フリーク必携、筒美京平作品9曲プラス1が初CD化!
日本が誇る作曲家といえば、やっぱり筒美京平先生。先生が作曲家生活30年記念をお迎えになった98年末から99年にかけては、ボックスやアーカイブスのCDが相次いでリリースされ大きな盛り上がりを見せましたが、多くの筒美フリークにバイブルとして歓迎されたご本が「筒美京平の世界」 (高浪高彰・森光厚夫監修/シンコーミュージック刊)でした。
初のデータブックとして刊行された筒美本であり、シングル盤を中心に先生の作品をジャケ写付きで網羅。和田誠さんが書いた10周年記念アルバムのイラストを使った表紙も相まって、筒美フリーク必携、コレクターでなくとも圧巻の一冊としてもてはやされたのでした。
ヒットメーカーの筒美先生ですからシングル曲の紹介がメインでしたが、先生がかなりの収録曲を手がけた主要アルバムの写真も掲載されていて、多くの筒美フリークは目の色を変えて探し回ったといいます。特に、過半数が筒美作品で構成されたアルバムは事実上のサウンドプロデュース作品ともいえ、その完成度は異常なほど高いというのが定石でしたから、どれも高い再評価を受け、復刻や初CD化が相次いだのであります。
そんな筒美アルバムのうち、長いこと切望されながらCD化されなかった1枚が、遂にオーダーメイドファクトリーの復刻対象商品となりました。LP盤B面の1曲を除く9曲が筒美作品(しかも橋本淳さんとのコンビ!)という円道一成のデビューアルバム「トワイライト・ランナー」に、アルバム未収録のシングルB面曲を追加した「トワイライト・ランナー +1 」です!
Mr・ハートフル、ISSEIこと円道一成の当時の呼び声はポップシーンを変える実力派シンガー、今ならさしずめ和製R&Bの元祖といえるでしょうか。
神戸出身の彼は、バンド活動を経て1980年6月21日、松竹映画「わるいやつら」イメージソング「踊る大都会」でCBS・ソニーからデビュー。今回、候補に挙がった「トワイライト・ランナー」は、デビューから 1カ月後にリリースされたファーストアルバムです。
筒美作品は、戸塚修さんの「D.J. 2001年への旅(D.J. into the space)」を除き、シングル「踊る大都会/エレクトリック・カウボーイ」をはじめ「ニューヨーク・シティ・マラソン」「星のない男」「成功の甘き香り」「聖林(ハリウッド)通信」「俺のリズムを聞いてくれ」「トワイライト・ランナー」「Hot eyes」という9曲。アナログ盤A面の5曲は、なんと先生自らがアレンジまで手がけていて、いかに力を入れた存在だったか分かります。
なお、今回ボートラとして収録される「バイクとルージュ」は、「俺のリズムを聞いてくれ」をカップリングに80年11月に出たセカンドシングルです。
ファンキーでソウルフル、という通り一遍の形容では決して言い表せない、まさにザ・シンガーといえるボーカルが魅力ですし、30年も経つと詩世界はちょっとこっぱずかしいものもありますが、ロック系からモノホンのR&Bまで、完璧な筒美サウンドと相まってホントにカックイー。J.D.サウザーみたいなおヒゲのルックスもむろんカックイーのでありました。
個人的には、橋本淳先生の作詞のせいか平山三紀の男性版というイメージがあったり、同時代の方向性的には中原理恵とペアで聴きたいという感じが強いです。
ココではどうしても筒美作品のハナシになりますが、円道さんは今も現役で多彩な活動をつづけていらっしゃいますし、根強いファンも多い模様。
ソニーからはアルバム1枚、シングル2枚でRCAに移籍したようですけど、その後のサードアルバム「Run To Live, Live To Run」には山下達郎作品が入っていたりしてよく話題に上ります。ということは、RCAを擁するBMG音源がソニーからリリースされている今こそ、セカンド「ミッドナイト・ランナー」も含め、いろんな復刻が期待できるのではないでしょうか。
セカンド以降を求める人も、まずはこのアルバムから。ぜひ清き一票を!
(2011.2.23)