7年半ぶりの新作は、筒美京平トリビュート!
昨年11月1日、めでたくデビュー40周年目に突入した太田裕美さん。名盤復刻シリーズで旧譜3枚が復刻(こちらで紹介)された一方、現役アーティストならでは、記念のライブでは“まごころ倍返し”を宣言し、21世紀の「12ページの詩集」と呼べる「 始まりは“まごころ”だった。 」以来、実に7年半ぶりとなるニューアルバムの制作にとりかかることを発表。
直後にはオフィシャルサイト内の「心の雑記帳」で、なんと筒美京平トリビュートカバーアルバムであることが報告され、大きな反響を呼びましたが、ついに発売が決定しました!
その名も「 tutumikko 」! 筒美先生の秘蔵っ子・平山三紀(みき)さんもビックリのタイトルですが、現在のライブでもセットリストの大半が筒美作品という太田さんですから、決してオーバーな表現ではありません。
太田さん自身が大好きな筒美先生への感謝と尊敬をこめて選曲したというアルバム。太田さんいわく思いもよらない選曲、しかも超名曲ぞろいという構成に否が応でも期待は高まりますので、復刻盤ではございませんがガンガンプッシュさせていただきましょう。
思えば昨秋から、筒美京平作曲家生活45周年の真打ちとなるBOX新装版(こちらで紹介)が出るタイミングで、太田さんの口から筒美先生と久々に食事したことが告げられたり、伏線のようなものは張り巡らされていましたけれど、正式に発表され、いざ本当に発売されることになると、筒美っ子の裕美ファンとしては、感慨無量であります。
74年に「雨だれ」でデビュー以来、4年にわたり筒美作品を歌い続けてきた太田さん。代名詞となった「木綿のハンカチーフ」はもちろん「赤いハイヒール」「最後の一葉」「しあわせ未満」「九月の雨」というトップ10ヒットは、すべて筒美先生のペンによるものでしたから、やはり生粋の筒美っ子と言っても過言ではないでしょう。
その後も折に触れ、筒美先生の書き下ろしを歌ってきたのはご存じの通り。
デビュー10周年で休業に入るという節目の84年には、メモリアル・ジャンボシングル「雨の音が聞こえる」を提供されましたが、当時は過激なカリアゲヘアだった太田さんが「こんなかわいい曲歌えません」と言ったら、先生から「あんたは元祖ブリッコなんだから、頑張って歌ってよ」と返されたというエピソードが懐かしく思い出されます。
また、98年の「魂のピリオド」は作曲家生活30周年で空前の筒美ブームの中、先生自ら太田さんに新曲を書きたいということから始まったナンバーでしたし、その流れでカルピスのCMソングのボーカルに抜擢された(「きっと天使」として楽曲化)ワケですから、太田さんはまぎれもなく先生のお気に入りだったことが分かりますよね。
ほかにも99年には、インチキ25周年記念曲「神様のいたずら」をレコーディング。太田さんの再評価も高まり、本格的に活動を再開。先生の手がけた往年のヒット曲も再びクローズアップされ、現在の活躍へと至っているのです。
こういった流れからも、いま太田さんが現役のアーティストとして活躍できていること自体、筒美メロディーのおかげという気がします。
ところで、筒美系ディーバと呼ばれる歌姫は、古くはいしだあゆみさんから平山三紀さんをはじめ、南沙織さん、麻丘めぐみさん、岩崎宏美さんら数多くいますが、太田さんが彼女らと決定的に違うのは、筒美カバーがなかったということ。
彼らは皆、アルバムなどで筒美作品をカバーしているのですが、太田さんの場合、レコードではオリジナルにこだわり原則カバーとライブ盤は出さない方針だったため、商品として筒美カバーが世に出るのは今回が初めて。だから余計に期待は高まるというワケなのです。
「どんなにいいメロディーだって、生身の人間が歌い継がないと、忘れられてしまう。私の『木綿のハンカチーフ』は、私はもちろん、たくさんの歌手に歌われて、生き続けている。大好きな筒美メロディーが、私の歌によって、また新たな世界を開いて行けることを、心から願いつつ、歌っています」と話す太田さんですが、このカバーアルバムのレコーディングは、年の瀬も押し迫った昨年12月30日にスタート。太田さんは日付が変わるまで作業に没頭し、その直後に大瀧さんの訃報を受けたといいますが、そこであらためてさまざまな名曲を歌い続け、歌い継ぐことを決意したといいます。
太田さんの真髄は変わり続けるからこそ変わらないように見える点だと思いますけど、それに確固たる使命感が加わった最近の歌声は、ナチュラルな中にも鬼気迫るものがあり、ボーカリストとしてますます進化を続けているようですので、この新作はホント楽しみ。
なんだかんだと7年半待ちましたので、大切に大切に聴いていきたいと思っています。
なお、今回の販売元はSPACESHOWER MUSICですが、コレはバウンディであり、ご主人の福岡智彦さんが執行役員でいらっしゃいますので、近年のマキシシングル「 初恋 」や「 金平糖 」と何ら変わったことはございません。インディーズとはいえ市場流通され、一般のCDショップやネットショップで入手できますのでご安心を(確実に手に入れたい場合は先行販売も行う事務所の通販がオススメですぞ)。
ただ、デビュー以来のファンとしては、やっぱりメジャー流通のリリースを希望したいですし、それもデビューから愛着のあるソニーミュージックの太田裕美でいてほしかったりして…。オバケさん、次回はなんとかお願いしたいものです…。
ともあれ、筒美先生も大好きだという太田さん独特の声質を生かしたボーカルと、人柄と年輪を重ねた感性からの解釈で、往年の名曲がどう生き返ったのか、通して聴くとどんな極上のポップアルバムになっているのか、ワクワクしつつ耳を傾けたいと思います。先生のフリークである筒美っ子の皆さんも必聴、ぜひご予約ください!
(2014.1.30)
*収録曲…タイムマシーン(藤井フミヤ)/真夏の出来事(平山三紀)/Romanticが止まらない(C-C-B)/ガール・フレンド(オックス)/夏のクラクション(稲垣潤一)/人魚(NOKKO)/さらば恋人(堺正章)/レイン・ステイション(天地真理)/私は忘れない(岡崎友紀)/強い気持ち・強い愛(小沢健二)
*アルバム発売コンサートの模様を収録したライブDVD「
雨女の恩返し tutumikko 2014 LIVE [DVD]
」の発売も決定しました!(2014.7.30発売→8.20発売に延期)