オススメ復刻盤「倉田まり子/あなたにめぐり逢えて… +2」


ナツメロ喫茶店

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 ビバ!旧譜の新譜。紙ジャケからBOXまで、ナツメロ復刻盤&再発盤、コンピ盤などのレビューコーナーです。

#664

倉田まり子/あなたにめぐり逢えて… +2

(2014.3.12発売、NKCD-6658、¥2,900+税) <タワーレコード限定>

*初CD化となる「グッドプロポーション +3」(NKCD-6659)も同時発売!

都倉俊一の秘蔵っ子! レッツヤン風1stも20年ぶり再発!

 昭和歌謡ブームや復刻ブームも一段落し、CD化も二巡三巡。購買の中心層だったコアなユーザーも飽和感を感じているのか、おのずから供給の方も停滞の傾向にある復刻市場ですが、そんな中にあって、唯一活発といえるのがタワーレコード発の好企画、タワレコ良盤発掘隊・Tower To The Peopleシリーズ。

 一般に音楽的評価が高くユーザーの幅も広いシティポップスを中心に、どんどんタイトルが増えてきておりますが、来月にはなんと倉田まり子の2タイトル「 あなたにめぐり逢えて… +2 」「 グッドプロポーション +3 」も追加されるそうです!

 今年でデビュー35周年。倉田まり子といえば、ニューミュージック隆盛のあおりを受けたアイドル不遇期、新人不作と言われる79年にキングレコードからデビュー。ルックス良し、歌良しの優等生イメージで活躍。レコード大賞や歌謡大賞などあらゆる音楽祭で新人賞を総ナメにしたことは鮮烈な印象として、人々の記憶に刻まれていますよね。

 大ヒットには恵まれなかったものの安定した人気を誇り、コンスタントに新曲を発表してましたけど、80年代というホンネの時代に合わなかったのか、器用さが裏目に出て楽曲に統一感がなかったせいか、結局は今ひとつ抜けきれず。デビュー以来そっくりと言われていた石川ひとみがユーミン作品のカバー「まちぶせ」で起死回生のヒットを飛ばすと、負けじとユーミン作品のカバー「冷たい雨」で追随したこともあったのですけどね…。

 結局は85年のあの騒動(そういえば投資ジャーナル、オウム、現代のベートーベンって、何だか共通のルックスじゃありません?)をきっかけに一線を退き、今ではプロフェッショナル・キャリア・カウンセラーの坪田まり子さんとして活躍なさっているそうです。

 さて、彼女のオリジナルアルバムは全部で5枚出ているそうですが、今回再発、復刻されるのはファーストとフォース。特にフォースは初CD化となりますが、こちらではやっぱりファーストの「 あなたにめぐり逢えて… +2 」をスイセンしようと思います。

 初CD化されたのはQ盤ブームに沸く94年、キングの音楽市場シリーズの1枚としてでしたから、実に20年ぶり。早い時期に廃盤になったと思いますので、アイドルマニアでも持っていないという方がいるかもしれませんのでね。

 78年にNHK「レッツゴーヤング」のサンデーズに加入。司会の都倉俊一先生の寵愛を受け、知名度を高めた後、“さわやかなキャンパス・エンジェル”というキャッチフレーズで、79年1月に「グラジュエイション」でデビューした倉田さん。このファーストアルバムは、1年目の締めくくりのように11月に発売されたものです。
 ちょうど日本歌謡大賞で放送音楽新人賞、FNS歌謡祭で最優秀新人賞を受賞し、そして大晦日のレコード大賞でも最優秀をと勝負に臨んでいた頃と重なります。

