気分は大磯ロングビーチ! アイドル夏うた70年代編!
人は大自然のもとで生かされている存在だということを実感する出来事が続き、あらためて畏敬の念を抱くとともに感謝せずにはいられないこの頃。気温についても同様で、今年はGWから30℃超えの真夏日になる地域があったり、各地で観測史上最高の5月気温が記録されるなど、日本全国で6月下旬から7月中旬並みの暑さになっているようです。
もちろんいろんな心配事や懸念は尽きないのですが、あれこれ考え込んでマイナス志向になってしまってはさまざまな物事やエネルギーが余計ダウンしそう。よって、こんな時こそムリにでも前向きになって、現状を目一杯楽しみつつ今日という日を精一杯生きていけたらなあ、などどと考えております。
そういう視点で見ますと、気温は一足飛びにもう真夏なのですから、BGMも真夏気分をそそる夏うたにすれば、ますますいい気を発散できそうです!
ちょうど1970年代の女性アイドルたちのサマーヒットソング集「 アイドルサマー’70 」もリリースされることですしね。
このCD、タイトルを見てお気づきの方もいらっしゃると思いますが、コレは昨年、80年代女性アイドルのサマーソングを集めた選曲が話題を呼んだ「アイドル・サマー '80」(こちらで紹介)の続編。
個性、濃度、パワー、どれをとっても80年代を上回るものがありますし、時代を超えて愛され続けるアーティストやうたもたくさん収録されておりますので、当時を懐かしく思える人はもちろん、知らなくて新鮮に感じる人でも十分に楽しめるんじゃないかと思います。
ラインアップを見てたら、ホント往年の大磯ロングビーチか今はなき赤プリの屋外プールか、往年のオールスター水泳大会か紅白歌のベストテンか、そんな風情が漂う夏うたが勢ぞろい。ならばこちらは、おりも政夫かマチャアキかといったノリで、あの水上特設ステージを妄想しつつ、応援ラッパをパフパフッ!と鳴らす感じで紹介しちゃいますネ。
それではそろそろ参りましょうか!とばかりオープニングを飾るのは、70年代を代表するガールズグループが77年の夏に放ったビッグヒット2連発。
まずは飛ぶ鳥を落とす勢いで快進撃が続くピンク・レディー、ビキニがとってもお似合いな「渚のシンドバッド」。
デビューして初めてのサマーソングでしたが、スカートをまくし上げるポーズへと変化していった振り付けはホントに悩殺でしたね。阿久先生のお好きなセクシーという言葉がこの時期に子どもたちの間でも市民権を受けたのはPLとヒデキのおかげではないかと思っております。
余談ですが「解散やめ!」宣言につき昨年、この歌を再レコーディングしたPLですが、よりパワフルによりセクシーになっていたのにオドロキ。
対するは、この時期に電撃の「解散宣言」を行ったばかり。シリアスからコメディまで、何でもこなすコーラスグループ・キャンディーズ。郵便局のキャンペーンソング「暑中お見舞い申し上げます」です。
そういえばちょうどこの時期、カネボウ夏のキャンペーンガールとして夏目雅子さんが登場。紫外線の影響が取り沙汰される前の時代、小麦色の肌を武器に「Oh!クッキーフェイス」を歌いましたが、今回こちらもしっかり入ってます。
しかし、彼女がまさか夭折し、スーちゃんが義姉になるなんて、誰が想像したでしょうか。そしてキャンディーズの3人の中では一番健康そうだったスーちゃんもまた若くして亡くなってしまうなんて…。
さて、77年というトシの新人女性アイドルの特長といえば、それまでのカワイコちゃんとは異なる様相でした。
キャンディーズが普通の女の子に戻りたいと言ったこととまるでシンクロしたように、ニキビや丸顔、ぽっちゃり太め系など、いわゆる普通の女の子の普通の悩みを持った子たちがこぞってデビューしたのでした。身を隠す部分の少なかい水泳大会では、見事なまでに明白でしたよね。
