたことを思い出しますが、あれこそ時代が後押しした聖子マジックの始まりだったのでした。

 また、当時のイロイロなことが記録されているせいか、本人もファンもあまり話題に上らせない「We Are Love」からアメリカ・ニュージャージーの「Morning Beach ~Spring Lakeにて」や、そのものズバリアフリカの大自然へと還る「Africa」 が入っていること(初のBlu-spec CD化!)にも注目ですが、今回個人的に拍手したいのは、現行商品ではサントラBOXでしか聴けなかったハワイを舞台にした主演映画「プルメリアの伝説 天国のキッス」から、挿入歌「プルメリアの花」と「パシフィック」も収録されている点。「パシフィック」未聴の方がいらっしゃいましたら、迷うことなくご購入ください。
 定番曲「セイシェルの夕陽」でシメ!というのもこのディスクをドッシリと安定させて終える効果大のように思います。

 一方、Urban編は、成田から「時間旅行」のフライトで一路ニューヨークへ。
 摩天楼で酔った一夜の情事を語る「マンハッタンでブレックファスト」から一転、「チェルシー・ホテルのコーヒー・ハウス」でプロポーズを受ける直前のブリッコ。ブルックリンの端っこにあるひなびた遊園地「雨のコニー・アイランド」を最後にニューヨークを離れ、西海岸へ。おなじみの「マイアミ午前5時」、聖子のアメリカ拠点であるLAでは珍しい「Mulholland Drive Cafe」。
 アメリカを舞台にしたナンバーはかなりの数に上りますが、全米デビューを果たした当時はもとより、今であってもやはり聖子にとって挑み続けるグレートな国ですから、当然なんですね。

 同じ大国でよく訪れるのが、中国の上海。映画「上海ベイビー」にも出演した聖子ですし、あの無国籍な雰囲気はとても似合っていますよね。
 ヒット曲の北京語バージョンも発表している聖子ではありますが、ここでは「上海倶楽部」と「上海ラヴソング」をチョイス。後者は矢野顕子+原田真二による名作シングルですが、あの“20thパーリー”の影に隠れた感じもあって、日の目を見てないような気がしますので、この機会にぜひスポットライトが当たってほしいと思っています。

 そして終盤はヨーロッパへ、列車の旅。「旅立ちはフリージア」ではバブル絶頂期、あのオリエントエクスプレスを日本で走らせたことがあざやかによみがえってきますが、デンマーク・コペンハーゲンの「白い夜 」、ベルギーの「ブルージュの鐘」、スイスの「ルツェルンの畔で」、フランスの「シェルブールは霧雨」と続きます。
 「ルツェルンの畔で」はBOX以外では入手困難なユニバーサル時代のCDシングルのカップリング曲ですが、コレもウレシイ選曲ではないでしょうか。

 という、聖子と行く世界一周旅行。期待の高まるオールカラーブックレットも、きっと旅の雑誌をめくるみたいな感じもありそうで、旅情をかき立てられそう。
 さすが世界を股に掛ける聖子ならではの企画と思いがちですが、実は旅うたご当地コンピは、リイシュー聖子のご担当プロデューサーの得意技だったのでした。せっかくの機会ですので、今回の企画が気に入った方は「 歌謡曲世界一周 」「 歌謡曲宇宙一周 」「 旅のうた 」「 旅のうた~世界の旅編 」なども併せて楽しんでみてはいかがでしょうか。

(2012.3.28)


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