いま再評価したい、EMIのボーカルNo.1!
心に流れるうたに耳を傾けながら、一つ一つを振り返り、またかみしめて。今できること、続けられることを少しずつという気持ちで、「ナツメロ喫茶店」も今日から再開です。あらためて、被災地の一日も早い復興をお祈りしながら…。
南風にのって春の便りが届けられる頃、決まって思い浮かぶのは1990年代後半から2000年代にかけて、流行歌のジャンルにも吹き荒れた沖縄ブーム。
もう一段落した感がありますが、沖縄出身のボーカリストの中で個人的に最もウマイと感じ、とても応援していた人がこの石嶺聡子さんでありました。
といっても、もともとは洋楽志向のシティポップス系で、沖縄のイメージを背負って売り出された人ではないし、もし沖縄ブームに乗れてたとしても本人は絶対不本意だったような気もしますが、絶対にもっと前に出るべき人だったと思っていますので、彼女のうたや、声質がそっくりな後発のKiroroなどを聴くたびに、今もちょっと残念な気持ちになったりするのです。
今もマイペースで活動されているようですが、ボーカリストNo.1、スペシャルボーカル、ミラクルボイスなどと大プッシュされたEMI時代ですら意外に知らない方が多いみたいですから、今回リリースの決まった「 石嶺聡子/ゴールデン☆ベスト 」を大推薦しましょう。女性ボーカルがお好きな方でもしちゃんと聴いたことのない方がいらっしゃいましたら、ぜひこの機会に…と思っています。
94年にシングル「土曜日とペンと腕時計」でデビューした石嶺さんですが、脚光を浴びたのは翌95年の第5回NHK新人歌謡コンテスト。諸岡菜穂子さん(シンシアと「青空」を競作するはずだった子)や田川寿美さんを生んだことでも知られるボーカルオーディションです。
ここで尾崎亜美作品の第2弾シングル「私がいる」を歌い、見事優勝したことで、この年の紅白歌合戦に特別枠出場を果たすのです。
ワタシはたまたまこの番組を見ていたのと、安田生命(当時)の保険のオバちゃんに「私がいる」のCDシングル(CMソングだったのです)をもらったことで石嶺さんのファンになるのですが、奇しくも時は戦後50年でした。
この年の初夏には東宝、東映とも名作のリメイクによる記念映画を製作。沖縄出身ということもあってか、石嶺さんのうたが東宝の「ひめゆりの塔」の主題歌に抜擢されるのです。
それがおなじみ、喜納昌吉さんのカバー「花」。このCDシングル、最初はユーミンの「春よ、来い」と同じカップリングなしの500円シングルとして出されたもので、当時はオリコン66位止まりでした。
しかし、映画公開終了後に「青空」との両A面扱いで再リリース。こちらは暮れの紅白出場効果もあって、翌年早々に最高14位をマーク。足かけ3年にわたるチャートインを果たす超ロングセラーヒットとなったのです。
ただ、後々もこの「花」のイメージに悩まされることになるのですね。
その後も、連続で強力タイアップを取りつつ、筒美京平、阿木燿子+宇崎竜童コンビ、広瀬香美、中島みゆきら各氏の難曲をナチュラルに歌いきるボーカリストとして評価はされたのですが、皮肉にも沖縄ブームが高まっていった時代。
沖縄イメージの色眼鏡は外されず、結局「花」を超えられるヒットは出せず…いつしか同郷の夏川りみちゃんに取って代わられた感じがありました…。
と、振り返ると不完全燃焼の思いが強いのですが、石嶺さんのクールでありながら優しく包み込むアルトの声質と安定感は、ホントに本物。だからこそ余計に心に響いてくるのではないかと思っています。
6年ぶりとなるこの久々のベストには、「花」のシングル・バージョンをはじめシングル作品(一部ニューバージョンあり)がそろい踏み。新たな再評価が生まれることを期待しています。
(2011.3.26)