筒美作品集が18年ぶりにオリジナル盤で再CD化!
昨年末に出た「HITSTORY」新装ボックス(こちらで紹介)や、今月リリースの太田裕美さんの筒美京平トリビュートカバーアルバム「tutumikko」(こちらで紹介)に代表されるように、世はまた筒美先生づいている感じがする昨今。
こちらとしましては太田さんの新作を猛プッシュしておりますので、太田さんの筒美メロディーの新解釈をぜひお聴きいただきたいのですが、あっと驚く「人魚」をはじめ開放感と自信と野心に満ちていて、太田さんが最もノっていた80年代のテクノポップ期以来といえる、スッキリ抜けた感じが最高ではないかと思っています。
その分、30年前のあの時みたいに引いてしまう人もいるかもしれませんが、もし違って聴こえる人がいたとしても、実は太田さんのデビュー時から貫かれてきた「めちゃくちゃ悲しい歌よりもめちゃくちゃ幸せな歌の方が、ちょびっと悲しい」というエンタテインメントの真髄と軌を一にするものであり、筒美メロディーの本質と同じなのではないかと思います。
それこそが筒美メロディーが血となり肉となって育ってきた筒美っ子の音楽というものであり、ネーミングの真意だと確信し、あらためて筒美メロディーの味わい深さに酔いしれております。
そんな風にまた注目の集まる筒美先生ですが、旧譜の再発も活発なようで、特に注目したいのがあのショーボートレーベルからのリイシュー。そう、98年の筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックスシリーズで出ていた作品集の、オリジナル盤復刻です。
先に平山三紀さんの「 MIKI WORLD 」(ワーナー版「筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス 魅嬉環劉嬲 MIKI WORLD」よりボーナス2曲をカット)が出るようですが、オススメしたいのはこちら、「 ふたたび愛を~伊東ゆかり・筒美京平 LOVE SOUNDS 」です!
98年にコロムビアから出た「伊東ゆかり/筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス」は、72年のアルバム「ふたたび愛を~伊東ゆかり・筒美京平 LOVE SOUNDS」に、ボーナストラックとしてコロムビア時代の筒美京平作品7曲を加えて編集されていたものですが、今回は収録曲こそ同じであるものの、そのアルバム曲+ボーナスというオリジナル通りの曲順での再発となるようです。
71年の「誰も知らない」でゆかりさんに久々のヒットをもたらした筒美先生ですが、続く「陽はまた昇る」も第1回東京音楽祭で歌唱賞に輝いたことから、ゆかりさんのアプローチで実現したのがこのアルバム。すべてが色濃かった時代には不感症歌手と言われていたというゆかりさんですが、ご結婚したばかりのレコーディングだったそうで、そこはかとない色香にも注目です。
A面がシングル曲を含む書き下ろし、B面が筒美ヒットのカバーという構成ですが、書き下ろしには代表曲「小指の想い出」なんかにつながるドメスティックな歌謡曲メロディーもあるものの、サラリとしたゆかりさんのボーカルなら逆にお洒落に聴こえます。
そこいらへんは、「いつもなら」(朝丘雪路)や「愛こそいちずに」(小川知子)といったカバーの方がもっと顕著かもしれません。むろん筒美先生がゆかりさんのために手がけたアレンジの洒脱さが突出していることも大きいと思いますね。
なお、カバー曲としては南沙織、麻丘めぐみ、浅田美代子ら筒美系ディーバにこぞってカバーされた「夢でいいから」(いしだあゆみ)を筆頭に、シンシアも歌った「幸福ですか」(青山一也)や「恋のゆくえ」(新藤恵美)、めぐみタンもカバーした「ふたたび愛を」(平山三紀)なども入っていますので、それぞれのファンも聴き比べが楽しめそう。といっても軍配はいつもゆかりさんに上がりますがね。
ボートラとしては、71年の筒美先生との出会いのシングル「明日をめざして」、続く大ヒット「誰も知らない/よせばいいのに」、そして大学生のアイドルとして脚光を浴びた77年のシングル「ロマンチスト/プレイボーイ・マガジン」、73年のアルバム「あのひと」に収録されていた「あなたの存在」「不思議な男」という7曲となっています。
「伊東ゆかり/筒美京平ウルトラ・ベスト・トラックス」はすぐには廃盤にならずけっこう流通していましたから、ほとんどの筒美フリークはお持ちでしょうが、あれから16年。今回は最新デジタルリマスタリングで、W紙ジャケット仕様。やっぱり買い増ししたくなる感じですよね。
ジャケットには筒美先生のはにかんだようなお顔が載っているオリジナル盤ですし、ライナーには先生とゆかりさんのメッセージ交換もありますしね。
なお、ゆかりさんの筒美作品としては、夫君だった佐川満男さんとCMでデュエットし非売品としてレコード化された「Oh !! Gentle Life」もありますので、コンプリートしたい方は2006年の筒美BOX「 THE HIT MAKER-筒美京平の世界- 」を併せてお求めください。
なお、コロムビア・デノンレーベル時代のゆかり作品は以前から再評価が高いですけど、お洒落さという点では、このアルバムの前年、伊東ゆかりとグリーン・ジンジャーというスタイルで出した「LOVE」を超えるモノはありませんので、ぜひそちらも…と言いながらいつの間にか入手困難になっているようでザンネン。できればコロムビアの純正復刻、オンデマンドでもいいので、いつも音源入手できるようになればいいですね。
そういえば、先月だったか「徹子の部屋」で久々にお姿を拝見した時に、ますます美しくなっているのを確認。一段とシャープになられて、クールビューティーな中にもグレン・クローズのようなゴージャスさも感じたものでした。
生粋の職業歌手で、丁寧かつ完璧な歌唱力には定評があるゆかりさん。個人的には「日本にはこんなに素敵な歌手がいます!」と胸を張って言える代表のように思ってますが、今もバリバリの現役でいらっしゃることですし、今後もデノン時代のような素敵なアルバムを届けてくれることに期待したいものです。
(2014.4.12)