日本中が愛したカナダの少年、初CDは36年ぶりの全曲集!
ああ、この日をどれほど待ちわびたことでしょう。もう感涙の極みであります。カナダのスーパーアイドル、ルネの全曲集が、ついにオーダーメイドファクトリーのスペシャル企画商品として候補に挙がったのですから。
リクエストし続けていたものの、外国曲の権利など諸問題があったようで半ば諦めていましたから、喜びもひとしおです。
誤解を恐れず心情を吐露すれば、ルネは、ちゃんとしたアンソロジーでのCD化を心底願っていた最後のアーティスト。これさえ出れば、もう復刻で思い残すことはないと思える人だったのです。
それが、今回2枚組で企画された「 GOLDEN☆BEST limited ルネ・シマール 」!
カナダからやってきた13歳の少年、ルネ・シマールがデビュー曲「ミドリ色の屋根」を引っさげ、第3回東京音楽祭世界大会でグランプリとフランク・シナトラ賞を獲得し、鮮烈な日本デビューを飾ったのは1974年6月のことでした。
美しいボーイソプラノによる天賦の歌唱力。素直に切々と、けなげで感動的な日本語の歌詞を歌うひたむきな姿。それに加え、人なつっこい性格とソバカスいっぱいの笑顔。これで人々の心をつかまないわけがありませんでした。
TBSテレビで放送された大会の模様は全国を感動の渦に巻き込み、デビューシングルはたちまち大ヒットを記録。インタビューなどのプロモーションで見せる素顔も実にチャーミングで、夏休みの間はルネの話題で持ちきりになるほどの人気沸騰ぶり、一躍人気アイドルとなり「ミドリ色の屋根」のシングルはなんとオリコン3位をマークしたのです。
村井邦彦さんのアルファミュージックが原盤制作を担当し、CBS・ソニーからレコードがリリースされたルネ。本国カナダでは既に人気者だったというルネと日本の架け橋になったのは、あの村井さんの名曲「美しい星」だったといいます。
日本では、森山良子さんや赤い鳥がヒットさせ、トワ・エ・モワや天地真理ちゃんのカバーでも知られるナンバーですが、これはユニセフ協会の日本発のメッセージソングのような形で世界へとわたったそうで、それをカナダで歌ったのがルネだったのです。もちろん公用語のフランス語で「Laissez-nous au moin le Soleil(美しい星)」として。
これをきっかけに、かの川添象郎さんが目をつけ契約に奔走し、日本デビューと東京音楽祭への参加を果たすということになったそうです。
大ヒットしたことで、続々とレコードが作られるわけですが、プロデュースは象郎さん、実質的なディレクションはユーミンやハイ・ファイ・セットも手がけたアルファの有賀恒夫さんが担当。ちなみにソニーサイドは酒井政利さんをヘッドに、最初は太田裕美さんで知られる白川隆三さん、後半は百恵ちゃんで有名な金塚晴子さんのラインだったようです。
さて、そんなルネですが、日本でのCD化は進まず「ミドリ色の屋根」がコンピ盤で聴けた以外、村井さんBOX「 The Melody Maker -村井邦彦の世界- 」(「ミドリ色の屋根」「小さな生命」「Laissez-nous au moin le Soleil(美しい星)」「君にあげる子守歌」「去年の夏」収録)が2007年6月に発売されるまで、長らくの間まったく日の目を見ていなかったのです。
というわけですから、今回のコレクションはまさに待望。実績を鑑みてもCBS・ソニー所属でチャートのトップ3に入るヒットを飛ばしたにもかかわらず、ベストCDさえ出ていなかったアイドルはルネぐらいではないかと思いますから。
ルネの場合、シングルは74年の「ミドリ色の屋/雨上がりのデイト」「小さな生命/僕の国へおいで」「愛の翼をひろげて/朝露のきらめき」をはじめ、75年の「君のすべてがほしい/サヨナラ少年時代」「去年の夏/君にあげる子守歌」「みんなあなたに/涙のプレリュード」、そして間が空いて76年の母国開催、モントリオール・オリンピック大会テーマ曲「モントリオール讃歌/この旗の下で」という7枚をリリースしていますが、今回は基本的にアルバムの曲順を優先して並べたコレクション。
すなわちDISC 1には、日本語&フランス語半々で構成した74年のファーストアルバム「ミドリ色の屋根 ルネ・ファースト・アルバム」(オリコン10位)と75年のセカンドにして全曲日本語オリジナルアルバム「君のすべてがほしい」の計24曲。
