ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤492

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#492

ピンク・レディー in 夜のヒットスタジオ 〜フジテレビ秘蔵映像集〜

(2011.5.27発売、PCBC-61679、¥14,910)  *4枚組DVD-BOX

夜ヒットDVD第3弾は、再結成PLの全盛期を網羅!

 月曜10時の生放送、時代をまたいで愛されたフジテレビの歌番組といえば、もちろん「夜のヒットスタジオ」。
 やっぱり芳村真理さんの「どーもー!」の印象が強いですが、CSでは1998年から繰り返し再放送され、現在もフジテレビONE(「 スカパー!e2 」などでの加入申込と試聴環境が必要です)でオンエア中です。

 今現在は1978年へと突入。もう何巡目かわかんなくなりましたが、初回ではNGだったものが二巡、三巡するうちOKになったり、その逆もあったり。ホントちゃんとしてなきゃ整理がつかなくなってしまう状況で、基本ズボラなワタシなど、しっちゃかめっちゃかになるのは必至の状態ですが、幸い親切で几帳面な友人のおかげで現在の放送をライブラリー化でき、折につけ楽しませていただいております。

 さて、そんな再放送も、最初からNG、再々放送の段階でNG、再々々でNGなどなど、出演者にまつわるいろんな事情でオンエアが見送られることがあるようですが、そういうアーティストって格好のウワサの種になってしまうものです。
 で、最近は、DVD化のためオンエアNGになってしまうケースが多い模様。昨年は百恵ちゃんの回の放送が急になくなった後、記念すべき夜ヒット第1弾DVDが出ましたが、今回放送分では最初から出演回がスルーされ、DVD発売が囁かれていたアーティストがいました。

 それが、ミーとケイ。1976年8月にデビューし、数々の前人未到の記録を打ち立てた世紀のスーパーデュオ、ピンク・レディーです。

 昨年9月の解散宣言30周年記念日に「解散やめ!」宣言をして、永続的な活動再開を表明したPLですが、12月にはニューボーカル・ベスト・アルバム「イノベーション」(こちらで紹介)をリリースするとともに、今春からの全国ツアーを発表。
 さらに、3月の解散30周年記念日には東日本大震災チャリティーの意味合いを込めたプレミアムライブ「初陣式」を開催と、まさに怒濤の再始動となったばかりのタイミング。

 意気込みもこれまでの再結成とはまったく違う感じで、やる気マンマン、みどころガンガン、たまりまセブンでUFOセブンなムードを醸し出していたところでした。

 そんな時期に、満を持したタイミングでもって、DVD-BOX「 ピンク・レディー in 夜のヒットスタジオ~フジテレビ秘蔵映像集~ [DVD] 」の発売がアナウンスされたワケです。ホント、噂通りだわ、あなたシンドバッド♪という感じですね。

 夜ヒットDVD-BOXとしては、百恵ちゃん(こちらで紹介)、明菜(こちらで紹介)に次ぐ第3弾。

 例に漏れず、ピンク・レディーの夜ヒット出演映像全38回にプラスして、「スターどっきりマル秘報告」や「スター千一夜」「FNS歌謡祭」など貴重なフジテレビの番組出演映像を収めた4枚組4時間20分。
 今回はフジサンケイグループのポニーキャニオンからリリースとなります。

 百恵ちゃんの夜ヒットBOXにも映り込んでいたPLですが、百恵ちゃんの最終回応援での歌唱映像はカットされていましたので、PLの夜ヒット歌唱シーンは、今回初の商品化になるんじゃないかと思います。

 思えばピンクの場合、テレビ番組の歌唱シーンを含む全盛期の映像は、この前出たスタ誕BOX(こちらで紹介)を除くと、お膝元の日テレものがVHSで出ていたものの、DVDはすったもんだの末リリースされた2006年のBOXに入っていた2枚だけ。

 といっても、そのうちの1枚は既発商品でありテレビ中継されたライブのDVD化。もう1枚はレッツゴーヤングを中心にしたNHKのテレビ出演映像によるヒット曲集だったものの、時系列で網羅したとはいえない構成で、他のスタ誕出身者BOXのように1曲1曲出演順に軌跡を追った充実DVDとは異なるモノだったのですね。

 当時の事務所はとっくの昔に消滅している上、日本経済史に残る売り上げを叩き出したエコノミック・モンスターだっただけに、利権や権利関係がフクザツだったのかもしれませんけど、アレを残念がるファンは多かったものです。

 しかし、今回はバッチリ。夜ヒット初登場の日にちこそ76年の12月20日と第2弾「S・O・S」の発売後ですけど、歌唱曲はFNS歌謡祭・優秀新人賞受賞曲ということでデビュー曲の「ペッパー警部」を披露。しかも、この歌はオリコントップ20入りしたのが11月に入ってからでしたから、ヒット後という感じではなくまさに旬のタイミングでありました。

 翌年1月には「S・O・S」で出演、2月についにオリコン1位に上り詰めます。以降は新曲が出るやいなやNo.1、ミリオンヒット連発の時代が続き「カルメン'77」「渚のシンドバッド」「ウォンテッド(指名手配)」「UFO」「サウスポー」「モンスター」「透明人間」「カメレオン・アーミー」と出す曲すべてがNo.1ヒットとなり、新曲を出せば夜ヒット出演という図式は当然となります。

