南沙織や天地真理のカバーを含む、幻のライブ盤!
2004年の第一号「南沙織 ドーナツ盤型CD COLLECTION」を皮切りに、コレクター向けの企画商品や市販には踏み切れないマニアックな廃盤音源復刻を次々に実現させてきたソニーミュージックのオーダーメイドファクトリー。
熱狂的なマニアを持つ80年代アイドルものを中心に盛り上がってきましたが、復刻飢餓期から復刻狂時代を経て飽和状態を迎えたこの頃は、なんとなく停滞していたのも事実です。
そんな状況を断ち切るように、大幅テコ入れリニューアル! 2ステージ制を廃止し、いきなり商品予約から開始する上、商品化されたタイトルは在庫がある限り継続的に販売するなど、達成しやすく買いやすい仕組みへとチェンジ。その代わり予約締切日の延長は原則行わなくなるそうで、よりシビアな一面もありますけど、これまでイライラやきもきしていた人には、まさに朗報といえそうです。
また、今回のリニューアルにあたっては候補商品の取捨選択も行われましたが、コアなOMFファンにとってはかなりな収穫になったかも。もはや達成は無理かと思われていた円道一成(こちらで紹介)や三波豊和(こちらで紹介)、クリッパー(こちらで紹介)などが晴れて商品化決定となったのですからね。
また、旧作の新ルール適用という感じで、中原理恵BOX(こちらで紹介)なども在庫分のみ限定数販売が始まっていますので、買い逃した人はチェックをお忘れなく。
というように新しくなったオーダーメイドファクトリーには、松岡英明クンやあのナチコなど、待望の新タイトルも続々候補に挙がっていますが、その中でオススメしたいのが何と言っても「沢田富美子イン・コンサート 素顔の青春 」!
所属事務所の渡辺プロダクションでは期待の秘蔵っ子として、レコード会社のCBS・ソニーとしては直系有力ポスト聖子として、81年に「ちょっと春風」で本格デビューした沢田富美子。
シングルの音源は、改名後も含め「サ」で始まる80年代ソニー・アイドルのコンプリート・シングル・コレクション「アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 沢田富美子・佐東由梨・沢田玉恵」などでCD化済みでしたが、今回は82年にリリースされた唯一のアルバムにして、ファーストコンサートの模様を収録したライブ盤なのです。
しかもレコード発売はなく、ナベプロのアポロンからカセットのみで通販された激レア貴重音源(渡辺プロタレント友の会の月刊誌「ヤング」で大プッシュされていましたので、沢田富美子FCに入っていなくとも友の会会員なら購入できました)ですから、待望の初CD化(一部はナベプロ発のコンピ盤でCD化済み)ということになります。
とにかくルックスがよく、顔もスタイルもA級アイドルの風格があり、ハイトーン&ロングトーンの美声で歌もグー。そして楽曲制作は聖子プロジェクトで1年目のヒットメーカー・三浦徳子+小田裕一郎+大村雅朗のトリオを起用し、全国津津浦浦まで流れる雪印のアイスクリームの大型タイアップも付くなど、申し分ないスタートだったのに…。
売れなかったのは、やっぱりもう時代遅れの感があり、ことごとくアイドルを失敗させていたナベプロのが原因のような気がしますが(聖子を逃したことでも分かるように、次の年の花の82年も逸材・水野きみこを…)、思えばご存じの通りプレデビューから不運だったワケですから、そもそも運がなかったとしか言いようがありません。
とはいえ今や不動産投資で成功し、よくテレビでもお見かけしますから、そっちに運があったということなんでしょう。
さて、このライブは、81年11月に東京、大阪、名古屋の3カ所で行われた沢田富美子ファーストコンサートから、21日開催の東京・新橋のヤクルトホールでの模様を収録。当日は午後2時開演で、チケット代は全席指定1800円だったそうです。
新人ですので、オリジナルは阿木燿子+宇崎竜童という豪華コンビによるプレデビューシングル「ノルマーリナ・ミーシャ/ナターシャの子守唄」に、「風は秋色」とまんま同じ構成の本格デビュー曲「ちょっと春風」、クラシカルな仕掛けがあった第2弾「風のシルエット」(ジャケットの衣装はこの曲のために本人がデザインしたものでした)のみ。
後はカバーなのですが、選曲が実にイイのです。大ファンだったというオリビア・ニュートン・ジョンの「そよ風の誘惑」「レット・ミー・ビー・ゼア」「ザナドゥ」、ノーランズの「ダンシング・シスター」と洋楽カバーも捨てがたいですが、必聴は邦楽カバー。
当時の歌謡界は、ナベプロの先輩・石川ひとみの「まちぶせ」に端を発するリバイバル&第2次ユーミンブームのまっただ中。それを象徴するかのようにユーミンが石川セリに提供した「朝焼けが消える前に」、ユーミンが作詞した南沙織「青春に恥じないように」、そしてナベプロの先輩・天地真理の人気曲「夏を忘れた海」、がセレクトされているのです。
彼女を知らずとも、シンシアや真理ちゃんのファンで興味がおありの方がいらっしゃいましたら、ぜひご予約いただけたらと思います。
なお、彼女は第3弾シングルでこれまたナベプロの先輩トワ・エ・モワがヒットさせたNHK「あなたのメロディー」のナンバー「愛の泉」をカバーしますが、作詞作曲の渡部隆巳さんは当時ナベプロのスタッフで彼女を担当していたんじゃなかったでしたっけ。カセット版にはこの曲も特別収録として入っていたのですが、今回は見送られたようです。
それにしてもシングル盤「愛の泉」のカップリングがオリジナル・カラオケということに、ナベプロの姿勢のすべてが表れているように思い、残念に思ったことでした。
(2013.12.20)