一生懸命さがにじみ出た“のりりん”のセカンド!
昨年9月、NHK-BSプレミアム「J-POP青春の’80」に出演し、なんと19年ぶりだとかの歌手復帰が話題を呼んだのりりんこと松本典子。
かなり緊張していたといいますが、中島みゆきの提供作「儀式(セレモニー)」を歌う姿は現役当時のイメージをしっかり保っていて、あの少し内気だけどひたむきな面差しや、テヘペロ系のちょっとはにかむような笑顔も液晶の向こう側にちゃんと届いた感じでした。
ああ、休業している間も変わらずちゃんと頑張ってて、一生懸命充実した毎日を送っていたんだなという想像が容易にできて、かつてのファンとしてはとてもうれしく感じた一夜だったのでした。
てっきりあのタイミングで本格復活を果たすのかと思っていましたが、どうもそうではないらしく、時間が合えば少しずつ…というスタンスの模様。でも、とまぴょんをはじめ子どもさんたち家族も応援しているようで、今後の積極的な活動再開に大いに期待したいところですよね。
のりりんは決してバラドルなんかではなく、れっきとした名ボーカリストとしての才能を持った人だと思いますのでね。ホント環境的にも時期的にも松田聖子の跡目を正当に継げる立ち位置だったワケですし。
と、本格的な復帰まで旧譜でも聴いて待っていようかなという感じでしたが、ここに来てセカンドアルバム「 KIWI+2 」がOMFの候補に挙がっております。
86年7月にリリースで当時もCDが出ておりますので再CD化ということになりますし、シングル曲を含め半分が「THE BEST Purity」(2003年のアイドル・ミラクルバイブルシリーズ)に入ってはいますが、一足先にファーストの「Straw Hat」(こちらで紹介)が復刻を果たしていますし、そちらを持っている人は新装復刻盤としてこのセカンドも入手したいのではないでしょうか。
ボーナストラックとして、プロモーション用として制作された貴重音源「THIS COOL/KIWI PARADICE」SPECIAL ENGLISH VERSIONが入ることですし。
こちらへのアップが遅れていた間、1週間で1stステージは既にクリアしたほどの勢いなので、今さら紹介するまでもないかと思いつつ、リクエストも頂戴しましたし、2ndステージ予約は少し伸び悩むのが常のようなので、ここはやはり応援させていただきましょうか。
と言いつつ、あんまりスイセンしてる感じにならないかもしれませんがね。というのも、当時ののりりんは、デビュー2年目。新人賞を一通り獲得した銀色夏生+ユーミンの名作「さよならと言われて」のスマッシュヒットを受け、大ブレイクへと順調に進んでいくかと思いきや…同期でライバルだった本田美奈子や芳本美代子が次々にトップ10ヒットを達成していく中、無念にも失速してしまった頃だからです。
思えば、85年の暮れにバッサリ切ったボブカットがイマイチだったのと、86年幕開けの新曲が中村繁之と共演した映画「ザ・サムライ」の公開に合わせたためなかなかリリースされなかったことが要因ではなかったでしょうか。
当初は千家和也+三木たかしというある意味70年代を引きずった「感性のままに」がA面候補となって早くからオンエアされていましたが、ふたを開けるとまだ新進気鋭の作家だった久保田利伸を抜擢したダンスチューン「虹色スキャンダル」に決定。
資質という視点でで言えば古くさくとも歌謡曲系の「感性のままに」が大正解だったと思いますが、おニャン子全盛期、王道系のアイドルが進むべき道を模索していた頃。オギノメちゃんの「ダンシング・ヒーロー」のヒットをきっかけにアイドルポップスもダンスナンバーへとシフトしていく世相を見据えた決断だったのでしょうね。
「虹色スキャンダル」は確かに久保田らしいカッコイイ曲だとは思いますが、語尾がウイスパーで丁寧にかみしめる歌唱法でリズムのノリよりも詞世界の繊細さを大切にしたように聴こえるのりりんの場合、かなりヘンテコな雰囲気を醸し出していたのですね。頑張り屋さんゆえ余計にそんな印象を強めてしまったような気もします。ダンスも含め、特にテレビでは…。
サーッと潮が引いていくような感じが確かにあったことを記憶していますが、もっとガッカリしたのは次のシングル「NO WONDER」にもその教訓が生かされず、またまたアッパーなダンスチューンだったこと。
カップリングは三木聖子から石川ひとみへと連なった佳曲「三枚の写真」カバーでしたが、この時もどう聴いてもこちらの方がしっくり来ていたように思ったものですから…。むろんのりりん自身はかなり頑張って、違和感はなくなっていましたけれども。
ただ、いくら美奈子やオギノメちゃんがダンスナンバーで連続ヒットを飛ばしたとしたって、合わないのにわざわざそっちへ行かなくても…と思ったのは確かです。
でも、一番の好敵手・ミッチョンも松本+筒美作品「青い靴」ではディスコにキメて初のベスト10入りを果たしたのですから、のりりんだって!と思ってしまうのは当然の流れだったのでしょうね。
なんだか悲しい思い出ではありますが、そんなタイミングでリリースされたのが「NO WONDER」を含むこのセカンドアルバムだったのです。セールス的にもオリコン最高32位と、アルバムでもTOP10入りを果たした同期たちとは大きく差がついてしまいました。
といっても内容は、全般的にトロピカル風味のリゾートアルバムといえる結構な仕上がり。
既発のシングル曲も「さよならと言われて」は若干手心を加えたリミックス「WHEN YOU SAY GOOD-BYE 〜さよならと言われて〜」に、「デ・リ・ケ・ー・ト」は「DELICATE 〜デ・リ・ケ・ー・ト〜」に、というように、タイトルからして全曲横文字になるなど、粒よりでお洒落な印象のトータルアルバムです。
ただ、いい曲が多いのに、ダンスナンバーやアッパーチューンがやっぱり異質というか、かなり無理があるように聴こえてしまうんですね。ホント一生懸命頑張ってはいるのですが。
このへん、のりりんのひたむきさゆえなのかもしれませんが、ファーストに比べても、歌のテーマやキャラクターがとても散漫になって本人のイメージとの解離が色濃くなっているアルバムのような気がします。
その違和感を象徴するのが実はオビ。「人待ち顔でお茶を飲むフツウの女性になりたくない…典子」って…。
確かに従来のセオリーがぶち壊され、常識が通用しなくなったアイドル戦国時代、一歩前に出るためには自己主張をしてポジティブにイケイケで闘わないといけないような風潮でしたけど、彼女のホントの魅力って人待ち顔でお茶を飲むフツウの女性の素晴らしさをキチンと持ち合わせてた点にあるのに!なんて当時憤慨したことを思い出します。
もうあれから26年も経っちゃいましたけど、実は今も同じ考えだったりして。 でも、それはこの時代特有のデジタルレコーディングによる音質のせいで、26年経った2012年のCDではそんな思いが払拭されるかも…なんて、ほのかな期待を抱いていますけど。
なお、この分で行けばサードの「Jasmin」の復刻はもとより、アイドルフリークの皆さんお待ちかねの「雨と水曜日」シングル版の再CD化、そしてミニアルバム「コスモス・レーン」にのみ収録だった「さよならと言われて(COSMOS VERSION)」などの初CD化もついに実現しそうで楽しみです。
それにしてもライブビデオのDVD復刻「 松本典子LIVE'86 MAIDEN VOYAGE 」はどうしてまだ達成できないんでしょう? そのへんがのりりんらしいといえばらしいし、マニアックなファンが少ないと言われるゆえんでしょうか。
(2012.4.15)