 大御所勢ぞろいの夜ヒットにとっては本来デビュー2年目、3年目なんてポッと出の新人扱い、出演できると聞けば何が何でもスケジュールを空けます!と歌手の方から言ってくる時代だったといいますが、そこは出身局の日テレを中心にどの番組からも引っ張りだこだったPL。
 笑い話でなく、1時間に数時間分のスケジュールが入っていたといいますから、スケジュールを確保するのにもこなすにも、とことん苦労したそうです。

 夜ヒットだけではありませんが、PLが出る歌番組の場合、カメリハやランスルーは常に不在。夜ヒットでは、2人の代わりにスタ誕の先輩である淳子と百恵ちゃんが代役となり、音合わせ、振りマネを行ったことは有名な話ですし、百恵ちゃんのDVDに映像も入りました。

 そういうこともあって、ピンクの2人はとにかく肩身が狭い思いをして、本番直前のスタジオ入りから放送終了後まで、見えない所では謝ってばかりいた…なんて逸話も残っています。

 今回、クリアな映像で通して見れば、そんな雰囲気が映像を通じて感じられるでしょうか。そして、彼女たちの健気で一所懸命な姿と重ね合わせて、思わず涙ぐみそうになるでしょうか。
 やはり、ピンク・レディーはかつての日本の美徳の象徴みたいです。

 ちょっと横道にそれましたが、夜ヒットでは続く「ジバング」「ピンク・タイフーン(IN THE NAVY)」「波乗りパイレーツ」、大人への転換を図った79年9月の「マンデー・モナリザ・クラブ」、全米デビュー曲「KISS IN THE DARK」まではすべて皆勤賞のPL。

 初期や殺人的スケジュールの都合などで1回しか歌わなかったものも含まれますが、1曲につき平均2回は出演している計算となります。
 今回は一挙にパッケージされているワケですから、この頻度が見やすいのかもしれませんね。実は百恵ちゃんでさえ、あまりに同じ曲 が続くと飛ばしてしまったくらいなので…。

 その後、アメリカ進出のため日本を不在にした期間があるもので、新曲が出ても夜ヒットでは披露されない時期が続きますが、全米冠番組の出演を終え帰国した後の80年5月からは「世界英雄史」「うたかた」「リメンバー(フェーム)」と定期的に出演。
 そして解散前日の81年3月30日には、夜ヒット名物の引退コーナーとしてラストシングル「OH!」やヒットメドレーを感動的に披露しています。

 また、日本一のアイドルだけに、キャンディーズとのコラボレーションなど、夜ヒットだから実現できた企画もありましたし、モスクワオリンピック応援ソングになるはずだった「DO YOUR BEST」など夜ヒットでは歌えなかったシングル曲が他の番組映像でカバーされるかどうかを含め、とっても期待が高まるところです。

 複数回入っている楽曲では、スパンコールが増えていったり衣装がグレードアップするなど見どころ満載ですが、やっぱり楽しみなのが振り付け。
 古巣のNTV紅白歌のベストテンでは、「サウスポー」の独占新曲公開など振り付けができた所までをその都度細切れに見せていくという、レッスン時間の取れないPLならではの趣向がありましたが、夜ヒットでの醍醐味は新曲のリリース前や発売直後に歌ったもの。振りが最終形と違って未完成であったり、今となってはアレ?と思うパートがあったり、それをチェックしてみるのも楽しいのでは。

 コレはもう単なるアイドルの懐かし映像ではなく、1970年代の日本歌謡史、いや音楽史のみならず日本の社会風俗史の筆頭に記録される、スーパーデュオの軌跡と奇跡をつぶさに追った歴史映像といえそう。

 最も幅広い人気を集め、最も数字を叩き出し、情報化社会の礎を築いたピンク・レディーのモンスター再始動を応援しつつ、ぜひとも入手したいものですね。

 余談ですが、振り返ると経済復興から高度成長期、モーレツ時代を経て、経済大国となった戦後ニッポンにとって、日本人が、いやニッポンという国が、現実の枠組みの中で、最後に見た夢物語だったピンク・レディー。
 時代でさえ子どものようにあやしながら、同じ振り付けで踊らせたこのモンスターアイドルは、都市化も、情報化も、教育問題さえも飲み込み、昇華させた、まさに不世出の“現代の天使”たちだったといえるでしょう。

 一見、メディアに組み込まれたパビリオンであり、アトラクション、超娯楽大作というおよそ非人間的な総合プロジェクトでありながら、その存在を支えたのは、根本美鶴代と増田啓子という生身の人間でありました。
 そしてあの頃の彼女たちの根底にあったのは、想像を絶する忍耐力や、努力、根性、勤勉さといった、かつての日本人なら当たり前のように持っていた日本の美徳のようなものだったように思います。

 今となってはもう忘れられ、失われてしまったことのように見えるけど、あの頃のピンク・レディーの映像は、もしかしたらあの大切なことをしっかり思い出させてくれて、もう一度取り戻せさせてくれる存在になり得るような気がします。

 今のこの日本で、今のこのタイミングで、あの頃のピンク・レディーのDVD-BOXが出ること。それは、これからの私たちと日本という国にとって、とても大きな意味があるのではないかと思っています。

(2011.4.8)

*詳細はポニーキャニオンのリリースインフォメーションサイト(特設サイト)をご覧ください。


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