このCDでそんな存在にあたるのは、スクール水着の高田みづえちゃんと、ダイナマイトな圧巻ビキニの榊原郁恵ちゃんの仲良し2人組。松本さんお得意のポエム・ストーリーとエラそうでクールな歌唱がクセになる傑作「パープル・シャドウ」、7枚目のシングルにしてついにキャラにぴったりマッチした最大ヒット「夏のお嬢さん」と、そろってデビュー2年目、78年の夏ヒットが入っています。
当時は小5だったもので「icecream」と「I scream」のダブルミーニングなんて気づきもせず、葡萄の染みはなかなか落ちないことも知りませんでした。
ところで、70年代アイドルの代表格であり、その後も連綿と続くアイドルシンガーの原型となったのは、やはり真理ちゃんとシンシアでしょう。
太陽と月といいますか、天と地といいますか、空と海といいますか、自然の摂理や宇宙の真理にもある対照的な2人の本質こそが、王道を創り上げた所以のような気がします。
そして、それを受け継いでいったのが淳子と百恵ちゃんではないでしょうか。
例えば、夏の太陽のごとく、どこまでも明るいイメージのあった真理ちゃんと淳子。メイン作曲家がともに森田公一さんで、口ずさむことに意義のある“歌いうた”を得意としましたが、それこそまさにアイドルの本分。
ここに収録された73年の「恋する夏の日」と76年の「夏にご用心」はファンでなくても歌えるという人が多いようですし、それぞれの振りの決めポーズを覚えている人もかなりの数に上ります。そういう意味でも、この2人はアイドルの王道。ステージの中心にこそふさわしいと言えましょう。
一方シンシアと百恵ちゃんは、プロデューサーが同じ酒井政利さん。文学的な色合いも濃い私小説的展開がなされ、歌とともに成長していった感があります。若さという“生”も思春期以降の危うい“ 性”も、ティーンならではの輝きでありますが、ここでは2人とも後者といえる74年の「夏の感情」と75年の「夏ひらく青春」。
どちらも代表曲ではないものの、シンシアの場合はキャラメル・ママ+ブラスで生来の南国的情熱とグルーブ感が炸裂していますし、百恵ちゃんは火照った体を抑え涼しげな顔をしているものの、体内では熱い血潮がほどばしるような歌唱となっています。いずれにしても白日の下にさらされているからこそ健全で、清潔、かつ美しいものなのですよね。
と70年代前半、後半を代表するビッグアイドルが登場したところで、初々しい新人コーナーに参りましょう。水上騎馬戦など団体戦競技のBGMとして、画面の隅で歌います。
トップバッターは74年、スタ誕出身で鳴り物入りの大型新人・伊藤咲子ちゃん。こぼれんばかりの笑顔で堂々と歌い上げるのは、8月発売の第2弾ではなく春に出たデビュー曲「ひまわり娘」です。
そのサッコ同期でヘアバンドがチャームポイントだったのは浅野ゆう子サン。平凡募集歌「太陽のいたずら」はデビュー2年目75年ですから、水着の布地は大きく、カットもまだまだ鈍角でした。
そして75年度期待のニューフェイス、“まごころ弾き語り”の太田裕美さんはブレイク前夜の「夕焼け」を爽やかに歌い上げます。
太田さんは基本的に水着はNG、大磯からの中継番組でもTシャツ姿でしたが、ナベプロの先輩アグネスも水着がイヤでたまらなかったそうで、かなりなボインを気にして平時からさらしを巻いていたそうです。
ハイソックスにポックリ靴をやめた75年は、スカート丈もミディからマキシへとどんどん長くなる一方。波打ち際で「はだしの冒険」を歌う時もサンドレスでした。ちなみにお洒落のポイントは、クリスチャンらしい十字架の18金ネックレスとのことです。
というように、70年代はティーンアイドルがジャリタレと揶揄されつつも市民権を得ていった時代。それでも大人と子どもの世界の垣根はどこでもキチンとありましたし、歌謡曲には大人しか嗅ぐことのできない妖しい夜の匂いもちゃんと残っておりました。
アイドルと呼ばれレコードを出した人の中でも、70年代半ば、つまり昭和40年代までは大人のナオンか夜の蝶かという女の人はウヨウヨいましたもんね。