 であるからして全10曲は、数々の新人賞に輝いたスマッシュヒット「HOW!ワンダフル」を中心に、レッツヤン育ちの優等生アイドルの集大成という感じで、落ち着きと安定の魅力を放っております。
 収録されたオリジナル曲はすべて山上路夫+都倉俊一のコンビ。倉田の「倉」は都倉の「倉」というのは当時から有名な話ですし、都倉先生にとって最大の成功を収めたPLの妹・天馬ルミ子より可愛がっているのであろうことはブラウン管を通してでもハッキリと伝わってきましたけど、「スター誕生!」を中心に数多の女の子をデビューさせてきた都倉先生があそこまで肩入れしたのは、百恵ちゃん以来という感じもありました。

 その寵愛ぶりは、提供曲を聴けば分かるというもので、レッツヤンはもとよりラジオでも大プッシュされたデビュー曲「グラジュエイション」、凝った名曲なんですけどデビュー曲の影に隠れてしまった組曲風第2弾「いつかあなたの歌が」、アイドルの王道・グリコのCMソングでもあった第3弾「HOW!ワンダフル」というシングル曲を筆頭に、LP書き下ろしの軽快ミディアム「翼のない鳥」など、都倉さん渾身という感じのメロディアスな楽曲ばかり。
 中でもタイトル曲や「虹の未来」は、マイナーからメジャーへと流麗に移ろうクラシカルバラードで、ペドロ&カプリシャスに書いた一連のナンバーを彷彿とさせる仕上がりとなっています。先生の期待に応えるようにひたむきに歌う姿は、透きとおるトパーズ・ボイスと謳われた声質や素直な歌声と相まって感動的です。

 また、サンデーズのレパートリーと言えば、ヤング101以来連綿と続く外国曲の日本語カバーですが、培った成果はここでもバッチリ。全盛を迎えていたアバの「落葉のメロディ」と「エンジェル・アイズ」ではブレザーにプリーツスカートのサンデーズルックが思い浮かびますし、シンシアもレコーディングしたオリビア・ニュートン・ジョンの映画挿入歌「愛すれど悲し」の感情の込め方は、都倉先生の個人レッスンの賜物と言えそうです。訳詞を手がけた若かりし頃の亜蘭知子にも注目ですネ。

 もう1曲、ティーンの女子を中心に大ヒットしたアメリカ映画「リトル・ロマンス」の日本版イメージソング「サンセット・キッス」もピックアップされていますが、英語ではあったものの実際は和製ポップスで、パオがオリジナル。とはいえ洋楽扱いされ映画のCMでも大プッシュされていましたし、主演のダイアン・レインは日本でも一気にスターになりましたから、やっぱりサンデーズのレパートリーという感じですネ。

 というレッツヤン風の構成となったファースト、今回の再発ではお値段2倍となっていますけど、未CD化だったアルバム未収録のシングルB面曲「気にしない」「懐かしきボーイフレンド」をボーナストラックとして追加。そのジャケットもフルカラーで封入されるということですから、旧盤のQ盤を持っている人でも食指が伸びそうです。

 なお、ビーイング系の力でぐんとポップに変身した「 グッドプロポーション +3 」は81年7月のリリース。作家陣にはシティポップスの注目新人だった安部恭弘や、NOBODYらのバンド系も参加。フレンチポップスのカバーにして久々の強力プッシュとなった「恋はAmi Ami」を含むバラエティーに富んだ10曲で、こちらもアルバム未収録のシングルB面を追加。
 グラビア人気も高かったことを証明するジャケットが魅惑的ですけど、こちらは3月3日まで予約すると先着でポスターもプレゼントされるそうです。

 個人的にはこの路線が合っていたとは思っておりませんで、アルバムではポプコン系を含むニューミュージック路線のサード「ダイアリー」の方が好みだったりして。上田知華によるかの名曲「さよならレイニー・ステーション」を筆頭に、ブレイク前の来生姉弟、さらには自作詞にも挑戦した好盤です。
 今後復刻されるかどうかは、今回の2タイトルの数字次第だと思いますので、セカンドやサードの復刻を望むファンの方は確実にお求めください。


(2014.2.12)


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