伊代イヨ発売!名盤ぞろいの全音源紙ジャケアルバムBOX!
いよいよ発売となります! 松本伊代のビクター音源すべてを詰め込んだ、プレミアムなオリジナル・アルバム紙ジャケット・コレクションBOX「 スウィート16 BOX(DVD付) 」!
まだ16だった1981年から数えて、はや28年。さかのぼると伊代ちゃんのアルバム復刻が始まったのは91年の“YOUNG POPS FOR YOUNG ADULT”と題したビクターの2in One定番コレクションでした。3タイトルで初期5枚のオリジナルアルバムと1本のカセットが復刻され、とりあえず全タイトルがCDとなったワケですが、収録時間の関係もあったりしてパーフェクトとは呼べなかったんですよね。
その後、94年のQ盤ブームでは“定番COLLECTION”にラインアップされたのがセカンドの「サムシングI・Y・O」のみと、残念な結果に終わってしまったのはご存じの通り。
素人目で見ていても、立ち位置的にもセールス的にも難しい感じがしたのは事実ですし、2004年に全シングルと映像ソフトを集めたCD&DVD−BOX「 松本伊代 BOX [DVD] 」が発売されただけでも良しとしよう、というファンも多かったのではないかと思います。
でも、そのボックスが08年にアンコールプレスされ、ビクター復刻も70年代のビッグアイドルがひと通り終わり、否が応でも伊代ちゃんのアルバムコレクションを期待する気持ちは高まっていたのですね。
そこにこのうれしいニュース。予定では、81年のデビューアルバム「センチメンタルI・Y・O」から、91年の「MARIAGE」までのオリジナルアルバム12枚に、武道館のライブ盤や、カセットのみ発売のタイトルまでをそれぞれボーナストラック付きで復刻。さらにテレビでの歌唱映像などを収録したDVD2枚も付くという超豪華版。
最新デジタル・リマスタリングはもちろん、オビも含めLPを忠実に再現した上、ご本人の最新ロングインタビューをそれぞれのブックレットにリレー連載で収録するなど、ビクターではおなじみの仕様となる模様です。
とりあえずでもCD化されていた伊代ちゃんですから、今回の目玉はやっぱりテレビ番組出演映像集、「TVの国からキラキラ!」と題されたDVDでしょうね。コレは先の麻丘めぐみアルバムBOXよ同様、TBSの番組での歌唱シーンを可能な限り収録ということですから、永久保存の決定版。キャプテンもちゃんと映っていることにも超期待です。
とは言え、今となってはアルバムは入手困難ですし、正直、セールスは苦戦しそうな気もするので、大プッシュの意味も込めて各アルバムの魅力をカンタンにご紹介しましょう。伊代ちゃんファンはもちろん、筒美先生や亜美ちゃん、林哲司など、要所要所で起用した方々のファンなど、心待ちにしていた人も多かったことでしょうしね。
まず、瞳そらすな!僕の妹で鳴り物入りのデビューを果たした81年、ファーストは「 センチメンタルI・Y・O+3(紙ジャケット仕様) 」です。
ボンカレーでラッキョが転がって笑ったり、おセンチになって涙が出たり、ガーナチョコレートをかじったり、たのきんの妹でもあった16才を謳歌していた伊代ちゃんの魅力がいっぱい。
当初のサウンドコンセプトだったと思われるオールデイズベースに、決して翔んでないトラディショナルな女の子の中にあるナウ、みたいなイメージです。当時ナマで見たステージ上の伊代ちゃんは、ニュートラっぽくお洒落で利発そうな感じがして、いっぺんにファンになったものです。
目玉は、強烈な印象を残したデビューシングル「センチメンタル・ジャーニー」を書いた湯川れい子+筒美京平コンビのアルバム用書き下ろし2曲。ほかにも穂口雄右さんや、この年寺尾聰とのコンビで脚光を浴びた有川正沙子さん、今年お亡くなりになったSHOGUNのケーシー・ランキンさんらが上質で正統派と言えるポップスを提供しています。見逃せないのは、第2期伊代ちゃんを支える亀井登志夫さんが顔を見せている点でしょう。
