ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤453

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#453

五十嵐夕紀/ゴールデン☆ベスト

(2010.12.8発売、TOCT-11266、¥2,000)

ファンは初ベストに感涙?でも、泣くのはおよし!

 今もなお、各社からリリースが続くおなじみの名ベストシリーズ、G☆B。切り口を変え2作目、3作目となるアーティストたちの好編集盤も多いですし、中にはちょこちょことオドロキの初ベストも加わっていたりして、マニアの皆さんのハートをくすぐっているようですね。

 年末のEMIミュージック・ジャパン編にも、なんとレアアイテムが仲間入り。それが、1977年期待の大型新人としてデビューし、NHKレッツゴーヤングのサンデーズのメンバーとしても活躍した五十嵐夕紀の「 ゴールデン☆ベスト 」です。

 コンピ盤ではちょこちょこCD化されていましたが、今回は単独の初ベスト。待ちに待っていた方も多いことでしょうね。とはいえオリコンにランクインすらしなかったアーティストですし、せっかく発売されても数字が取れなかったらヤバいので、応援の意味を込め簡単にご紹介させていただきましょう。

 ルックスも歌唱力も太鼓判。出自はスクールメイツから「あなたならOK!」とくれば、もちろんナベプロの秘蔵っ子という感じですけど、夕紀さんの場合はデビュー曲「6年たったら/丘の上の十番地」がスゴかった。なんてったって松任谷由実+筒美京平というコンビが書き下ろしているのですから。
 このコンビはユーミンの荒井時代に郷ひろみ、平山三紀、沢田研二でも組まれていましたけど、当時のユーミンはお輿入れしたばかり。一時は引退して作家に専念しようと考えたこともあるそうですが、これが記念すべき改姓後の初仕事となったそうです。
 この詞も当時はユーミンにしか書けなかったであろうファッション雑誌的リアリズムの世界。アンノンでいえば夕紀さんは「non・no」っぽいイメージでしたが、自意識が強そうな上、生真面目なガンバリズム全開で、難しいメロディーもフリもソツなく歌いこなし、堂々とていましたよね。

 東京音楽学院でレッスンを積んで、メイツでステージ経験も重ねて…というのは数多のスターを送り出してきたナベプロの基本方程式。かの天地真理ちゃんや、太田裕美さんというちょい前の成功例をきちんとなぞったラインだったし、帝国にとってはマニュアル通りの正攻法です。レッツヤンをはじめ「クイズ ドレミファドン!」などナベプロ系の番組のレギュラーとして露出度は高かったように思います。
 アイドルとしての発声や、キメスマイルを見事に体得。タレント性や歌唱力はもとより、モデルとしても通用していたルックスを総合すると、確実に売れる存在だと誰もが思ったはずですよね。
 ナベプロ友の会の会員だったワタシも、余りにも完璧な優等生ぶりに淳子の再来をイメージしたことでした。

 しかし、そうはならなかった…。思うに「スター誕生!」以降、主流になっていったのは、リスナーと同じ立ち位置にいるごくごく普通っぽい感じのアイドル。特にこの年は余計にそうだったから。
 ニキビやコンプレックスを抱えたままステージに立つというか、ティーンなら誰しも共感するような気恥ずかしさというか、アマチュア的無欲さというか、そういうものを正直に出す方が確かに魅力的に思えていました。
 それはこの年にデビューし人気を博した女性陣を見ても明らかでしょう。高田みづえ、榊原郁恵、清水由貴子のフレッシュ3人娘に代表されるように、イモねえちゃんとまではいかなくても、見た目はごくフツーの健康優良児がもてはやされ、正統派カワイコちゃんは不遇の年だったのでした。
 古めかしいナベプロの公式はとてもダサく思えるようになってしまって、もはや通用しなくなっていたんですね…。

 というワケで、筒美先生と橋本淳さんとの旧の名コンビによる第2弾「私が選んだあなたです/今日も私は泣き笑い」(アレンジがクセになりますよね)の後は、最盛期に入った松本隆さんが受け持ち、川口真さんとの「第一印象/面影ありがとう」、拓郎との「えとらんぜ/ほ・ほ・え・み」をリリース。曲には恵まれていたと思いますが、なかなか抜け出すことができませんでした。

 そんな中、チャンスの兆しが芽ばえたのが78年10月、松本さん+都倉センセイの「DEEP」コンビによる「ワル!(泣くのはおよし)/メイク・アップ」。
 この年栄華を極めた百恵ちゃんのツッパリ路線と、ピンク・レディーのハードな部分を足して割ったようなイメージチェンジを敢行。メイクもファッションもアクションもすべてを変えた甲斐あって、レッツヤンでも大プッシュ。大ヒットとまではいきませんでしたが、その存在を大きくアピールすることに成功したのです。キャッチーなサビは印象的で、今でも夕紀さんの代表曲として知られていますね。

 この時はなんとなくこのまま行けば大丈夫かも、というムードもあったような気がしますが、レッツヤンを卒業してからは急に露出が少なくなったようでまた失速。悪いことに、続く「恋人たちの季節/めぐる季節に」を発表した79年は、ニューミュージック全盛にしてアイドル冷遇時代になってしまったのでした。
 とはいえ「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」などの洋楽カバーブームに乗って「バイ・バイ・ボーイ/ゲッタウェイ」をリリースしたり、起死回生を狙ったり。全力投球、一生懸命という言葉が似合う夕紀さんっぽい活動を行うも、いつしか歌の方はご無沙汰になっていったようです。

 81年には「ワル!(泣くのはおよし)」の世界をもっと過激にしたような挑発お色気路線「ホット リップス/熱くホライゾン」を出しましたが、EMIでのリリースはこれが最後の模様。なお、85年にはビクターから競作で話題になった「浮気ならいいわ/何もなかったように」のシングルが出ているそうですが、まったく記憶にございません。

 という夕紀さん。後に武田久美子が出てきた時、共通項を感じたりしたこともありますが、資質は全然違いますし、いま振り返ってみるとその幅の広さに感心するばかりです。
 6年たったらロマンポルノ…などと揶揄されたこともありましたけど、今回の初ベストは、きっとそんなイメージを払拭させるはず。ワタシも発売を心待ちにしつつ、その実力をあらためて堪能させていただこうと思っています。

 なお、今回同時発売されるEMIのラインアップは大黒摩季「 ゴールデン☆ベスト 」、はしだのりひこ「 ゴールデン☆ベスト 」、欧陽菲菲「 ゴールデン☆ベスト 」、小川知子「 ゴールデン☆ベスト 」、横道坊主「 ゴールデン☆ベスト 」という面々。皆さん的には、フィーフィーや知子さんあたりでしょうか。

(2010.10.14)

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