バラドル時代のハーフベスト的なサード&ラスト!
ファーストの「Straw Hat」(こちらで紹介)、セカンド「KIWI」(こちらで紹介)、そしてDVD化の「松本典子LIVE'86 MAIDEN VOYAGE」と、やや時間はかかったもののオーダーメイドファクトリーで着実に復刻が実現してきた松本典子作品。
ちょうどセカンドが出荷になるかという頃合いに、90年10 月に出たサードにしてラストの「Jasmin」も「 Jasmin+3 」としてオーダーメイドの候補に挙がりました。
その当時といえば、正統派アイドルの氷河期が一段と進み、新人類や別格の人以外はヒット戦線から離脱するどころか新曲のリリースが途絶え、ほとんどが歌の仕事から遠ざかってしまうという状態になってしまった時期。
歌番組もどんどんなくなり、歌える場所もバラエティー番組の歌コーナーという感じでした。
であるからして、のりりんも例にもれず、志村けんファミリーに数えられたようにバラドルとしての活路を見出していましたよね。ただ、お笑い的な資質があったわけではなく、親しみやすさと無色透明な魅力、そして順応性の高さが認められたものだとは思います。郵便局のイメージキャラクターへの起用も、その証といえるでしょう。
ということで、このアルバムは、88年後半から90年のシングル「雨と水曜日/想いの破片 」(「雨と水曜日」はアルバム・ヴァージョンで収録)、 「天使が棲む島」「初恋十二単」「 たったひとりの恋人/想い出にしたかった 」をメインにした、いわばハーフベストという内容。
かなりの露出があったとしても、歌をヒットさせられないアイドルが、CD、しかもアルバムをリリースすること自体難しかった様子を証明するかのようですが、ミス・セブンティーンで同時グランプリの網浜直子が起死回生のプッシュも実らず早々に歌から撤退したことを思えば、シンガーとしての活動を続けてこられたこと自体、大したものですよね。
アルバム曲は全部ベスト「THE BEST Purity」(2003年のアイドル・ミラクルバイブルシリーズ)に入っていますが、タイトルに引用された「ジャスミン半島」、渚十吾作品「瞳の中のブルー」、自作詞の「Memories」など、どれも小品ながら粒よりの完成度。派手さはなくとも相変わらずの丁寧な作りの“のりりん・わーるど”となっています。
シングルのメイン作家となった中崎英也や来生姉弟の作品もウイスパー唱法にマッチしていますが、特筆すべきは銀色夏生が斉藤由貴に提供した作品のカバー「かなしいことり」でしょう。
斉藤さんの場合はカセットテープのCMタイアップのせいで「AXIA」という主題がつきましたが、のりりんは原題のまま。オリジナルは斉藤さんではありますが、厳密に言えば銀色夏生プレゼンツというスタイルで出したアルバム「Balance」バージョン(ボーカルは銀色さんの琴線に触れた一般の女子高生だったはず)のカバーです。
なお、ボーナストラックとして、ファン待望の「雨と水曜日」のシングルバージョンのほか、このアルバムに対応するシングルの未収録カップリング曲「夜明けのマーメード」「春から小町」の3曲を収録予定だとか。
ただ、リマスタリングされるといってもいずれもCD時代の復刻ですし、ファンの皆さんなら当然持っているはずですから、本当ならミニアルバム「コスモス・レーン」にのみ収録だったファン人気ナンバー1の「いっぱいのかすみ草」や「さよならと言われて」の新録とか、未CD化の音源を入れてほしいという声が圧倒的のような気がします。
個人的にも、そっちが結願なんですけど、正直なところ、このタイミングでプラスされなければ今後なかなか難しくなるんじゃないかな、なんて思ったり…。こうなりゃ、一刻も早い本格復帰を祈るとしましょうか!
(2012.10.1)