ボートラとして収録されるデビューシングルB面「マイ・ブラザー」は初期のマイベストです。
次はシングルと同じスピードでリリースした82年のセカンド「 サムシングI・Y・O+3(紙ジャケット仕様) 」。伊代作品には欠かせない康珍化+亀井登志夫コンビが中心となり、デビューからずっとのアレンジは筒美先生が目をかけていたという若き鷲巣詩郎さん。よりコンセプチュアルでまとまった雰囲気となっています。ケーシー・ランキンさんが書いたラスト「ラブ・LOVE・ラブ」は初期の伊代ちゃんファンならおなじみの名曲ですよね。
3度目のCDですが、今回注目しているのは、あのくり抜きジャケットが再現されるかどうか。80年代はレコードの仕様がアイドルグッズのようになっていった時代ですので、キョンキョン同様の再現になるかどうか、とっても期待しています。
サードは筒美フリーク必携、全曲筒美サウンドで構成した「 オンリー・セブンティーン+9(紙ジャケット仕様) 」。さすが筒美先生、魅了されたというあの声質のいい所を生かしまくっていて、ボーカルの魅力が満載。
ただ、ピンキーパンチ的というか、伊代ちゃんのプラスティックな部分というか、糸井さんがオモチャにして遊びまくった感が増幅されていて、当時は詞の世界が共感できませんでした。でも、いま聴くとTVの子も魔女っ子も、警鐘にも似たメッセージ性が感じられるようで、なんだか味わい深いです。ボートラのB面曲「PATA PATA(パタパタ)」は誰もが認める傑作。確かレッツヤンだと思うけど、テレビで歌ってるのを見た記憶もありますね。
そして83年。ライブ盤が出たせいか間が開きましたが、ぐんとトロピカルに、セクシーになったシングル「太陽がいっぱい」をフューチャーした「 エンドレス・サマー+8(紙ジャケット仕様) 」。同じビクターのキョンキョンがブレイクし、彼女と被らないよう路線を変えていったような感じでしょうか。それでも品がいいのは変わりません。
あのしのづかまゆみが作詞家・篠塚満由美として大活躍、康+亀井コンビや佐藤健さんのほか、大宮京子&オレンジの三浦年一、大野方栄、滝沢洋一ら新進のシンガー・ソングライターも顔を揃え、伊代ちゃんの新境地を開拓しています。中でも桐ヶ谷仁、REICO(田口俊+堀口和男)らユーミン系とも言えるメンツに注目ですね。
最初は伊代ちゃんを追いかけていた同期たちが次々にベストテン入りを果たした頃。伊代ちゃんも負けじとばかり模索している感は否めません。ビクターの広告では、もはやソロでなくキョンキョンとともに2トップという感じで告知され始めましたね。
それがある意味極まったのが、“作詞・来生えつこ、作曲・吉田拓郎による話題のニューシングル”というラジオCMも流れた「恋のバイオリズム」収録の「 夢ひとつ蜃気楼+7(紙ジャケット仕様) 」。年末発売ということもあり、クリスマス色が強い仕上がりです。
南佳孝、杉真理、遠藤京子、堀川まゆみなどなど、ニューミュージック&シティポップ系のアーティストを多用したせいか、歌唱法も変えて微妙なニュアンスを表現していますね。なお、シュキ&アビバや「ひまわり娘」で知られるあのシュキ・レヴィも書いております。
さらに「For You, Chrismas」は伊代ちゃん自身が作詞作曲するなど、驚きの展開。個人的には大好きなアルバムなのですが、楽曲というより、それはジャケットが“ガンと闘う少女”のイメージと重なるせいかもしれません。
そのドラマの主題歌「時に愛は」でめぐり会ったのが尾崎亜美ちゃん。彼女との出会いは大きかったようで、久々のベストテンヒットとなり、84年のシングルは亜美ちゃん作品がメインとなりました。