DISC 2にはアルバム未収録のシングルA面曲「去年の夏」「みんなあなたに」「モントリオール讃歌」に、74年の4曲入りコンパクト盤、おなじみクローバー・シリーズとしてリリースされた「クリスマス・ベスト・ヒット」収録のクリスマスソング4曲、そして同じく74年の実況録音盤「ルネ・ファースト・ライブ・アルバム―ルネの魅力のすべて」の計18曲。
総計42曲の日本盤オール・ソング・コレクションという構成になっています。
と、ルネが日本に残した音源が網羅されるわけですが、期間にしてわずか2年余り、それもほぼ前期1年間に繰り広げられた怒濤のリリースにあらためてオドロキ。来日しての実質的な活動期間は、のべ約3カ月だったといいますから、その密度の濃さはやはり70年代半ばの出来事と言わざるを得ません。
とにかく、日本でのオリジナルだけでなく、本国で有名なヒット曲「鳥」をはじめとするカナダでのレパートリー(もちろんフランス語)もたっぷり入っていますし、熱狂的なルネ人気をパッケージしたライブも十二分に楽しめることと思います。
なお、ルネのベスト盤としては75年に「去年の夏」とCBS・ソニー恒例のシリーズの「ヒット全曲集」の2枚が出ていただけだったので、今回、日本では初の単独CD、36年ぶりのベストアルバムということになります。
ああ、本当に長い道のりでした。って、まだ実現したワケではありませんので、ぜひご協力をお願いいたします。
今も大勢いるというルネファンや、フレンチポップス、70年代アイドル好きの皆さん、はたまたボーイソプラノマニアの方々などはすぐさま投票なさることでしょうが、プラスしてお願いしておきたいのは達郎やター坊、美奈子ファンの皆さん。
ヤマタツフリークには広く知られ、CD化を願っていた人も多いと聞きますが、74年9月に渋谷公会堂で行われたコンサートのライブ盤「ルネ・ファースト・ライブ・アルバム―ルネの魅力のすべて」には、シュガーベイブ(山下達郎、大貫妙子、村松邦男)&吉田美奈子が、セカンドアルバム「君のすべてがほしい」には達郎、美奈子、ター坊がコーラスで参加しているんです。
ですので、ぜひとも組織力を総動員していただけたらと思います。達郎さんの「サンデー・ソングブック」で呼びかけされた日には秒速でクリアしそうですよね。
余談ですが、ルネって、最初は大人たちをその歌で感動の渦に巻き込んだ後、キャラクターが浸透するにつれ子どもと女学生が中心になってしっかり支持していったイメージがありますが(そのせいで人気のワリにその後のセールスが伸び悩んだのではないかと思います)、子どものルネファンの感覚としてはこのとき絶頂を迎えていたアグネス・チャンに寄せる思いに近かったように思います。
そういえばアグネスとルネはよくツーショットになっていましたし、「明星」の表紙も飾ったこともありましたが、二人とも言葉が通じなかった分、純粋でひたむきな心がはっきり映し出されていたように思いますし、それが子どもたちのハートに強く響いたのではないかと思っています。
こちらに書いたことがありますが、幼かったワタシ自身は、最初ルネのキャラクターには惹かれたものの暗くマイナーな「ミドリ色の屋根」がとても苦手でした。いくら周りが騒ぎ立てても、あのシンシアやめぐみタンがカバーしようがニール・リードの「ママに捧げる詩」っぽい世界はまったく好みではなかったのです。
しかし、第2弾「小さな生命」の天使のような美しさに態度は急変。そんなこんなで、二度目の来日の際は大ファンになり、次の冬休みだったか春休みだったか、ルネ主演のドキュメンタリー映画「ルネ・オン・メロディ」を見に行った記憶があります。小学校で割引券が配られた気もするんですけど…ルネの映画ならPTAも推薦したはずですよね。
いま手元のファーストLPを聴いていますが、あの頃、ルネが歌う「僕の国へおいで」を聴いてルネの国に必ず行こうと誓ったことが思い出されます。
だんだん野太くなってしまったルネの変声期とともに、そんな誓いも忘れてしまっていたけれど…。CD化が実現すれば必ず訪れようと、また思いを新たにしています。
(2011.4.1)