一枚の写真から想い出がほどける…お値打ち名曲コンピ!
一曲のうたを聴くたびに、懐かしさがこみあげる。それが過ぎし日の流行歌、すなわちナツメロを今聴く大きな醍醐味だと思いますが、ホント記憶の回路をスイッチオンしたように、全く忘れていた光景や人の顔まで一瞬に思い出させるから不思議。
その作用は、想い出を数珠つなぎによみがえらせる一枚の写真にも似ていますが、レコード盤のルーツであるフォノグラフは、フォトグラフの音声版ということでその名が付けられたといいますし、レコードのアルバムの由来も写真のそれだといいますから、当然といえば当然です。
そんな風に時を閉じ込めたうたにもいろいろあって、隠れた名曲は非常に個人的な写真でありましょうし、大ヒット曲はみんなの想い出が詰まっている集合写真に例えられるような気がします。
以前は、誰も知らないようなマニアックなナツメロばかりを聴いて、自分だけの思い出をこっそり反芻するのが好きなタチでしたが、最近はみんなで分かち合える想い出の方により愛しさと素晴らしさを感じるようになったりして。それは、やはり人生しみじみ、齢50の足音が忍び寄っているからでしょうか。
この秋もテレビ各局、たくさんの名曲特番がオンエアされておりましたけれど、みんなで聴き合ったり、歌い合ったりしたナンバーに、思わず涙腺が緩みっぱなしになったりしましたからね。
そんなワケで毎度手前ミソではありますけれど、これからオススメしたいのが来週リリースとなる2枚組ナツメロコンピ盤「 想い出のフォトグラフ 」。
むろんマニアックな音源を求めるという人ではなく、ごくごく普通の方向けとなっております。
百恵ちゃんの「いい日 旅立ち」をオープニングに歌謡曲やアイドルポップス、フォーク&ニューミュージックまで、70年代~80年代前半を中心にたっぷり40曲も収められていますが、共通するのは1曲1曲、想い出をぎゅっと閉じ込めた写真のような名曲ばかりだということ。
職業作家さんの作り出す完璧なうたと、アマチュアとして新鮮なフレーズを紡ぎ出したフォークソング。そのコントラストを描くように鮮やかな対比こそ、この時代のうたの魅力ではないでしょうか。
特筆すべきは、やっぱり40周年のザ・ヒットメーカー、筒美京平先生でしょう。
我らがシンシア「17才」や太田さんの「木綿のハンカチーフ」をはじめ、中原理恵「東京ららばい」、大橋純子「たそがれマイ・ラブ」、庄野真代「飛んでイスタンブール」、ジュディ・オング「魅せられて」といった78~9年に放った怒濤のエキゾチック歌謡もそろい踏み。
一方フォーク系では、別格たくろうの「今日までそして明日から」「落陽」や、四畳半フォークの代名詞・かぐや姫「かぐや姫」を筆頭に、天才少女だった五輪真弓のデビュー曲「少女」、第二の森山良子だった本田路津子「秋でもないのに」、外タレカレッジフォーク・ベッツイ & クリス「白い色は恋人の色」などが独自の個性を放っています。
カバーや提供作ではありますが、ハイ・ファイ・セット「中央フリーウェイ」&石川ひとみ「まちぶせ」と研ナオコ「かもめはかもめ」でユーミンVSみゆきの図式が入っていたり、高田みづえのカバーバージョン「私はピアノ」でサザンの桑田さんも収録されていますね。
年数はそれほどたってもいないのに、ひと昔前という感じがする60年代では、ナンバー1の人気を誇ったザ・タイガース「花の首飾り」や、2000年代に入ってリバイバルヒットしたヴィレッジ・シンガーズ「亜麻色の髪の乙女」というGSに加え、布施御大若かりし頃のカンツォーネ歌謡「霧の摩周湖」、全世代に圧倒的な知名度を誇るザ・ピーナッツ「恋のバカンス」など、いろんな意味でバラエティーに富んだ名曲ばかり。
アメリカンポップスのみならず、ヨーロッパ世界中の音楽のエッセンスがぎゅっと凝縮された感のあるこの時代は、渚ゆう子のベンチャーズ歌謡「京都の恋」なども含め、昭和歌謡という一言で片付けてしまうには忍びない幅の広さと懐の深さがありますよね。
体裁や内容は、今年出た「愛と青春のうた」(こちらで紹介)と「愛と青春のメロディー」(こちらで紹介)の姉妹編という感じですが、60年代末期のものも入っているせいで、より時代の個性が感じられ、厚みが出ているような気がするこのコンピ。
どこをどう聴いても世代を超えてよく知られ、今も頻繁に耳にするナンバーばかりですので、これからの年末年始のBGMにいかがでしょう。
久しぶりに家族がそろったり、懐かしい友人たちと再会したり、いろんなお集まりの多いシーズンを、より思い出深く演出するのにもきっと役立つはずですよ。
(2012.11.12)