オススメ復刻盤「佐々木好／雨天決行・暖暖」

　約1年の歳月をかけ、昨年9月、オーダーメイドファクトリーでめでたく2タイトルが復刻された佐々木好（このみ）さん。
　実現したファースト＆セカンドの「心のうちがわかればいいのに」「にんじん」（こちらで紹介、ケイゾク商品として今ならまた購入が可能です！）に続き、このたびサードの「雨天決行 」とフォースの「暖暖 」もオーダーメイドの候補に挙がりました！
　（少し遅れて、フィフスにしてラストアルバムとなった「りらっくす 」も候補に挙がりました！）

　北海道出身でCBS・ソニーオーディションで見いだされ、シンガー・ソングライターとして82年2月にデビュー。メディアからは同郷の中島みゆきの再来と称され、少しは話題に上ったのですが、メジャーな存在にはなれず、人知れず消えていった感があります。

　全国ライブツアーも地道に繰り広げられていたように記憶していますが、活動拠点は地元の北海道でしたし、そもそもが目立つタイプではありませんでしたからね。当然と言えば当然ですが、その分、根強いファンがいたのも事実です。
　内省的な女性の心情を描いた歌詩を、訥々と独特の低音でつぶやくように歌うスタイルは、一度虜になってしまうと離れがたくなる魅力にあふれていたのですから。
　独特の詩と曲構成、そしてあの声…淋しくて哀しくて、優しく傷をなめ合おうと思っていたら突き放されたり、魔や毒が潜んでいるような好さんの魅力に、一度取りつかれたらもう二度と戻れない気がします。

　さて、今回候補に挙がった2タイトルのうち、84年作品の「雨天決行」は、感性の粒だちが詩情豊かにあふれるサードアルバム。シングル「待ってたのに／このまま通り」を含む全10曲。
　これまでの高久光雄プロデューサーが確かエピックの洋楽に戻ったため、プロデュースは浜省や村下孝蔵、杉真理、尾崎豊、ハイ・ファイ・セットらでヒットを飛ばしていた須藤晃さんに交代。
　好さんの詩から感じる指向性だけで言えば、高久さんより須藤さんの方が合っているように思いますけれど、初期2作が粒立って聴こえるのは、やっぱり高久さんのセンスによるところが大きいのかも。好さんは70年代ではなく80年代、それも82年というニューミュージックさえも成熟してしまった時代にデビューしたワケですからね。

　ジャケットも味戸ケイコさんのイラストではなくなり、ナウでトロピカルなフィーリング。メジャーになろうとする感じが出ていますが、内容も頑張っているムード。同じCBS・ソニーの先輩シンガー・ソングライターで当初からバッキングなどを務めていた国吉良一さんのアレンジによって、シティポップスっぽいエッセンスも感じられます。

　続く85年リリースの「暖暖（だんだん）」は、前年末に出た先行シングル「あんた／ワインカラー」に、リカット「表情音痴／ヤッシー」と珍しく2枚のシングルを擁する10曲にして、今回が初CD化です。
　やはりヒットを求められていたのだと思うのですが、4枚目ともなると正念場。初期を手がけた鈴木茂さんがカムバックしファーストと同じく全曲をアレンジしていますが、起死回生をかけてというか、時代性を映してよりポップなサウンドになっていますので、やはり初期の世界とは異なる印象です。

　ちなみに「雨天決行」はオリジナル発売の頃にCDされていて、今回は再発となるのですが、そうはと言っても当時はまだまだCD黎明期。CBS・ソニーの国内制作CDタイトルはまだ100枚にも満たなかった頃で、LPとCDのリリースにはひと月ほどタイムラグがあるのが普通でした。これもCDはLPの1カ月後5月で、しかも価格は3500円、ヒットせず生産枚数も少なかったので持っている人自体が少ない貴重盤と言えるでしょう。

　また、86年ぐらいまではCDプレイヤーが思うように普及しなかったせいか、お膝元のソニーといえどもセールス的に芳しくないアーティストはCDでリリースされなかったり、CD化がストップしたりするケースもあったりして。好さんの場合も例外では無く、4枚目の「暖暖」は今回が初CD化となるようです。

　なお、以前CD化されていた4タイトルは、2012年10月まではmoraでダウンロードできる状態でしたが、Macでも落とせるようになったリニューアルを機に、好さんの音源は外れ入手困難になっており現在ではオーダーメイドでしか入手できませんのでご注意を。

　という今回の2タイトル。レア度は前の2枚とは比べ物になりませんので、早く実現しそうな感じですが、コレをクリアして、最後のアルバムとなった「 りらっくす 」でめでたく完結となりますように。
　それは少しブランクが空いた87年発表、５枚目のアルバムで、姫神の星吉昭さんがサウンドプロデュース。村下孝蔵さんや溝口肇さんも参加した作品です。

　ポップで軽いノリの80年代にあって、みゆきサンよりも上を行く「ネクラ」の代名詞といわれた好さんの軌跡を、きちんと辿れる日が来ればいいですね。

（2014.5.12）

＊ソニーミュージックのオーダーメイドファクトリーでは2013年に復刻されたアルバム「心のうちがわかればいいのに 」「にんじん +1 」もケイゾク商品として限定再販売！


＊ラストアルバム「りらっくす 」も候補に挙がりました！（2014.7.7）