その流れで出たのが「地中海ドリーム」「オリビアを聴きながら」といった杏里のカバーを含む“松本伊代、尾崎亜美を歌う”という企画盤「 シュガー・レイン+11(紙ジャケット仕様) 」。これは本当に名盤で、ボーカリストとして開眼した伊代ちゃんの「歌が上手くなりたい」という思いをひしひしと感じられる仕上がりです。
亜美ちゃんの歌い方をマネして、伊代ちゃんボイスを矯正したためか、ハスキーな歌声になってしまった部分もありますが、一つ一つが丁寧でチャーミング。「風にのった日」は、今も時々無性に聴きたくなります。
今回の復刻では、亜美ちゃん提供のシングルやベスト盤のみに収録されていた「上海湾物語」もボートラになるなど、亜美づくしになるようです。
だんだんシングルが苦戦するに連れ、タレント活動の方が盛んになり、アルバムリリースのペースが落ちてくるのですが、そんな時期でもハイクオリティな伊代ちゃん。オールデイズに筒美がえりを果たしたコンセプトアルバム「 センチメンタル・ダンス・クラブ+10(紙ジャケット仕様) 」も必聴です。
このアルバムはフルアルバムではないけど、筒美フリークは外せない1枚で、チェッカーズで乗りに乗っていた売野雅勇さんを作詞に迎え、去りゆく青春の夏を歌います。「オールナイトフジ」などのバラエティーとは違う表情が魅力的。これが本格的な大人路線へとシフトするターニングポイントとなったと言えるでしょう。
85、6年の伊代ちゃんは、ケンショウアベのちょっとアバンギャルドな服が多かったように思いますが、女子大生を卒業しOLっぽいスーツも着こなし、久々のスマッシュヒットとなったのが川村真澄+林哲司+船山基紀のトリオによる名曲「信じかたを教えて」。ユーミン等身大路線というか、明らかに女性をターゲットにした作風の変化も相まって、ホントの意味でのシンガー・松本伊代はここから始まったと言っても過言ではないほどです。
その曲をメインにした「 天使のバカ~L’Ange Fou+10(紙ジャケット仕様) 」はタイトルも素敵でしたが、中身もあの時代のパンピー的オシャレさが満開。個人的にはバブルの上り調子の世の中にあって、この路線に進んだこと自体が、伊代ちゃんの真っ当さを証明しているような気もします。
そして隠れた最高傑作と言い切ってしまうのが87年の林哲司プロデュース作「 風のように+7(紙ジャケット仕様) 」。当時の最新シングル「すてきなジェラシー」も入っていますが、「信じかたを教えて」「サヨナラは私のために」「思い出をきれいにしないで」の3部作を軸に、川村さんと林さんの手腕がいかんなく発揮された切ない名曲ぞろい。伊代ちゃんも、発声から感情の込め方に至るまで、細かく気を配ってボーカリストに徹しているようです。
ご本人お気に入りの「硝子のカラス」はシングルリリースの間にテレビでもよく歌っていましたし、「星をまねて」のエバーグリーンな甘酸っぱさは特筆ものです。
惜しむらくは、この時代のデジタルレコーディングならではのスカスカした音。今回のリマスタリングでどんなにふくよかになっているかが楽しみです。
ますます大人っぽく、上質になっていった伊代ちゃん。大江千里クン書き下ろしのシングル「ソナチネ」のバージョン違いを収録したのが89年の「 Private File+6(紙ジャケット仕様) 」。ピチカート・ファイヴの小西さんらも参加したバブリー的クール&スタイリッシュな名作です。オススメは「ソナチネ」がクリスマスがテーマだったため両A面扱いとなり、テレビでも歌っていた「泣かないでギャツビー」の別バ。
そういえば歌番組より、とんねるずや志村けんらのバラエティーの歌ゲストが多くなっていった伊代ちゃんですが、ボートラ収録のシングル「淋しさならひとつ」のB面「男には向かない職業」もよく歌っていましたね。
そしてアートワークも含め、ちょっと難解な異色作「 Innocence+4(紙ジャケット仕様) 」。あの佐橋佳幸さんのギターサウンドが素敵な「ソレイユ」が傑出していますが、無国籍で茫洋とした雰囲気が渦巻いています。映画から引用したようなタイトルといい、文学的ではありますが…。
