ナツメロ喫茶店/オススメ復刻盤498

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  ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#498

マコト・ハイランド・バンド/Injection

発売未定、DYCL-366、¥3,150)  *オーダーメイドファクトリーで条件をクリアできず復刻は実現しませんでした

太田裕美ファンも必聴!白川隆三が手がけた自信作!

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 鬼才・矢野誠さんといえば、若き日には筒美京平先生の大のお気に入りアレンジャー。
 筒美フリークにとっては、いしだあゆみやシンシアなど70年代初頭のフレンチやソフトロックっぽいものから、後半のシンセ黎明期にテクノサウンドをいち早く多用したものまで、とにかくお洒落で先生から絶大な信頼を得たアレンジャーとして認識されていることでしょう。

 また矢野顕子ファンにとっては、アッコちゃんの才能を具現化させた人物であるとともに、矢野姓を名乗るようきっかけとなった昔のパートナー(結婚の証人は筒美先生!)であり、「東京は夜の7時」のジャケットが可愛かった風太くんの父さまとしても知られています。

 風街市民には、松本隆さんとともにオリジナル・ムーンライダーズのメンバー(オルガン担当)だったことでおなじみではないでしょうか。

 そういえば松本さんのツイッターで知ったのですが、矢野さんは静岡県富士見市の市民文化会館・キラリ☆ふじみのコンサート企画&プロデュースを担当することになり、先週、その第1弾となる「矢野誠プロデュース『1974』」が開催されたそうです。

 これは南佳孝さんの「摩天楼のヒロイン」、あがた森魚さんの「噫無情」という松本さんと矢野さんが手がけた名盤をオリジナルメンバーで再現しようという何とも豪華な二夜限定ライブで、当日は錚々たる面々が大集合したとか。
 ため息が出るほどのステージだったいう予想通りの評判に、拝見できなかったことを悔やんだものですが、なんだかタイミング的には矢野さんは今また脚光を浴びている感じがします。

 それは今回、矢野さんが79年にMakoto Highland Band(マコト・ハイランド・バンド)として発表した幻の名盤が、オーダーメイドファクトリーの廃盤再プレス候補に挙がったということも大きかったりして。

 そのアルバムとは「 Injection icon 」。太田裕美さんの名作群を生み出してきた敏腕ディレクターとしておなじみ、CBS・ソニーの白川隆三さんが手がけた自信作です。

 “テクニカル・ポップの流れを変えるニュー・サウンド!! MR.コンピューターとハートフルなディスコミュージックがドッキング”という最新鋭アルバムだったのですが、やっぱり早すぎたのでしょう。ほとんど売れなかったという幻の作品なのです。

 当時はYMOがデビューしたばかりで、彼らもアルバムが全米発売されておらず、日本でもまだ一部の人にしか支持されていなかった頃。
 白川さんは担当した中原理恵ちゃんのデビュー作でキョージュやユキヒロともつながりがありますし、このアルバムにはユキヒロも参加していますから、もしかしたらYMOとともに、いや先駆けてコンピューターミュージックによるテクノポップに先鞭をつけたアルバム…になっていたかもしれません。

 ちなみに、同時期の理恵ちゃんのシングル「枕詞(ピロー・トーク)」とアルバム「夢つれづれ」のアレンジも矢野さんでした。

 さて、99年に出た太田さんのBOX「太田裕美の軌跡」のブックレットでも、白川さんが自身の担当作で特に気に入っているものとして挙げたのがこのアルバム。膨大なお金をかけ、ニューヨークでも録音したそうですが、太田さんのテクノ期への序章はここから始まったと言うこともできそうです。
 昔からの裕美ファンにとって、テクノ・ニューウェイブ路線はNYから帰国後、突然降ってわいた感じに思った人がほとんどだったようですが、白川さんの嗜好を考えると、実はそうではなかったんですよね。太田さんのレンジの広さは、白川さんのレンジの広さと確実にリンクしていたのだと思います。

 そういう観点から言えば、太田さんのアルバムで白川さん最後の力作「I do,You do」という名盤(いつも言ってますが、個人的には太田さんのアルバムではNo.1に挙げたい傑作)が、この延長線上に位置することになるわけですが、白川さんにお聞きしたところ、あのアルバムがお好きだという方にはこのマコト・ハイランド・バンドもぜひ聴いてほしいとのことです。

 ウチとしては異質なアルバムになりますが、白川さんのご意向を鑑み、太田裕美ファンの皆さんにこそ投票いただき、お聴きいただきたいという意味で今回ご紹介させていただくことにしました。

 また、矢野さんサイドから太田さんを語る時、忘れてはならないのがチャクラ。そう、テクノ期の太田さんを支えた板倉文さんが、小川美潮ちゃんたちと組んでいたバンドです。

 このチャクラの初期をプロデュースしたのが矢野さんであり、ナベプロ所属の彼らにとって渡辺音楽出版サイドのディレクターが福岡智彦さんだったという事実。因果はめぐる糸車、いや縁は異なもの味なもの。そうやって、つながっているワケなのですね。

 内容はといいますと、リカットシングル「ダンシン/ワナワナ……」を含む全9曲。
 チャイコフスキーの交響曲第6番をはじめ、ロシア民謡の「コロブチカ」、ジョナサン・リッチマンとモダン・ラバーズの珍曲「エジプシャン・レゲエ」などを引用したり、コール・ポーターのスタンダード「あなたはしっかり私のもの」をディスコカバーしたり、どれもこれも一筋縄ではいかないナンバーがテンコ盛り。

 ぜひCD復刻が実現して、じっくり堪能できますように! 裕美ファンのみならず、理恵ファンの方など、白川さんのディレクション作品がお好きだという皆さんに、ぜひご協力いただければと思います。

(2011.5.18)

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