今回はそんな大人仕様のアイドルもバッチリ入っておりまして、その代表格が71年のビッグヒット、筒美京平先生が最も愛した平山三紀お姐さんの「真夏の出来事」。警察官をお父様に持ち、ご本人は至って奥手な清純娘だったそうですが、見た目と楽曲のイメージとは誠に恐ろしいもの。もちろんアバズレ系とまではいかないのですが、声とルックスのせいで、ちょっとイカした不良少女のように思ってました。
また、現代でも小悪魔ageha系というべきか、キャバ嬢アイドルなどおミズ系アイドルの系譜はしっかり残っておりますが、70年代のその代表格と呼べそうなのが、73年にデビューしてエミー・ジャクソンのカバー「涙の太陽」をヒットさせた安西マリア。
♪ギ〜ラギ〜ラのアクションは子どもの間でも流行りましたが、大人向けというか、盗み見た平凡パンチとかのグラビアのヌードのお姉さんと似てるとゆうか、そんな感じがしたのは確かです。テレビの新人賞でだって、淳子や百恵ちゃんはもとより、アグネスやミヨちゃんとは全く異なる雰囲気でしたし、年齢的には近かったであろうシーちゃんとも全然違うニオイがしてたのは、子どもでも嗅ぎ分けられるほどでした。水泳大会のイメージで言えば、同じ徳大寺出身のよしみで、ポロリ要員の森田日記も加えてほしかったところです。
そして極めつけが71年のゴールデン・ハーフ。もはや戦後ではないと言っても、まだ戦後を引きずる部分が存在し、ハーフも薄幸だとか、日陰だとか、奔放だとか、そういった色眼鏡で見る大人がたくさんいた時代。コミカルな気質を持ち子どもにも大人気だったエバちゃん以外は、確かにとっつきにくかったように思います。
ここで歌うのは「ゴールデン・ハーフのバナナボート」。ジャマイカ民謡で本家はハリー・ベラフォンテ、浜村美智子さんでおなじみのスタンダードですが、ハーフが歌うとかじってくわえて意味深エッチなゴーゴーソングになってます。
と70年代を振り返れば、やっぱり濃密で混沌とした初頭から、成熟、洗練へと向かう末期まで、実に多様な顔を持っていますよね。
この1枚だけを見ても、60年代を引きずるカバーポップスや盛り場歌謡から、洋楽の影響を如実に受けたアイドルポップス、半ばにブームを迎えたフォーク、そしてそれらをクロスオーバーさせた新感覚のニューミュージック…色で言うなら、原色からパステルカラーへと移り変わる様子がパッケージされているようです。
70年代も後半となると、一億総中流の豊かさをみんなが実感できるようになり、誰もが生活を楽しむようになります。夢は憧れるものではなく叶えるものとなり、現実に手が届くものになっていったのです。かつては貧乏、苦学の象徴であった学生を中心とするヤング層も80年代にはそれを享受する方向へと向かっていきますが、70年代終焉の79年にはそんな世相風俗が如実に表れているんですね。
その筆頭に挙げられるのが、リゾート地で過ごすバカンス。大人はエーゲ海だシルクロードだと海外旅行へ出かけますが、若さあふれるヤングは国内リゾートでも十分なんです。
独身貴族じゃないから日本の海でもいいと歌った岩崎ヒロリン「夏に抱かれて」では、国内リゾート地を満喫する様子が描かれ、テープでイニシャルを日焼けするというトレンディなお洒落も楽しんでいます。また、レコ大最優秀新人賞に輝いた桑江知子さんは、東海汽船で「ブルーブルーアイランド」の伊豆大島めぐりとしゃれ込んでます。
夏=バカンスという感覚は子どもにも人気のアイドルに飛び火しますが、その代表格は石野真子ちゃん。南の島のリゾート感が満載の「ワンダー・ブギ」は、臨海学校よりダンゼンお洒落な感じがしますよね。なお、昼間はリトル・バーズかスクールメイツ・ジュニアかという子どもたちを引き連れお遊戯を繰り広げますが、労働基準法の関係からか夜の水泳大会ではバーズやスクールメイツのお兄さんやお姉さんに交代です。
と、どったの?なんてあきれられそうな妄想も広がり、たっぷり楽しめること請け合い。大人の遠足やキャンプの栞としても重宝しそうですよ。
(2011.5.11)