ところで、このアルバム収録のシングルは、カバーブームに乗った「悲しくてやりきれない」。当初は南沙織の「哀しい妖精」が候補だったといいますが、森高の「17才」が先に出たためにこの曲に変更されたと伝えられています。伊代ちゃんの「哀しい妖精」、聴いてみたかったなあ。
そんなことを考えていたら、ここまで名作が多いのはシンガー・松本伊代に大きな愛情を注ぎ、その資質をきちんと理解し、よりよいものを創り出してきたスタッフの皆さんの力があってこそ。とりわけこのあたりのアルバムが特に素晴らしいのは、原盤制作の日音が主導するようになったためと思われてなりません。
むろんボンドの高杉社長の愛情や、初期の飯田久彦さんや川原伸司(平井夏美)さん、最後期の野澤孝智さんといったビクター側の制作陣も実に素晴らしいお仕事をなさっていますけれども、ワタシはずっと日音びいきなので余計にそう思い込んでいたりして…。
最後のオリジナルアルバムは、自著のアイドル本を「まだ読んでません」と答えた伊代ちゃんならでは、ホントに書いたかどうかを世に問われた処女小説と連動する「 MARIAGE~もう若くはないから~+4(紙ジャケット仕様) 」。
ジャケットは桜沢エリカのイラストで、唯一伊代ちゃんの写真が使われていませんが、そのへんも終焉を物語っているようです。初の全編打ち込みサウンドのチープさも相まって、なんだか適齢期を過ぎ、恋愛の主役から旅立ってゆくヒロインが、涙を誘いますね。
こうして考えると、パブリックイメージの伊代ちゃんは金太郎飴的だと思うんですけど、ホント多彩な顔を持っていて、すごい素材であったことが確認できるでしょう。
なお、今回初CD化(漣健児さん関係で一部CD化されていましたけど)となるアルバムは、問題(?)の武道館ライブ「伊代 IN 武道館」。
ロック系を中心としたアーティストには武道館でコンサートをすることがステイタスだった時代。確か聖子よりも少し早かったのではないかと思いますけど、内容よりもいかにもボンド的な振る舞いが無謀と言われたり、揶揄されてしまったことが印象に残っています。シングル「抱きしめたい」でイメチェンを図り、女子のファンも増えてきた時期だっただけに、正当な評価の妨げになったようで少し残念。でも、この年の新人賞レースはシブがき隊とともに総ナメ。最も輝かしい時代だっと言えるでしょう。
アルバムとしては初CD化ですね。なお、今回のボックスではこの時の映像、82年にTBSで放送された番組をDVD化したものが付くということです。
ほかにも、アイドル商戦たけなわの83年、“〜Pack”シリーズにラインアップされ、ボンドの先輩・大場久美子のカバーを含む歌とおしゃべりカセット「Dream Pack FOR FANS ONLY!」。ボーナスとしては、前のボックスにも入ってたSpecial dance Mixなどの企画曲も入るようですが、NHKみんなのうたの「ニャーン・タイム」が必聴でしょう。
ということで、全アルバムを駆け足ながらダラダラクドクド紹介しましたが、各アルバム未収録のシングル曲やカラオケなどはボーナストラックとして収録、ビクターから発売された全音源をコンプリートとなるそうです。
正直、コレククター心をそそるアイドルでもないし、伝説扱いされる大御所でもないし、ボックスとあれば必ず押さえるというマニアにすらスルーされてしまいそうでファンとしては心配なのですが、皆さん、伊代ちゃんは花の82年組の代表格でありますし、アルバムは本当に上質なものが多く、名盤ぞろいだと思いますので、ぜひこの最初で最後の機会にお求めください! DVD付きですからamazonなどオフプライスのネットショップもあるでしょうし、よろしくお願いいたしまーす。
(2009.7.2)
*オリジナルアルバムについては単品販売(VICL-63481〜92、各¥2,100)されることも決定しました。