80年組ヨコハマの微笑、初のCD!初のベスト!
日本の芸能史に残るビッグアイドルが次々に誕生した1980年。新人賞レースの前半は、岩崎良美、松田聖子、田原俊彦の三つどもえトップ争いを繰り広げ、後半ヨシリンが息切れし、河合奈保子が追い込みをかける…という感じの展開は、新しい時代の幕開けにふさわしい戦いでした。
ところで、その前半のビッグ3に次ぐ人物を、皆さん覚えておいででしょうか? 河合奈保子でも柏原よしえでも、もちろん石坂智子でもない、“ヨコハマの微笑”こと鹿取洋子のことを。
デビューシングル「ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ/ハートエイク・トゥナイト」のスマッシュヒットは鮮烈で、今も語り草になっている彼女ですが、このたびなんとG☆Bシリーズに仲間入り! ファン待望の初CDにして初ベストとなる「 ゴールデン☆ベスト 鹿取洋子 」のリリースが決定しました!
ピンク・レディーがアメリカ進出を遂げ、なんと全米でレギュラーの冠番組がスタートした80年3月。そのPLの事務所・T&Cが社運を懸けて送り出したのが鹿取洋子でした。
エキゾチックな顔立ちとモデル並みのお洒落なスタイルで、アイドルというより初期の中原理恵路線と言った方がうなずける、アーバンなアダルトポップスを得意とした彼女。デビュー曲のレコードジャケットが嫌いで写真を差し替えました!なんていう当時としては珍しい発言も飛び出すなど、ホンネの時代にぴったりのカンロクもありました。確か聖子やヨシリンと同学年だったはずですが、とても大人びて見えたものです。
海外進出のT&Cらしく、デビュー曲「ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ」は洋楽カバー。後にプレジデント、カヤックという人気グループになるオランダのロックバンド・ディーゼルがオリジナルで、鹿取さんと同時期、レイジーもアルバムでカバーしているディスコティックな名曲です。
前述の通り、この曲を引っさげて、数々の新人賞レースに参加。日本テレビ音楽祭新人賞を皮切りにほとんどの音楽祭にノミネートされ、あなたが選ぶ全日本歌謡音楽祭新人奨励賞、新宿音楽祭銀賞などを受賞したのです。
ちょっぴりネトっとした声質もなんとなくカッコよさげで、翔んでるギャルっぽくナウかった鹿取さん。これまでCD化されていたのは「ゴーイン・バック・トゥ・チャイナ」や第2弾の「オリエンタル・スピリット」ぐいらいですし、何だかそれだけの人っぽく見られがち。しかし、原盤制作は日音が担当しておりますし、実は名曲ぞろいなのですよ。
筒美系ではありませんが、やはり中原理恵—石井明美のシティポップスラインに位置しているのではないかと思っています。
セカンドシングル「オリエンタル・スピリット/掟」は、なかにし礼+井上忠夫(大輔)コンビの妖しさ全開のオリジナルでしたが、第3弾は全英2位をマークしたリキッド・ゴールドの「今宵ダンスで(DANCE YOURSELF DIZZY)」をA面にした洋楽カバー「チャンス・トゥナイト」。
B面「癪な夜には」はアルバム「LIBRA」からのリカットでしたが、このファースト(というかラストだと思う)アルバムがスゴイ。
中でも、来生えつこ+南佳孝コンビの「気分はケセラセラ」はキョージュアレンジ。ホソノさんにユキヒロ、大村憲司さんも参加という、飛ぶ鳥を落とす勢いのYMOが結集したセッションで、YMOフリークも復刻を切望してたナンバーです。
81年には、甲斐よしひろ提供で甲斐バンドもセルフカバーした名曲「グッドナイト・ドール/奴」をリリース。コレは甲斐さんらしいメロディーラインと覚えやすい節回しとともに、PLからソロになったばかりのT&Cに在籍し続けたMIEが振りを付けたことも手伝って、けっこう話題を呼びました。テレビの露出も増えたし、ラジオのオンエアもあったし、根強い甲斐さんファンも応援したし、上昇気流に乗れそうな雰囲気も確かにありましたよね。
しかし、聖子をブレイクさせた小田裕一郎が聖子を離れてから起用した4枚目のシングル「恋のバイバイ・ブギ/ホックニーのPool」を最後に、T&Cがなくなっちゃったり、確か鹿取さん自身も災難続きで、活動は停滞していったように思います。
それでも翌82年には心機一転、鹿取洋子から鹿取容子へと改名。起死回生を狙ってトノバン作曲の「どうして欲しいの…/思い出を作りながら…」をキティレコードからリリースするのです。しかしヒットには恵まれず、女優というかタレント的な活動へとシフトしていきました。なお、ここまでがユニバーサル系で、今回のベストへの収録対象となってます。
しかしですね、これで歌をフェイドアウトしなかったのが鹿取さんのスゴイところ。お芝居やグラドルみたいな仕事の合間に、アニメなどの企画もので歌声は聴かせてくれたのですね。
84年には徳間から「超時空騎団サザンクロス」というアニメの主題歌シングル「星のデジャ・ブー/約束」と、アルバム収録の挿入歌「WALKING IN THE SUN」を発表。
さらに翌85年にはコロムビアから、ショーケン、ジュリー&田中裕子が共演した映画「カポネ大いに泣く」のイメージソング「恋一彩/星降る夜に」と、でアニメ「オーディーン・光子帆船スターライト」のテーマ「プラトニック/私のオーディーン」というシングルを発売するなど、かなりガンバっていたみたいです。
むろん今回のベストはユニバーサル系のシングル+アルバムが対象ですし、時間的にも収録は難しいかもしれませんが、そうそう機会があるわけではないので、めいっぱい音源をまとめていほしいと願うマニアの皆さんは多そうですね。
なお、今回のユニバーサルのG☆Bは、鹿取さん以外、時代もアーティストもかなりシブイメンツ。「 ゴールデン☆ベスト 天知茂 」「 ゴールデン☆ベスト 青山ミチ 」「 ゴールデン☆ベスト 伊東きよ子 シングル・コレクション 」というラインナップになってます。
ポリドール時代の青山ミチもコアなマニアがついていると聞きますし「亜麻色の髪の乙女」の原曲にも惹かれますが、ウチでは原盤制作のナベプロ仕切り、伊東きよ子のシングルコレクションでしょうか。筒美京平フリーク必携、初CD化となるCBS・ソニー時代の「まもなく朝/ひとりごと」などもしっかり収録されるようです。
(2011.3.10)